永井荷風ゆかりの店「大黒屋」は、現在は「市進教育グループ」のカルチャースクール「大人の学び舎 大黒家」となっている。
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市川の豊かな水と緑に恵まれた自然環境は、これまでに多くの著名な芸術家や文化人に愛され、彼らを惹きつけてきた。「市川市教育委員会」発行の『市川の文学』によると、市川に関連する作家は約120名で、近代文学に絞っても、夏目漱石、正岡子規、与謝野晶子、谷崎潤一郎など、そうそうたる面々が挙げられている。そのため、文化人が贔屓にした店やゆかりの地が市内各地に点在している。
例えば、「市川が好き、市川を墳墓の地と決めた」と話すほど市川を愛した小説家・永井荷風ゆかりの店として知られていたのが「京成八幡駅」からも近い「大黒屋」。荷風は1959(昭和34)年4月29日、「大黒屋」で一級酒1本とカツ丼を食べ、帰宅後に日記を記してこの世を去ったという。2017(平成29)年に閉店したが、2019(平成31)年より「市進教育グループ」のカルチャースクール「大人の学び舎 大黒家」となっている。
1935(昭和10)年の「中村味噌醸造所」。
東山魁夷(ひがしやまかいい)は、「私の戦後の代表作はすべて市川の水で描かれています」と語った、市川を代表する日本画家。1946(昭和21)年から、市内で味噌を醸造していた「中村家」の工場の2階を間借りして生活していたことでも知られる。市川の風土、環境が多くの文人・芸術家の創作活動に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。
こうした市川ゆかりの文学者をはじめ、映像作家、写真家など、様々な分野の作家の資料を展示・収集する拠点として、2013(平成25)年に「市川市文学ミュージアム」が開館した。