図は『阪神電車沿線名所図絵』のうち、「香櫨園駅」から「石屋川駅」までの区間を切り出したもの。
この区間を流れる「夙川」「芦屋川」「住吉川」沿いは風致地区にも指定された閑静な高級住宅地で、阪神間の 文化・建築（近年「阪神間モダニズム」と呼ばれる）の中心地となっている。
「阪神電鉄」初期の沿線開発！「香櫨園」の遊園地と海水浴場
「阪神電鉄」は開業まもない1905（明治38）年の夏、関西最初の海水浴場の一つ「打出浜海水浴場」を開設し、沿線の観光開発を開始した。1907（明治40）年、大阪の実業家が「夙川」の右岸（西岸）に「香櫨園（こうろえん）遊園地」を開設すると「阪神電鉄」は園内の施設を経営するように。しかし次第に人気が衰退し1913（大正2）年に閉園、「阪神電鉄」は「香櫨園海水浴場」（「打出浜海水浴場」の後継となる海水浴場、上路線図右下）へ園内にあった施設を移設した。その後、「香櫨園遊園地」の跡地は宅地として開発され、現在「香櫨園」は『西宮七園』と呼ばれる西宮を代表する高級住宅地の一つとなっている。
写真は明治後期～大正初期の「香櫨園遊園地」。
現在の「石屋川」。
阪神本線の北側には「六甲山地」が拡がり、豊かな湧水は「灘五郷」の酒造りの里を育んだ。また、良質な花崗岩の石材の産地としても知られ、安土桃山時代には「大坂城」の築城の際にも使用された。江戸時代に評判になると全国各地へ船で運ばれ、積み出しした「御影浜」の地名をとって「御影石」と呼ばれるようになった。「六甲山地」の「御影石」は淡い桜色が特徴で、現在は全国各地の花崗岩の総称となった「御影石」と区別するため「本御影石」と呼ばれる（現在は「本御影石」の採掘は禁止されている）。採掘は江戸中期に全盛期を迎え、「石屋川」沿いの石屋村まで牛車で運び、加工の上「御影浜」から出荷された。石屋の地名は石工の村として栄えたことに由来し、明治期頃までは多くの石材店があったといわれる。