

不動産売買のトラブルを防ぐために判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
成年後見制度や遺言制度の見直し
【Q】
民法改正により成年後見制度や遺言制度が見直されると聞きました。
今後どのような影響があるのでしょうか。
【回答】
2026年6月24日に公布された改正民法により、成年後見制度や遺言制度の見直しが行われました。これまで成年後見制度では、本人の判断能力に応じて後見・保佐・補助の3つの制度を利用してきましたが、改正により補助制度に一元化されることになりました。
また、遺言制度では、普通方式の遺言として新たに保管証書遺言制度が創設され、さらに自筆証書遺言等において押印要件が廃止されることになりました。
1 成年後見制度の見直し
(1)現在の法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3つの制度を設け、事理弁識能力を欠く常況にある場合に後見、著しく不十分な場合に保佐、不十分な場合に補助の制度を利用します。
家庭裁判所が後見等開始の審判をすると、後見人等が選任され、後見人には包括的な代理権・取消権を、保佐人には重要な財産行為についての同意権・取消権・裁判所が定めた行為についての代理権を、補助人には裁判所が定めた行為について同意権・取消権・代理権を付与し、被後見人等の財産管理行為等を支援します。
(2)しかし、現在の成年後見制度では、特に事理弁識能力を欠く常況にある者と認定されると、後見人に包括的な代理権や取消権が付与されるため、本人の自己決定権が必要以上に制限されるケースがあることや、事理弁識能力が回復しない限り制度の利用をやめることができないこと等が問題とされていました。
そこで今回の民法改正では、本人の自己決定権を尊重する観点から、後見・保佐の制度が廃止され、本人に必要な事項について代理権・取消権を付与する補助制度に一元化されることになりました。
同制度において、事理弁識能力を欠く常況にある者と認定されるときは、①重要な財産行為についての取消権、②本人に対する重要な通知の意思表示受領権、③財産の現状を維持するための保存行為権を有する特定補助人の選任を選択することが可能となります。特定補助人は、これまでの成年後見人と異なり、包括的な代理権を有さないため、土地の売却等の手続きを行う必要がある時には、個別に代理権の審判を受ける必要があります。
(3)また、現在の法定後見制度では、事理弁識能力が回復しない限り制度の利用をやめることができませんでしたが、改正法では、家庭裁判所が「補助制度の利用の必要性がなくなったと認めるとき」には事理弁識能力の回復に変わらず、申立て又は職権により、補助制度の利用を終了させることが可能となります。
(4)さらに、今回の民法改正では、本人の自己決定をより尊重するため、①補助人の選任時の考慮要素として「本人の意見」が冒頭に規定され、②補助人の解任事由として「本人の利益のために特に必要があるとき」を追加し、③補助人が職務を遂行する際に、本人に情報提供し、話を聞く等の適切な方法により本人の意向を把握することを明確化しています。その他、補助人が行った事務内容等を考慮して報酬額を決定することを明確化し、また、本人の死亡後に補助人が一定の死後事務を行うことを認めています。
今回の成年後見制度の見直しは、公布日の2026年6月24日より2年6月を超えない日に施行されます。現行の法定後見制度を利用している場合、改正法施行後も基本的に現行法の内容で利用を継続できますが、新制度へ移行する申立をすることも可能となります。
2 遺言制度の見直し
(1)保管証書遺言制度
現行法の普通方式の遺言には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があります。自筆証書遺言では、2020年7月に自筆証書遺言保管制度が創設され、本人の申請により法務局が自筆証書遺言を保管し、遺言者の死亡確認後に相続人等への通知や相続人から遺言書閲覧請求等を行うことができ、同制度を利用した自筆証書遺言には検認手続きが不要になります(2020年7月10日施行)。
現在多く利用されている自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を直筆で記載する必要があるため、遺言者の負担が大きいことが問題とされていました。今回の改正法では、デジタル化が進でいる現状を踏まえ、遺言の内容をパソコン等で作成したデータ(署名又はこれに代わる措置(電子署名等)を講じたもの)の保管を法務局に申請し、遺言者が遺言保管官の前で全文を口述し、法務局が遺言を保管する方式の「保管証書遺言」が創設されることになりました。「保管証書遺言」では、オンラインによる保管申請やウェブ会議を利用した意思確認の手続きが可能となる等、遺言者にとって利用しやすい制度となっています(2026年6月24日から3年以内に施行)。
(2)押印要件の廃止
現在の自筆証書遺言と秘密証書遺言では、遺言者の押印が要件となっていますが、改正法施行により押印要件は廃止され、押印は任意化されることになりました(2026年6月24日から1年以内に施行)。
3 まとめ
2026年6月24日の民法改正により、成年後見制度や遺言制度の見直しが行われました。成年後見制度は、これまで後見・保佐・補助と三つの制度を使用してきたものが、補助制度に一元化されます。
改正民法施行後は、売買の当事者に意思能力が不十分な方がいる場合には、改正法施行後の補助人を相手として売買取引等を行う可能性がありますので、留意する必要があります。







