

家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
第一種住居地域で家を建てる
住まいと店舗、事務所が混在している地域です
土地を購入する際、必ずチェックしておきたい項目のひとつに用途地域があります。用途地域は13の区分があり、建てることの出来る建築物の種類や大きさなどが定められています。13の区分には「住居系」「商業系」「工業系」に分類され、住居系の中で用途や大きさなどがもっとも厳しく制限されているのが「第一種低層住居専用地域」です。
同じ住居系で第一種がついている地域に「第一種住居地域」があります。この地域は住宅が6~7割、店舗や事務所が3~4割と混在しながらも良好な住環境の保護を目的に設定されています。
仮に土地にかける予算があまり確保できない時は「購入する土地の面積を小さくして3階建を建てる」ということが可能な地域となります。
土地を探す際には価格や広さはチェックしますが、用途地域は注目されにくいかもしれません。今回は第一種住居地域に家を建てる時の留意点を解説していきます。
第一種住居地域のメリットとデメリット
◯メリット
・建ぺい率、容積率が高く、建てられる建物が大きくできる。
・生活に必要な施設(学校、病院、運動施設、店舗、事務所等)を建てることが可能で利便性の高い地域。
・3階建て以上の建築物を建てることができ、自宅と賃貸併用住宅をつくることも可能。
・周辺環境が良く利便性が高ければ資産価値としても高く、仮に将来売却したい時にも売りやすい。
◯デメリット
・高さが厳しく制限されていない分、日当りの悪い場所が増えることが予想される。
・一定規模の事務所や店舗が建てられるため、人や車の往来は一定数あり、場所によっては騒音の問題が生じることもある。
・建物が占める割合が高く、緑化されているエリアが少ない。
・店舗が続く街並みになると看板などが多く見受けられるようになる(景観が落ち着かない)。
以上のようなメリットとデメリットがあります。
この地域で土地の購入を考えるのであれば、実際に現地の状況を確認する必要があります。そうすることで、この地域は「意外と良い土地を見つけることができる穴場な地域」なのです。
他の用途地域の違いはどんなところ
名称が似ている「第一種低層住居専用地域」と「第二種住居地域」の主な特徴や違いはどうでしょうか。
・第一種低層住居専用地域の主な特徴と違い
まずこの地域は低層住居専用なので10m・12mの絶対高さの制限があります。また、敷地境界から建物の外壁までの距離を1m・1.5m離す外壁の後退距離制限などが定められているエリアもあります。したがって、とても良好な住環境を保護するための地域となります。
さらに建ぺい率、容積率も低く抑えられているため、家の大きさはやや小さめになりますが、 その分建物の密集度が低くなるので緑が多くなり、住環境はとても良い地域になります。
・第二種住居地域の主な特徴と違い
この地域は住宅や商業施設、工場などが混在している市街地のうち、住宅の割合が比較的高い地域となります。主に住環境を守るための地域とされているため、住宅と店舗・事務所の割合が5:5程度と、第一種住居地域よりも店舗や事務所の割合が高いといえる地域です。
店舗の割合が高くなると生活において利便性は良くなります。
しかし住宅だけでなく大規模な店舗や事務所、遊戯施設なども建てることが出来るので、人通りが多く賑やかな地域になります。
第一種住居地域の規制や制限
第一種住居地域では主に次のような規制や制限があります。
・道路斜線制限
道路の採光や通風が確保されるように、道路に面した建物の高さを一定部分制限しています。
・隣地斜線制限
隣地側に面した建物の高さが20mまたは31mを超える部分について高さを制限しています。立ち上がりの高さの基準が20mとなり勾配は1.25と定められています。
・日影規制と注意点
日影規制とは日照時間が1年で最も短い冬至頃を基準に、一定時間以上に日影が生じないように建物の高さを制限することです。
第一種住居地域の場合、高さが10mを超える建物の場合、敷地境界線からの距離により、地面から4m または6.5mの高さ(測定水平面)が日影となる上限時間が、自治体ごとで定められています。
一般的な規模の住宅を建てるにうえでは、日影規制を検討する必要はありません。
ただ仮に購入する土地の南側も第一種住居地域で、現在は更地や駐車場の場合、将来そこに建物が建つ可能性があります。(採光や通風が遮られるリスク)そういったケースも十分に考えてプランニングを検討しておくことが大切です。
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佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。






