

相続の法律制度(民法と相続税法の相続財産を巡る取扱の違い等)について、弁護士が解説したアドバイスです。
内縁関係にあった人は相続の場面で保護を受けられるか
最近の若者は…などと始めると自分が老人になったような気がしますが(事実そうだろう、という突っ込みも聞こえますが)、ある調査によると、2026年卒業予定の大学生と大学院生のうち、25.2%が「婚姻関係を望まない」と回答したそうです。そして、「婚姻関係を望まない」の回答の内訳は、「婚姻関係にこだわらない」が11.9%、「結婚しない」が13.3%だったとのこと。
「婚姻関係を望まない」という回答の内容にもいろいろなパターンがありそうですが、以前から、夫婦同様の実態がありながら婚姻届けを提出しない(あるいは何らかの事情で提出できない)事実婚や内縁というカップルは珍しくはありませんでした。上記のような大学生らの回答をみると、そうした関係は今後ますます増えていくことが予想されますし、事実、相談にみえる方たちにもそうした関係を築いている人は少なくありません。
そこで今回は、夫婦として実質をもちながら、婚姻の届出がないため法律上は夫婦とは認められない、いわゆる内縁関係が相続においてどのような保護が認められるかについてお話しします。
内縁関係とは、婚姻届は提出していないものの、お互いに「婚姻の意思」を持ち、「夫婦同然の共同生活」を営んでいる男女の関係をいうとされています。
民法は、婚姻の届出をすることによって婚姻の効力が生ずると定めているので、婚姻届けを出していないカップルは、たとえ当事者の間にいずれは婚姻したいという意思があり、実際に夫婦と同様の共同生活をしている場合でも、法律上の夫婦とは認められないのです。
しかし、婚姻としては効力が認められない内縁関係であっても、法的保護がまったく与えられなくてよいということにはなりません。
最高裁の判例でも、内縁も保護されるべき生活関係(利益)として、内縁が正当の理由なく破棄された場合には、不法行為の責任を追及することができるとされています。
内縁関係を法的に保護する法的な理論構成については争いがありますが、ここではそうした争いについてはふれず、相続の場面において、内縁関係がどのように保護されるか、または保護されないかについて整理してみます。
結論からいうと、相続関係においては、内縁のパートナーには相続権はないとするのが判例の立場であり、現在のところ学説上の通説ともなっています。
つまり、内縁関係にあった事実上の妻(または夫)は遺産相続することができないのです。
内縁関係にあった者は、そのパートナーである被相続人と同居しその者が亡くなるまで献身的に介護を行っていたということも少なくないはずです。そうした場合、相続人であれば寄与分が認められ、法定相続分以上の遺産を受け取る制度があります。
しかし寄与分の対象となる者は相続人に限られるため、内縁関係にあった者は寄与分を主張することもできません。
また、民法改正により令和元年7月から相続人でない親族に対しても特別寄与料というものが導入されていますが、親族であることが要件とされているため、親族ではない内縁関係にあった者は特別寄与料の請求もできません。
しかし、内縁関係でも、次のとおり、相続の場面で保護を受けることができる場合があります。
(1)遺贈または生前贈与
もっとも有効かつ確実なのは、遺言により贈与(遺贈)を受ける方法です。遺贈は相続人ではない第三者に対して行うこともできるので、内縁のパートナーに呈する遺贈も可能です。
遺贈だけでなく生前贈与でも財産を受け取ることができます。
(2)特別縁故者としての請求
特別縁故者として遺産を承継することも考えられます。
特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていたとか、被相続人の療養看護に努めたなど、被相続人と特別の縁故があり、相続財産の全部または一部を特別に受け取ることのできる者をいいます。友人など親族でない者でも資格がありますので、内縁関係にあった者も特別縁故者と認められる可能性があります。
ただし、特別縁故者として権利を主張できるのは、被相続人に法定相続人がいない場合に限られます。したがって、被相続人に妻や子など、法定相続人がいる場合には特別縁故者としての権利主張はできません。
(3)遺族年金
内縁関係にあった者は、遺族年金を受け取れる可能性があります。
厚生年金法や国民年金法は、「被保険者の死亡当時、被保険者によって生計を維持していた者であれば、法律上の夫婦ではなく「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」であっても、遺族年金の受給権者となることを認めているからです。
(4)生命保険の受取人となる
生命保険の受取人として指定されていれば、婚姻関係の有無にかかわらず生命保険金を受け取ることが可能です。
以上のように内縁であっても相続の場面で保護を受けられる可能性がありますので、いざというときには専門家に相談してみてください。







