

不動産を中心とした資産活用及び相続対策について、税理士のアドバイスです。
税理士はどのように選んだらよいのか
相続税対策で多く寄せられる質問に、「税理士はどのように選んだらよいのか」というご質問があります。
これは同業者として、お答えするのが難しい質問です。
あまり同業者を悪く言えませんものね。
同業者批判にならないように言えば、専門知識や経験が少なく、人格的にもバランスの取れない税理士や税理士法人は避けた方がいいということになりますが、こんな回答では、当たり前すぎて、身も蓋もありません。そういう事務所をどうしたら上手に探せるかということを尋ねているのに、です。
試しに、ChatGPTに尋ねてみると、つぎのような回答が返ってきます。
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以下、chatGPTの回答:
相続税の申告を税理士に依頼する際には、専門性や相性が非常に大切です。以下の観点から選ぶと安心できます。
1. 専門性を確認する
①資産税(相続税・贈与税・譲渡所得税)に強い税理士を選ぶことが最重要です。
税理士の大半は法人税や所得税をメインにしており、相続税申告をほとんど扱っていないケースも多いです。
②過去の相続税申告件数を尋ねましょう。経験豊富な事務所は年間数十件〜数百件を扱っています。
③不動産評価や非上場株式評価など、特殊な財産の取扱経験があるかも確認してください。
2. 費用体系の透明性
①相続税の申告報酬は「遺産総額の○%」や「基本報酬+加算方式」など事務所によって大きく異なります。
②見積書を必ずもらい、追加費用が発生する条件を確認してください。
③「安すぎる事務所」は経験不足や手続き簡略化のリスク、「高すぎる事務所」は不要な負担になる可能性があります。
3. コミュニケーションと信頼感
①初回相談で、説明がわかりやすいか、質問に丁寧に答えてくれるかをチェックしましょう。
②相続は家族間の感情や調整が絡むため、人間的な信頼感・相性も重要です。
③「節税」ばかり強調するよりも、法令遵守と円滑な相続手続きの両立を重視している税理士が安心です。
4. ワンストップ対応できるか
①相続手続きでは、税務だけでなく登記(司法書士)、遺言執行(弁護士)、保険・証券手続きなどが発生します。
②他士業と連携してワンストップで対応できる事務所は、依頼者の負担が少なくスムーズです。
5. 初回相談の活用
①多くの事務所で初回無料相談を実施しています。
②複数の事務所で相談し、説明内容・費用感・人柄を比較してから決定すると失敗が少ないです。
まとめると、
「資産税に強い経験豊富な税理士」+「費用が明朗」+「信頼できる人柄」
この3点を基準にすると安心して依頼できます。
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チャット君の回答は以上です。どうでしょう。お役に立てそうですか。
税理士の立場から申し上げると、初回相談の活用で「複数の事務所で相談し、説明内容・費用感・人柄を比較して決定する」方法は、あまりお勧めしません。
というのも、税理士との接触があまりない方が、人柄はともかく、申告書の作り方や費用感の明確な基準を持っていることは、少ないのではないかと思えるからです。
これは、抜歯してもらう歯科医の選び方として考えると、どのように抜歯するのかの技術的なことを事細かに説明してもらっても、専門知識のない方から見て適切な腕のいい歯科医を見分けるのは困難だということと同様です。歯医者に行くと、壁いっぱいに、米国の大学の卒業証書や、学生時代の写真を張っているところがありますが、これで腕のいい歯科医を判断できるのでしょうか。
費用感にしても、具体的な仕事をしてもらう前に、適切な費用感を持って高い安いを判断するのは至難の業です。
見積書をもらうというのもどこまで効果があるか考えものです。
というのも、相続税の申告書は、亡くなられた方の職業や人柄によりだいぶ変わってくるからです。遺産に関する資料収集や被相続人のお金の流れの分析などを行う前に見積もりをと言われても、受ける税理士も大変です。
ではどのようにしたらよいでしょうか。
前提として、税理士業界の現状を依頼者の側から理解することは無駄ではないと思いますので、以下説明します。
登録している税理士は全国で81,565人(令和7年〔2025年〕8月末現在)ほどです。
税理士になるためには税理士試験を受けるか、弁護士や公認会計士の資格を持つ人が税理士登録をする必要があります。弁護士や公認会計士は、税理士法第2条・第3条 に基づき「税理士となる資格」を当然に有しています。しかし、資格を持っているだけでは税理士業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)を行うことはできません。税理士名簿への登録が必要です。
弁護士や公認会計士の税理士登録の流れは次のとおりです。
1.税理士名簿への登録申請
①弁護士 → 所属の弁護士会を経由して申請
②公認会計士 → 日本公認会計士協会を経由して申請
2.税理士試験合格者などと同様、最終的には 国税庁の所轄機関である日本税理士会連合会(日税連) が審査・登録
3.登録完了後、税理士証票が交付
これらの手続きを経て、初めて「税理士」として名乗り、独占業務を行えるようになります。
ただし、司法試験には税法はありません。公認会計士試験には租税法という科目はありますが、個別の税法を学ぶ機会は少ないようです。それ故、ある意味、税法に関する知識は、ほぼ素人同然なのです。
税理士試験には、逆に民法がないので、たとえば、「独身の異母兄弟が亡くなった場合に、みたことも会ったこともない人(異母兄弟)の財産や債務を相続することとなる」などということを判断できる税理士は、よほど独自に勉強しているか経験豊富でないと難しいということになるのです。
相続税は、生前に被相続人(財産を残して亡くなった方)から受けた贈与は相続財産に加算して相続税の申告書を作成します。この加算の訴求期間が2024年の税制改正で段階を踏んで7年に延長されました。
さあ、そこで、問題です。この相続開始前の贈与が加算されるのはどんな人でしょうか。
多分、税理士の8割は、「法定相続人」と答えると思います。
これは誤りです。相続税の計算上、過去の贈与が加算されるので、加算対象となる人は、相続又は遺贈で財産を取得した個人です。
試しにこのくらいの質問をしてもいいでしょう。
多くの税理士は、法人税、所得税や消費税、その前提となる帳簿作成業務で成り立たせています。滅多に当たらない相続税の申告業務のために日頃から勉強をするのは、大変です。それで、専門家のくせに、やたら相続税の節税本を読み漁ることになってしまったりするのです。
業界的には、自称「相続税の専門家」がたくさん存在するので、過去の申告件数を尋ねても口を濁されてしまったり、水増し件数を言われたりする可能性を排除できません。
まとめると、結局、人柄で選ぶしかなさそうです。
まず、きちんとした日本語が話せるか。拝見しますやお伺いします。を「見させていただきます」とか「いかさせていただきます」程度の表現しかできない税理士は避けるべきでしょう。
あとは、経歴ですね。税務署で相続税の調査をしていた経験がある人は、もれなくとは言えませんが、必要な知識と経験がある人が多いということはできます。国税庁は研修が手厚いので、それなりの研修を受けて勉強している可能性が高いからです。
専門性をチェックするのは素人の方には大変です。先ほどの「相続開始前の贈与加算をしなければならない人はどんな人ですか?」とかでチェックしていただいたらいかがでしょうか。
以上、大切なご遺産を守るために、良い税理士に出会われることをお祈りいたします。
田中 耕司Kouji Tanaka税理士
JTMI税理士法人日本税務総研 https://tax365management.com/
JTMI税理士法人日本税務総研/相続支援ナビ https://souzoku.jtmi.jp/taxprime/
税理士法人日本税務総研 代表 大阪国税局・国税不服審判所、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)勤務を経て、平成17年より現職。上場企業や中小企業の会計実務、不服審査実務にも通じた資産税の専門家。著書に『相続・贈与・遺贈の税務』(中央経済社)他。






