

不動産売買のトラブルを防ぐために判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
更地売買
【Q】
私は新居の建築用地として本件土地を売主Aから購入しました。本件土地上には中古建物や樹木等が残存していましたが、中古建物は老朽化が進んでいるため、本件土地売買契約では、土地上にある建物等を売主Aが撤去の上で更地にして引渡す旨の特約が定められ、更地工事の具体的内容について覚書を作成しました。
しかし、代金決済・所有権移転登記が完了後も、売主Aは資金不足を理由として更地工事を実施しないため、新築建物の請負契約を解除せざる負えなくなり、結局自ら工事費用250万円を負担して更地工事を完了させました。私は更地工事費用等の損害を売主Aに請求することができるでしょうか。
【回答】
本件売買契約では本件土地を更地渡しとする特約により、売主Aは覚書に定めた更地工事を完了させて本件土地を引渡す債務を負っています。
したがって、あなたは、売主Aに対してかかる債務の不履行を理由として更地工事費用の損害賠償を請求できると考えられます。
1 更地渡しとする特約
地上に建物等が残存する土地を売買する場合、売買契約締結後に売主が建物等を撤去して更地として引渡す方法(更地売買)と、売主は現状のままの土地を引渡し、買主が自らの利用目的に応じて建物の解体等を行う方法(現況売買)が考えられます。
(1)売主が土地を更地渡しとする合意をした場合、更地工事を実施する債務は売主の売買契約上の債務であり、これを売主が懈怠した場合には、売買契約上の債務不履行に基づく損害賠償の問題となり、また更地渡しとすることが当該契約の目的達成に不可欠であると認められる場合には契約解除の問題となります。
土地の更地工事内容は、当該土地に残存する物により様々であり、建物の解体費用の他、樹木の抜根や埋設物の撤去等、想定外の追加費用が生じる事態とならないよう、更地工事の具体的内容について当事者間で事前に確認し、更地工事費用を正確に見積もった上で売却価格を決定する必要があります。
東京地裁令和5年3月30日判決では、本件設例と同様に、売主が更地工事を完了させた上で引渡す旨の特約を付し、更地渡しの内容について覚書を作成していた事案において、売主は覚書に記載された内容の更地工事を実施する義務を負っていたと認定し、売主に対して買主が負担した更地工事費用の損害賠償を命じる判決をしました。
同裁判例では、予定通りに更地渡しが履行されなかったために、買主は予定していた請負契約を一度解除さえざる負えなくなる等の被害も被ったことから、そもそも売主等は更地渡しする意図もなかったとして不法行為に基づき弁護士費用も含めた損害賠償請求も行いましたが、こちらは否定されています。
(2)一方、売主は現状のまま土地の引渡し、買主が建物の解体を行う方法(現況渡し)で売買する場合には、前記(1)の様な解体撤去費用を買主が負担することになるため、解体撤去費用を正確に見積もった上で購入価格を決する必要があります。
土地の引渡しを受けた後、買主が解体工事を進める中で、想定外の埋設物が地中から発見され、撤去費用や地盤補強工事等の追加費用が発生する自体となった場合、契約不適合責任の問題に発展する可能性もあります。買主が解体撤去工事を行う場合には、想定外の追加費用の負担や契約不適合責任の範囲について、慎重に取決めをする必要があります。
2 まとめ
本件設例の様に更地渡しとする売買において売主が約定通りに更地工事を実施しない場合、後に予定していた新築建物の建設請負工事を予定通りに着工できず、建設工事費用にも追加費用が発生する等の影響も想定されます。更地工事の完了時期を明確に定め、後の建設工事に影響しない様に余裕を持った計画をたてることも必要です。
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