

不動産売買のトラブルを防ぐために判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
不動産の増築
【Q】
私は、実家に戻り、高齢の父Aと同居することになりました。その際、私が増築費用を負担して父A名義の住居(戸建住宅)の増築工事を行う予定です。私が工事を行った住居の増築部分は誰の所有になるのでしょうか。
【回答】
あなたが行った増築部分がAの住居(既存建物)の構成部分となり一体の建物になったと認められる場合には、増築部分は住居(既存建物)に「付合」したものと認められ、増築部分の所有権は、原則、住居(既存建物)の所有者Aが取得すると考えられます。
ただし、付合によりAが増築部分の所有権を取得した場合、Aは増築部分の贈与を受けたものとして、Aに贈与税が課税されることが考えられるため、双方の合意により、増築部分の価格割合に応じた持分をあなたが取得し、増築後の建物をAとあなたの共有とすることも方法の一つと考えられます。
1 不動産の付合
(1)民法242条は、不動産に他人の物が結合し「従として付合した」状態となった場合の物の所有権の帰属について、付合物の分離による経済的損失を回避し、取引安全を図る観点から、原則、不動産の所有者が付合物の所有権を取得すると定めています。
同条の「従として付合した物」とは、物が「不動産の構成部分又は社会通念上その不動産の一部と認められる状態となったとき」(最判昭和35年10月4日判決)をいい、著しく毀損しなければ分離不可能な場合や分離に著しい費用を要し分離が不相当である場合に「付合」が認められます。
リフォーム工事により既存の床に新たに張り付けた床材や壁に貼り付けた壁紙等は既存建物への付合が認められ、原則、既存建物の所有者が床材等の所有権を取得します。
一方、金具で壁に設置されたエアコン等は取り外しが容易であるため「付合」しないと考えられます。
なお、同条但書は「権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない」と規定しており、地上権等の権原に基づき不動産に物を附属させた場合には、「付合」せず、当該権利者に物の所有権は留保されます。
(2)本件設例のケースにおいて、Aの住居(既存建物)に増築工事を行ったことにより、増築部分が既存建物の構成部分となり、構造上・機能上の観点から一体の建物になったと認められ場合には、増築部分はAの住居(既存建物)に「付合」したものと認められ、増築部分の所有権は、原則、既存建物の所有者Aに帰属すると考えられます。
一方、増築部分を容易に分離することが可能な場合や増築部分が壁・床・天井により構造上独立性を有し、独自の出入口の設置により機能的な独立性も備え、既存建物と一体に建物になったとはいえない場合には、増築部分はAの住居(既存建物)に「付合」せず、あなたの所有物になると考えられます。
(3)本設例のケースとは少し異なりますが、異なる所有者が所有する隣接した2棟の建物について、各建物の壁を除去する等の工事により一棟の建物となったケースについて、東京地裁平成21年2月25日判決は「工事によって一階から屋上まで接着し、連続した一重の外壁に囲まれ、容易には分離することができない状態となり」、「各建物の2階及び3階部分について、両建物が接する面の外壁が除去された結果、いずれも単独では建物の要件を欠くようになったこと」、また、「各階ごとに両建物をまたいで部屋が存在する状態となり、両建物の全体が一体となって利用され、取引される状態となった」として、民法244条の類推適用により、両建物は付合して一棟の建物になり、各建物所有者が各建物の価格割合に応じた持分により共有すると判断しています。
2 まとめ
本件設例において、増築工事により増築部分が既存建物の構成部分となり、一体の建物になったと認められる場合には、「付合」により増改築部分の所有権は、既存建物の所有者Aが取得すると考えられます。
本件設例では、あなたが増築費用を負担しており、Aに贈与税の負担が生じる可能性があるため、増築部分の価格相当の持分をあなたが取得する等の税務上の対応を専門家に相談の上、計画をすすめる必要があります。







