

賃貸経営をされている方にお役に立つ法律について、最新判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
車は通さない!2項道路の通行権
私は、いつもクレジットカード機能のついた交通系カードを使って地下鉄に乗っていますが、先日このカードを落としてしまいました。
いつものようにこのカードを使って電車に乗り、電車を降りる前にポケットを確認したところ、このカードを入れているパスケースがありません。カバンの中や周りを探してみても見つからなかったので、乗車駅で入場後に落としたのだと思い、降車駅の駅窓口に行って、駅員さんに事情を話すと、直ぐに乗車駅に電話で確認してくれ、落とし物として届けられていることが分かりました。
この駅員さんは、乗車駅に保管してある期間、乗車駅の対応時間、取りに行く際に持って行くものなどを、素早く説明してくれました。
その日の夜、降車駅の窓口に行くと、1枚の紙に必要事項を記入し、免許証を見せただけで、すぐにカードを渡してくれ、全くストレスレスでした。
カードが落とし物として届けられていたことには、もちろん感謝ですが、この駅員さん達の素早さ、丁寧さ、正確さには、驚きました。
さすが、日本の駅員さんは、優秀です。
さて、今日は、2項道路の通行権のお話です。
先日、こんな相談がありました。
Aさんは、自分の土地(以下、本件土地といいます。)が2項道路の指定を受けているのですが、本件土地に接する土地を購入したB社から、「本件土地は道路なのだから、本件土地を自動車で通行することを認めろ。」と要求されました。B社は、この土地に、駐車場付きの一戸建てを建てて、売り出したかったようです。
しかし、AさんがB社の要求を拒否したので、B社と裁判になってしまいました。
そこで、Aさんは、この事件を依頼するために、私の事務所に相談にこられました。
前にも1度このコラムで取り上げましたが、まず、この2項道路というのは一体どういう道路なのでしょうか。
少しおさらいしてみましょう。
建築基準法では、都市計画区域内及び準都市計画区域内の建築物の敷地は、幅員が4メートル以上の道路に2メートル以上接道していなければ、新たに建物を建築することができません。
建築基準法が施行されたのは昭和25年ですが、この当時は、幅員4メートル以上の道路に接道していない土地は沢山ありました。
このため、建築基準法を単純に適用してしまうと、こうした土地は接道していない土地となり、その上に建っている建物は、建築基準法に違反する建物となります。
そこで、救済措置として、建築基準法施行の際、またはある建物が建っている地域が都市計画区域に指定されたときに、現に建物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、市町村長または都道府県知事が指定したものは、建築基準法上の道路とみなすことにしました(建築基準法42条2項)。
ただし、この救済措置により幅員4メートル未満の道が長期間残ってしまっては困るので、建築基準法は、2項道路の中心線から左右に水平距離2メートル(場所によっては3メートル)ずつ後退した線を道路の境界線とみなすことにしています。
この結果、2項道路に接道している土地上の建物を立て直すときは、この境界線から道路側は建築制限を受けますので、2項道路に接道している土地上の建物が全て建て直されると、最終的には、幅員4メートルの道路が確保されることになります。
では、B社の「本件土地は道路なのだから、本件土地を自動車で通行することを認めろ。」という要求は、認められるのでしょうか。
最高裁判所は、2項道路の通行について、「42条2項道路を通行することによって日常生活上不可欠の利益を有するものは、当該道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者がその通行を受任することによって通行者の利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対してその妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格的利益)を有する。」と判断しています。
B社の土地が、本件土地を通らなければ公道に出ることができない土地であれば、B社は、本件土地を通行することについて「日常生活上不可欠の利益を有する。」ということになります。
また、Aさんは、B社が、本件土地を徒歩や自転車で通行しても、特に損害はないでしょう。
ただ、B社の要求は、単に通行させろというものではなく、自動車を通行させろというものです。
この点、Aさんは、これまで、本件土地を自動車で通行することを認めておらず、B社が買った土地の前所有者も、自動車で本件土地を通行していませんでした。
また、本件土地に接する土地上には、一戸建て、マンション、アパートなどがありますが、これらの建物に居住している人たちも、同様でした。
さらに、自動車での通行となれば、徒歩や自転車での通行と比べて、他の通行人の危険や騒音被害などは、各段に高くなります。
裁判所は、Aさん側が、これらの点を主張、立証すれば、B社に本件土地を自動車で通行する権利があるという判断はしないと思います。
ただ、第三者から見ると、本件土地が、自動車で通行することが認められていない土地であることは分かりませんので、B社に勝訴しても、B社から土地を買った人と、もう一度裁判になるリスクがあります。
そこで、私は、Aさんに、B社が第三者に土地を売ってしまう前に、「本件土地が、自動車で通行することが認められていない土地である」と記載した看板を立てるように指示しました。
このような看板があれば、B社の土地を買おうとする第三者は、現地を見に来たときにこの看板を見て、本件土地が自動車は通行でいない土地であることを知り、それを前提としてB社の土地を買うので、もう一度裁判になるリスクは避けられるはずです。
AさんとB社の事件は、恐らくB社は徒歩または自転車で本件土地を通行することができるという内容の和解をするか、判決を得ることができるのではないかと思っています。
大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。







