

家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
新築・リフォームのコストを知ろう
新築木造住宅の坪単価は80万超に
昨今の建設業界は、建築資材の値上がりはもちろん、人手不足による労務単価の賃金アップなどが原因で、建築コストが上昇しています。さらに働き方改革による4週8休の導入や適切な工期の設定などにより、業界全体でも変化が起こっています。
その影響もあり、首都圏の新築木造住宅の坪単価は80万円超となっています。この坪単価は平均的な単価であり、こだわったデザインや高機能な設備を取り入れたい場合、坪単価は100万円になる場合もあるでしょう。
したがって、これからの家づくりは耐久性・耐震性など物理的な寿命だけでなく、長く使われる空間づくり、つまり「生活的寿命の視点」も加えて、ライフステージの変化に対応できる家づくりも求められます。
一方で中古住宅や集合住宅を購入し、リフォームをして新しい住まいを求める人も多くなってきました。リフォーム市場はここ10年間で、6兆円規模と続いているのがその現われです。
いずれにしても、住まいを求めるということはその家族にとっては一大事です。今回は新築とリフォームを検討している建て主に、参考となるようなコストを中心にまとめました。
新築木造住宅の工事費を知る
はじめに経済調査会による下記の「木造住宅建築費指数」の推移をご覧下さい。
2009年を「100」として、2021年までおおよそ年1%程度でゆるやかに上昇してきました。しかし、コロナ収束とともに建築資材のコスト上昇で値上がりし、22年の建築費は前年比で10%以上の上昇。その後も人件費の高騰などを背景に建築費は年3~4%上昇し、25年は2393万円となっています。
この数字は延床面積30坪(約100㎡)で算定しているので、坪単価は約80万円となります。特に近年は高機能な設備機器により快適さを実感でき、建て主はつい高品質なものを選ぶことでコストダウンが難しくなっています。
このグラフは首都圏を中心としているので、地方においては多少下がるかも知れません。また依頼する会社規模などでもバラツキはあります。しかしこうした現状を認識したうえで、家づくりを考えていくことがスタート地点となります。
リフォームの工事を知る
新築と違ってリフォームの有利な点は、家全体を変える大規模な工事を行っても、新築より工事費が2~3割程度安く済む場合が多いことです。
予算も重要ですが、愛着のある家の雰囲気をある程度保ち、思い出を残しながら新しい家に住みたいのであればリフォームを検討してもいいでしょう。
部分的なリフォームで済む場合は迷うことはありませんが、家全体が気になる場合はリフォームにするか新築にするかで迷うものです。
リフォーム工事費は種類により様々です。今回は主なリフォームの工事項目を選別し、費用の目安をあげてみます。
※各項目は木造住宅、延床面積36坪前後を想定
◎断熱リフォーム
仮に戸建全体を実施するのであれば、耐震と併せて検討することをおすすめします。
| 外壁・床の断熱工事 | 100~150万円 |
| 内窓設置(掃き出し 複層ガラス1箇所あたり) | 8~12万円 |
| 内窓設置(引き違い 複層ガラス1箇所あたり) | 5~8万円 |
◎耐震リフォーム
可能であればリフォーム前に耐震診断を行うと良いでしょう。
| 室内側から筋交いや金物で補強 | 80~100万円 |
| 建物外壁から金物筋交いや耐震パネルを設置する | 100~120万円 |
| 軽量屋根材(金属など)への葺き替え | 120~160万円 |
◎バリアフリーリフォーム
移動をしやすくする、あるいは段差をなくす工事
| 階段を昇りやすくする工事 | 70~90万円 |
| 玄関土間の階段からスロープへの工事 | 50~70万円 |
| 手すりを設置する 1箇所(下地工事とも) | 3~5万円 |
◎水まわり設備機器の交換工事
既存の機器処分費用を含んだ金額です。
| I型システムキッチンの交換(長さ2400mm標準グレード) | 80~130万円 |
| L型システムキッチンの交換 | 90~140万円 |
| ペニンシュラ型システムキッチンの交換 | 120~190万円 |
| アイランド型システムキッチンの交換 | 150~200万円 |
| ユニットバス(1316サイズ)の交換 | 90~150万円 |
| 人工大理石ユニットバスの交換 | 150~200万円 |
| 在来の浴室をそのままリフォーム(浴槽交換、床・壁はタイル) | 180~230万円 |
| タンクレストイレへの交換(床は新規シートを貼る) | 35~45万円 |
| 洗面台の交換(巾900mm標準グレード) | 20~30万円 |
| ガス給湯器を省エネ型給湯器への交換(24号) | 25~30万円 |
◎外装のリフォーム
足場費用がかかるため出来れば同時に施工を行うといい。
※外壁の施工面積を200㎡とした場合
| 屋根カバー工法(既存屋根に新しい屋根材をかぶせる) | 120~150万円 |
| 外壁の塗り替え(重ね塗り) | 60~100万円 |
| スレート屋根の塗り替え | 40~60万円 |
| 窯業系サイディングに張り替える | 120~180万円 |
| 金属系サイディングに張り替える | 140~200万円 |
◎内装のリフォーム
| 玄関ドアの交換(既存補修工事あり) | 60~80万円 |
| 和室を洋室に変更(畳→フローリングへ、6畳) | 50~70万円 |
| 壁紙の張り替え(既存壁紙処分費含む 6畳、壁面積22㎡) | 12~18万円 |
| けいそう土壁にする(既存壁紙処分費含む 6畳、壁面積22㎡) | 20~25万円 |
| 壁を木材板張りへ(パイン材厚み6mm 6畳、壁面積22㎡) | 30~40万円 |
| 洗面室(脱衣室)のクッションフロアを張り替え(床面積3~4㎡) | 3~5万円 |
| 既存フローリングの上にリフォーム用フローリングを貼る(6畳) | 15~20万円 |
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佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。






