

賃貸経営をされている方にお役に立つ法律について、最新判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
住所変更を登記しないとペナルティですか?!
住所変更登記の義務化とスマート登記制度
毎日、猛暑が続いており、朝の7時くらいには、気温が30度前後になることが、当たり前になっています。
こうなると、よほど早起きしない限り、長い距離を走るのは大変です。20度台の気温の中で1時間走るには、5時くらいに起きなくてはなりませんが、私には、そこまでの根性はありません。
それでも、何とか走る習慣だけは失わないように、6時くらいに起きて、6時30分くらいから30分は走るようにしています。
30度くらいの気温の中、30分走るのはしんどいのですが、走った後は、まあまあ爽快です。これで、なんとか誤魔化しながら、本格的に走れる秋を待とうと思います。
さて、今回は、住所変更登記の義務化のお話です。
国は、所有者不明土地の解消を目指して、令和3年に民法や不動産登記法などを改正しました(この令和3年に成立した民法等を改正する法律(令和3年法律第24号)を、「令和3年改正法」と呼びます。)。
所有者不明土地とは、次のような土地をいいます。
① 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
② 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地
こうした所有者不明土地は、年々増え続けており、所有者の所在等が不明なために土地が管理されずに放置されて荒れ放題となったり、また、共有者の一部が土地の処分等をしようとしても不明な共有者の同意が得られないために実行できず、土地の利活用が阻害されたりして、社会問題化しています。
この所有者不明土地が発生する主な原因は、相続が発生した土地について、きちんと相続登記が行われてこなかったことや登記上の所有者が住所の変更を登記に反映してこなかったことにあります。
私も、相続事件を取り扱っていると、しばしば亡くなった方の所有名義のままとなっている土地を目にします。ひどいケースでは、曽祖父の所有名義のままという土地もあり、現時点での相続人は、30人以上などというものもあります。
こうなってくると、この30人の戸籍を追い、戸籍の附票を取り寄せて住所を特定するだけでも一苦労です。その上、相続人が特定できても、住所が特定できないケースもよくあります。
こうした事態を防ぐために、国は、令和3年改正法で、相続登記を義務化すること及び登記上の住所について、住所変更登記を義務化することを定めました。
相続登記の義務化は、既に令和6年4月1日に施行されていますが、住所変更登記の義務化は、今年(令和8年)の4月1日に施行されました。
住所変更登記の義務化の概要は、次のとおりです。
① 所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその 変更登記の申請をすることを義務付ける。
② 施行前の住所等の変更でも、未登記であれば、義務化の対象とする(2年間の猶予期間あり)。
③ 「正当な理由」がないのに変更登記の申請を怠った場合には、5万円以下の過料に 処することとする。
この住所変更登記の義務化は、所有者不明土地の解消を目指して行われたものですが、これによって、個人で多数の物件を所有する大家さんは、住所を変更すると、所有している全ての土地について、所有者の住所変更登記を行わなければならず、その労力や費用の負担は、かなりのものです。
そこで、国は、この住所変更登記の義務化と合わせて、土地所有者の負担を軽減するために、住所変更登記を簡素化及び合理化(いわゆるスマート登記制度の新設)する改正を行い、この改正は令和8年4月1日に施行されました。
スマート登記制度とは、個人については、所有権移転登記の申請の際などに、氏名・住所のほか、生年月日等の「検索用情報」の申出を行うと、 登記官が、検索用情報等を用いて住民基本台帳ネットワークシステムに対して少なくとも2年に1回照会して所有権の登記名義人の氏名・住所等の異動情報を取得し、取得した情報に基づき、登記名義人に住所等の変更の登記をすることについて確認をとった上で(変更登記をしてよい旨の申出と扱う)、職権で変更の登記をする制度であり、これによって、登記申請義務は履行済みとなります。この登記には、土地所有者の登録免許税の負担もありません。
他方、資産管理法人などを設立し、その法人に賃貸物件を所有させている大家さんもたくさんいますが、法人については、令和6年4月1日から会社法人等番号が登記事項化されていますので、商業・法人登記簿上で法人の名称や住所の変更があった都度、商業・法人登記システムから不動産登記のシステムに対しその情報が提供され、 この情報に基づき、登記官が職権で変更の登記をします。
これによって、法人の登記申請義務は履行済みとなり、また、この登記には、登録免許税はかかりません。
もっとも、令和6年4月1日以前に法人が所有権移転登記をした場合には、会社法人等番号は登記されていませんので、上記のスマート登記制度の対象となりません。このような場合は、法人が、自ら所有物件について、会社法人等番号を追加登記すれば、上記のスマート登記制度の対象となります。
個人で多数の賃貸物件をお持ちの方や資産管理法人を設立して賃貸物件を所有させている方は、費用や労力の節約のため、上記のスマート登記制度を活用すべきです。
大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。







