区分所有法の改正について
区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)は、マンションの所有関係、管理、建替え等に関する基本的なルールを定めた法律であり、マンションを購入して住んでいる方や、マンションの購入を検討している方々にとって重要な法律です。
この区分所有法を含むマンション関連法が2025年5月に改正され、改正後の区分所有法は2026年4月1日から施行されます。
今回のコラムでは、この改正の内容についてご紹介いたします。
1 改正の背景と目的
マンションは、重要な居住形態の一つであるものの、建物の老朽化と区分所有者(マンションの部屋の所有者)の高齢化という「2つの老い」が進んでいます。また、区分所有者の所在不明化や非居住化(区分所有者がマンションを賃貸に出すなどして住んでいないこと)も進んでいます。
そのため、マンションにおいて集会(管理組合の総会)の運営や決議が困難になり、マンションの管理や再生等のために必要な意思決定が円滑に行えなくなることなどが懸念されています。
今回の改正は、このような背景を踏まえて、マンションの管理や再生の円滑化等を図るため、マンションの再生等の実施の円滑化、集会の決議要件の合理化、所有者不明専有部分管理命令の制度の創設等の措置を講ずるものです。
2 マンション管理の円滑化のための改正事項
(1)所在等不明区分所有者等の除外に関する制度の創設
これまで、所在等が不明な区分所有者は、集会の決議の母数に計上されていたため、決議において反対者と同様に扱われていました。
今回の改正では、裁判所の除外決定を経ることにより、所在等が不明な区分所有者を集会決議の母数から除外する制度が創設されました。
(2)出席者の多数決による集会決議が可能に
区分所有者の高齢化や非居住化等によって、集会への参加率が低下し、集会における意思決定が困難になることへの対策として、普通決議、共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)の決議、規約の設定・変更・廃止の決議等について、出席者の多数決によることが可能になりました。但し、普通決議以外の決議については、定足数の規律が設けられています。
(3)マンションの管理に特化した財産管理制度の創設
区分所有者の所在等が不明である場合や、所在等が判明していても、専有部分や共用部分の管理が不適当である場合(例えば、部屋に大量のごみを放置している等)に、裁判所が選任した管理人に管理をさせる制度が創設されました。
(4)共用部分の変更決議等の多数決要件の緩和
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)にかかる集会決議について、基本的な多数決割合をこれまでどおり「4分の3」以上としつつも、一定の変更(共用部分の設置又は保存の瑕疵を除去する場合や高齢者、障害者等のためにバリアフリー化する場合)については、多数決割合が出席した区分所有者及びその議決権の各「3分の2」以上へと緩和されます。
(5)管理に関する区分所有者の責務の規定化
区分所有者は、マンションの管理が適正かつ円滑に行われるよう、相互に協力しなければならない旨が条文に規定されました。
3 マンション再生の円滑化のための改正事項
(1)建替え決議の多数決要件の緩和
建替え決議にかかる集会決議について、基本的な多数決割合をこれまでどおり区分所有者及び議決権の各「5分の4」以上としつつも、地震や火災に対する安全性に係る法令等の基準に適合していないなどの客観的な緩和事由がある場合には、多数決割合が各「4分の3」以上へと緩和されます。
(2)多数決によるマンションの再生、区分所有関係の解消
区分所有関係の解消やマンションの再生のための新たな制度として、建物敷地売却制度、建物取壊し敷地売却制度、取壊し制度、再建制度、敷地売却制度が創設されました。また、建替え決議と同様の多数決要件のもとで、建物の更新(いわゆる一棟リノベーション)決議が可能になりました。
※ 今回の改正事項は多岐にわたっており、上記以外にも多数の改正事項があります。









