マンションの管理業者が「管理者」を兼ねる方式(管理業者管理者方式)とは
相談事例
私は、居住用の中古マンションの購入を検討しています。このマンションの管理状況を調べたところ、マンションには理事会がなく、管理組合から管理事務を受託している管理業者(管理会社)が、管理組合の管理者を兼ねていることが分かりました。
このように管理業者が管理者を兼ねる方式は「管理業者管理者方式」と呼ばれているそうですが、これはどのような方式なのでしょうか。また、購入にあたって、どのような点を確認しておくべきでしょうか。
解 説
1 マンションの「管理者」とは
分譲マンションでは、区分所有者(各住戸の所有者)の全員で管理組合(区分所有法上の団体)を構成し、マンションの管理は、この管理組合が主体となって行います。
区分所有法上、区分所有者は、規約に別段の定めがない限り、集会(総会)の決議によって「管理者」を選任することができ、管理者は、共用部分等を保存し、集会の決議を実行し、規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負います。
多くのマンションでは、区分所有者の中から選ばれた理事で理事会を構成し、理事長が管理者となる方式(理事会方式)が採られています。そして、日常の管理事務(会計やマンションの維持修繕の企画・実施の調整等)の全部又は一部をマンション管理業者に委託することが多く、この場合、管理組合が管理業者の業務を監督します。
2 管理業者管理者方式とは
これに対し、区分所有者以外の者が管理者になる管理方式を「外部管理者方式」といい、その中でも、管理業者が管理者になるものを「管理業者管理者方式」といいます。
この方式を採用し、かつ理事会を置かない場合には、区分所有者が理事や理事長として理事会を運営する負担は軽減されます(ただし、この場合でも管理の主体はあくまで区分所有者で構成される管理組合のままです。)。
近年、既存のマンションにおいて、役員の担い手不足等を背景として、この方式を採用し、管理事務を受託している管理業者が管理者に選任される事例や、新築時からこの方式を前提に分譲される事例が出てきているとされています。
このように管理事務を受託する管理業者が管理者を兼ねる場合、管理業者は日々の管理事務を通じてマンションの状態や問題を把握しやすいため、機動的なマンション管理や区分所有者の事務負担軽減が期待されます。
その一方で、例えば、管理業者が発注者として、マンションの修繕工事を自社や関連会社に発注するなどして、管理業者側の利益が優先され、区分所有者の利益が損なわれるような事態が生じないか(管理業者と区分所有者との間で利益相反が生じないか)等の懸念が生じます。
3 ルール整備の動き
このような状況を踏まえて、国土交通省は、「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」(令和8年4月改訂)において、前記のような管理業者管理者方式を採用する場合につき、管理規約や契約書の整備、管理者による独断専横的行為・利益相反の防止、管理者に対する監視・チェック体制など、様々な留意点を整理しています。
また、令和7年5月に成立した法改正により、マンション管理適正化法に、管理業者が管理組合の管理者を兼ねる場合を対象とする新たな規律が設けられました(令和8年4月1日施行)。
具体的には、管理業者が管理者事務を受託する契約(管理者受託契約)を締結しようとするときは、あらかじめ説明会を開き、区分所有者等に対して契約に関する重要事項を説明する義務が定められました。
また、管理者である管理業者が、自社又は自社と密接な関係を有する者との間で取引を行うときは、原則として、あらかじめ説明会を開き、取引について重要な事実を説明する義務等が定められました。
そして、国土交通省では、この法改正を踏まえて、①管理業者管理者方式の場合の管理者事務委託契約書のひな形となる「マンション標準管理者事務委託契約書」の策定、②管理業者管理者方式が採用される場合を想定していないマンション標準管理規約のもとで、管理業者管理者方式を採用する場合に対応しやすい「書き換え表」形式の資料の策定、③マンション標準管理委託契約書の改正を行っています。
4 購入にあたって確認しておきたい点
(1)マンションの購入検討者との関係でも、新たなルールが設けられました。宅地建物取引業法施行規則が改正(令和8年4月1日施行)され、マンションの売買等の際に宅地建物取引業者が行う重要事項説明において、そのマンションの管理者等が、マンションの管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合には、その旨を説明すべきこととされました。
なお、前記施行規則の条文上、求められる説明内容は、管理業者管理者方式を採用している旨に留まっていますが、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)では、宅地建物取引業者がこの説明を行うにあたっては、「マンション管理業者が受託する管理者事務の内容等の管理者受託契約の主たる内容もあわせて説明することが望ましい。」とされています。
(2)管理業者管理者方式であること自体が直ちに問題というわけではありません。重要なのは、前記のように管理業者が管理者を兼ねることによる利益相反の懸念等を踏まえて、管理業者の業務の監督等を適正に行うことができる体制が整備され、実際に機能しているかどうかです。
そこで、この方式を採用するマンションの購入を検討する際には、
・管理者の権限の範囲
・通帳・印鑑の保管方法
・管理業者が管理者の地位を離れる場合のプロセス
・日常の管理での利益相反取引等におけるプロセスや情報開示の方法
・大規模修繕工事等におけるプロセスや情報開示の方法
・監事の設置と監査の方法
・その他の重要事項(管理者事務にかかる費用及びその支払いの時期など)
について、売主や媒介業者を通じて、可能な範囲で情報を入手したうえで、管理業者の業務の監督等の体制が整備され、実際に機能しているかという観点から確認することが考えられます。
なお、各項目の詳細については、前記ガイドラインをご参照ください。
5 最後に
本稿は、管理業者管理者方式に関する制度の概要をご紹介したものです。実際の管理体制は、個々のマンションの管理規約や契約の内容等によって異なりますので、購入にあたっては、前記の各点を含め、個別にご確認ください。









