2026年路線価の動向と不動産マーケットの状況
全国平均の地価が2010年以降で最大の上昇に
国税庁が発表した2026年の路線価によると、標準宅地の変動率は全国平均で2.9%上昇しました。5年連続の上昇となり、現在の算出方法となった2010年以降では最大の上昇幅となっています。
路線価は道路ごとに1㎡当たりの土地の価格を定めたもので、その道路に面する宅地の価格を算出する基準となる地価です。国税庁が毎年1月1日時点の公示地価に基づいて発表しており、相続税や贈与税を算定する際に利用されます。
都道府県別の平均値で上昇率が最も高いのは東京都で、上昇率は昨年より1.3%拡大して9.4%でした。次いで上昇率が高かったのは昨年と同様に沖縄県(6.6%)ですが、3位は昨年の福岡県から今年は大阪府(5.1%)に変わっています。
今年の路線価の動向について、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員の髙橋雅之さんに伺いました。
「全体として地価の上昇基調は続いており、特に東京都心や大阪中心部は再開発が活発で投資やインバウンド(訪日外国人)の需要も根強く、地価上昇を牽引しています。住宅需要が堅調なためマンション価格も上昇していますが、大都市の周辺部をはじめ札幌市や福岡市といった主要都市では価格高騰に地域住民がついてこられず、新築から中古へ、マンションから一戸建てへ、といった動きが見られることも事実です」
神奈川県と千葉県が4%台の上昇。埼玉県も上昇拡大
首都圏では神奈川県と千葉県が昨年に続いて4%台の高い上昇率となっています。埼玉県の上昇率は2.3%ですが、上昇幅は昨年より0.2%拡大しました。
都道府県庁所在地の最高路線価で全国トップとなったのは東京都中央区の銀座中央通り(鳩居堂前)で、前年比11.0%と4年連続の上昇でした。さいたま市の大宮駅西口駅前ロータリーは12.5%と3年連続で二桁の上昇率です。千葉市の千葉駅東口駅前広場も8.5%と高い上昇率ですが、上昇幅は前年より2.7%縮小しています。
「投資ニーズが集中する東京都心は高い地価上昇率が続いていますが、周辺の横浜市やさいたま市などではマンション価格が高騰しているため、湘南エリアや神奈川県央エリア、千葉県の東京寄りエリアなどに一般的な実需層の購入ニーズがシフトする動きが出ています。また、東京23区ではこれまで比較的割安だった中野駅周辺や北千住駅周辺などで再開発が活発化し、地価が大きく上昇しています。ただ、最近では建築コストの上昇で再開発計画が頓挫するケースも見られており、今後の動向に注意が必要でしょう」(髙橋さん)
大阪市中心部は投資マネー流入で上昇続く
近畿圏では大阪府が5.1%、京都府が3.9%、兵庫県が2.4%といずれも上昇し、上昇率が拡大しています。大阪府と京都府は5年連続、兵庫県は4年連続の上昇でした。
都道府県庁所在地の最高路線価では、京都市の四条通が9.5%、神戸市の三宮センター街が9.6%と昨年に続いて高い上昇率を維持しました。大阪市の御堂筋1.5%の上昇でしたが、上昇率は前年より1.7%縮まり、2年連続の縮小となっています。
「大阪市は梅田周辺など中心部で地価上昇が続いており、利回りや値上がりを期待して投資マネーが流入しています。今後も2031年を目指すなにわ筋線の開業やカジノ構想、さらに副首都構想などが控え、上昇基調が続く見通しです。一方で京都市では中心部の上昇がやや鈍化していますが、南区や隣接する向日市などで大規模マンションの開発が活発化しており、今後の上昇が期待できます」(髙橋さん)
愛知県、福岡県ともに地価上昇が鈍化
愛知県は平均変動率が2.2%の上昇でしたが、上昇幅は前年から0.6%縮小し、2年連続で鈍化しました。名古屋市の最高路線価である名駅通りは1.2%上昇しています。
「名古屋駅周辺では再開発計画がストップするケースが出るなど、建築コスト上昇の影響が見られ、地価も伸び悩んでいます。自動車など地場産業は堅調ですが、地価を大きく押し上げるほどの勢いにはなっていないようです。ただ、リニア中央新幹線の開業に見通しが立ちつつあることからマンション開発も回復傾向が見られ、今後の地価上昇には期待が持てるでしょう」(髙橋さん)
福岡県の平均変動率は4.2%の上昇と、上昇幅が前年から0.8%の縮小に転じました。福岡市の最高路線価である渡辺通りは前年と同じ2.5%の上昇率です。
「博多駅の複合ビル計画が建築費の高騰で中止になるなど、ここ数年は再開発が活発だった福岡市でもコスト高の影響が見られます。マンション価格の高騰についてこられなくなった地域住民のニーズが一戸建てにシフトする動きも見られ、地価上昇にも頭打ち感が強まりつつあるようです」(髙橋さん)
マンション供給が縮小し、地価の地域格差が拡大!?
東京や大阪など大都市を中心に地価の上昇傾向は続いていますが、名古屋市や福岡市、あるいはさいたま市や横浜市といった主要都市でもマンション価格の高騰で住宅需要が周辺地域にシフトし、地価上昇が鈍化する動きも見られるようです。今後の地価やマンション価格の動向について、髙橋さんは次のように予測しています。
「日米の強調による円買い介入が実施された後も円安基調は続いており、国内外からの投資マネーの流入による東京都心や大阪市中心部での地価上昇は今後も続くでしょう。ただ、金利が上昇していることもあり、マンションよりも投資効率の高い商業施設やホテル、データセンターなどの開発に注力する動きも見られます。また、住宅需要が中心部から周辺へシフトする動きも見られますが、その際にも利便性や住みやすさによって取捨選択される傾向が強まっています。建築コストの高騰で再開発が頓挫するケースが目立っていることから、地域ごとの地価にも優勝劣敗による格差が強まりそうです」
金利や物件価格の上昇で住まいのコストが増大しつつあるな か、今後は住む地域を選ぶ際にも将来性や資産価値をシビアに見定める視点が求められるでしょう。
(取材協力:東京カンテイ)








