

家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
屋上のある家をつくる
限られた予算で有効に家を建てる
全国的に主要都市の地価が上昇しています。特に首都圏においては敷地面積30~40坪以内の場合、平均約4,000万円で、2024年から比較すると約800~850万円上昇しています。
建築工事費は全国平均にすると約3500万円で、同様に2024年から比較すると約100万円上昇しています。その影響もあるのか最近の注文住宅は「コンパクト化」の傾向が見られます。
コンパクト化でよく挙げられる「平家住宅」は50歳代で家を建てる人に人気ですが、将来を考えるとバリアフリーかつワンフロアーで暮らせる安心感も魅力です。
延床面積30坪2階建ての住宅より、平家の方が同じ仕様であれば250万円前後は安くなるというデータもあります。
土地が高ければ、予算に応じて求める敷地を狭くしなければなりません。その場合、建築基準法において延床面積が緩和される「地下」や「小屋裏ロフト」を計画するのも手段です。
今回取り上げる「屋上」も、延床面積には算入されません。狭くなった敷地に「もうひとつの床を増やす」ということで、屋上を考えてみてはいかがでしょうか。
※金額等の数字は㈱リクルート「2025年 注文住宅動向・トレンド調査」を参考
どんな屋上がある?
屋上のつくり方は様々です。もっとも一般的なのが、室内から屋上に上がり、ペントハウス (塔屋)と呼ばれる小屋をつくり、屋上に上がるタイプです。あるいは屋外階段を地上階から設置して屋上まで上がっていくタイプです。もうひとつは3階などの最上階に屋上スペースを設けたい際に、4.5畳程度の居室を設けてその居室から直接出入りするタイプのつくり方です。いずれも周囲環境や土地形状の広さに応じて、つくり方を考えると良いでしょう。
どんな住宅にもつくれる?
屋上というと鉄筋コンクリートの住宅のイメージが強いかも知れません。たしかに以前まで、「木造住宅の屋上バルコニーは10㎡以下かつ1/50以上の勾配が必要」であったため、あまり設ける人はいませんでした。しかし2008年に瑕疵保証の規制が緩和され、広さは無制限、勾配も1/100での施工が可能となり、屋上のある住宅が増えていったのです。
屋上のメリットとデメリット
屋上のメリットは家族の希望に応じてどのようにも使い方が可能なことです。デメリットとしては雨漏りのリスクです。
○主なメリット
1 周囲環境次第で眺望が楽しめる
2 採光を有効に確保できるため、効率的な家庭菜園やガーデニングが行える
3 広いスペースにより子供の遊び場、あるいは運動場として利用が可能
4 ホームパーティやBBQなど社交の場として利用できる
5 布団や大きな洗濯物などを干せる
○主なデメリット
1 勾配が緩いため、雨漏りのリスクが大きくなる
2 一定の期間が経過するとメンテナンス費用が必要となる
3 安全対策や近隣への配慮をしたデザインや用途の計画が必要
4 階下への熱対策をしておく必要がある
5 屋上への強い希望や利用習慣がないと、いずれ使われなくなり「無駄な計画」となる可能性が高い
屋上のある家を建てる際の注意とポイント
一般的な家づくりは室内をいかに動きやすい空間とするかを考えます。しかし限られたスペースや敷地条件の中で、なかなかプラスαとしての広い面積を確保することが難しい場合もあります。
屋上はなんといっても「空を感じられるスペース」をつくれることが魅力です。ただ注意するべきは「利用の仕方」です。これが明確ではなく、ただ単に「いろいろ使えるから」という発想だけでは使わなくなるでしょう。
家族のライフステージにおいてどのように利用していくのかをしっかりとイメージし、給排水設備や照明・コンセント、フェンスの高さなども考えておくことが必要になってきます。
また、大雨や雨漏りのリスクについても心配されるかもしれません。たしかに日本は雨の多い国なので、雨は早めに流すことが基本です。ただ近年は防水工事が10年保障で、かつ防水の材料もとても優れてきています。きちんとメンテナンスをしていけば、それ程問題にすることはないです。
多少のメンテナンス費用はかかりますが、それ以上にここでの体験が子供たちの記憶に残っていくでしょう。さらには家族に寄り添った空間としてもなっていくでしょう。
屋上は動きやすい機能的な間取りではなく、家族の想い出のための「余白」であり、その「余白」を住む家族が利用することで、「時の豊かさ」を得られるのです。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。






