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建築確認に関する法改正
【Q】
私は、2階建ての中古建物を購入し建物の改築を予定しています。建築基準法が改正され、建築確認の対象について見直しが行われたと聞きました。これにより建物の改築計画に影響があるでしょうか。
【回答】
建築分野での省エネ化等を促進するため、建築物省エネ法及び建築基準法等の改正が行われ、全ての建築物へ省エネ基準適合の義務化、木造建築物の建築確認や審査省略制度の対象の見直し等が行われました(令和7年4月1日施行)。従前より建築確認の対象建物や審査範囲が拡大しているため、建築確認手続きに時間を要することが想定されます。建築士等と協議の上建築計画を進める必要があります。
1 建築確認に関する法改正
(1)建築確認
建築物の建築等を行う場合、建築主は、建築工事に着手する前に、建築計画の建築基準法関係規定への適合性を確認するため「建築確認」を建築主事等から受けることを義務づけられています。建築主は、建築確認を受け、確認済証の交付を受けた後、建築工事に着手することができますが、工事着工後も中間検査や完了検査を受け、建物の安全性を確認する義務があります。
(2)建築基準法等の改正
令和4年6月、建築分野での省エネ化の徹底や木材利用の促進を進めるため建築物省エネ法、建築基準法等の改正が行われました(令和7年4月1日施行)。建築物省エネ法の改正により、全ての建築物に省エネ基準適合性が義務づけられ、建築確認手続きにおいて省エネ基準適合性の審査を行います。また、省エネ化に伴い重量化する建築物の構造安全性を担保するため、木造建築物の建築確認や審査省略制度の対象の見直しが行われ、下記(ア)(イ)の通り、木造建築物の建築確認・構造関係規定等の審査の対象が、非木造建物と同様の規模に統一されました。
(ア)都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区等外
建築基準法改正前は、都市計画区域等外の建築物のうち、階数2以下かつ延べ面積500㎡以下の木造建物は、建築確認の対象外となっていましたが、法改正により、階数2以上又は延べ面積200㎡超の建築物は、木造・非木造に拘らず、建築確認の対象となりました。
[改正後]
| 木造 | |||
| 階数 | |||
| 3階以上 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 2 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 1 | × | 〇 | 〇 |
| 200㎡ | 500㎡ | 延べ面積 | |
| 非木造 | |||
| 階数 | |||
| 3階以上 | 〇 | 〇 | |
| 2 | |||
| 1 | × | 〇 | |
| 200㎡ | 延べ面積 | ||
〇 建築確認対象 ×建築確認対象外
改正部分:×→〇
(イ)都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区等内
建築基準法改正前は、都市計画区域等内の建築物のうち、階数2以下で延べ面積500㎡以下の木造建築物は、建築士が設計・工事監理を行った場合に構造関係規定等の審査が一部省略されていましたが、法改正により、平屋かつ延べ面積200㎡以下の建築物以外の建築物は、木造・非木造に拘らず、構造関係規定等の審査が必要となりました。
[改正後]
| 木造 | |||
| 階数 | |||
| 3階以上 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 2 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 1 | △ | 〇 | 〇 |
| 200㎡ | 500㎡ | 延べ面積 | |
| 非木造 | |||
| 階数 | |||
| 3階以上 | 〇 | 〇 | |
| 2 | |||
| 1 | △ | 〇 | |
| 200㎡ | 延べ面積 | ||
〇 建築確認・審査対象 △一部審査省略
改正部分:△→〇
これまで木造2階建て及び木造平屋建てにおける大規模なリフォーム(修繕・模様替え)は、建築確認の対象外となっていましたが、同法改正により、階数2以上又は延べ面積200㎡超の建築物における大規模なリフォームについては、建築確認の対象となりました(令和7年4月1日施行)。また、延べ面積100㎡を超える建築物の大規模なリフォームには建築士により設計・工事監理が必要となります。
建築確認の対象となる大規模なリフォーム(修繕・模様替え)とは、建物の主要構造部分(壁・柱・梁・屋根・階段)の一種以上について行う過半の修繕等を言います。大規模なリフォームに該当するかは、主要構造部分ごとに、壁の総面積、柱の本数等に占める割合に基づき過半を超えるかを判断します。主要構造部分に及ばない、キッチンの入替えや手すりの設置等の修繕には建築確認は不要ですが、階段の総架け替え等は建築確認の対象となります。
2 まとめ
法改正により、木造建築物における建築確認手続きが変更され、構造関連規定審査や省エネ適合性審査の資料が必要になる等、これまでより建築確認手続きに手間と時間がかかることが予想されます。建築計画やリフォームの内容に応じ、建築確認手続きを進める必要があります。
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