2026年公示地価から読み解く不動産マーケットの現状
全国平均が5年連続で上昇。開発見直しで上昇鈍化の動きも
国土交通省から発表された2026年1月1日時点の公示地価によると、全国・全用途の平均変動率は前年比2.8%上昇しました。上昇は5年連続となり、上昇幅は前年の2.7%からわずかに拡大しています。
三大都市圏の平均を見ると住宅地はプラス3.5%、商業地は同7.8%と、いずれも上昇幅が拡大しました。地方圏の平均では住宅地が同0.9%、商業地が同1.6%と上昇しましたが、住宅地の上昇幅は前年より縮小し、商業地は横ばいとなっています。また地方圏の中でも地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)は住宅地が同3.5%、商業地が同6.4%と高い上昇率ですが、上昇幅は前年より縮小しました。
地価は全国的に上昇傾向にあるものの、地方圏などで上昇幅が縮小する動きが見られる状況について、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員の髙橋雅之さんは次のように分析します。
「東京圏や大阪圏の中心部では地価上昇の勢いが強まっていますが、名古屋圏や地方四市などでは鈍化傾向が見られます。北海道新幹線の札幌延伸が後ろ倒しになるなど、建築コストの上昇による開発計画の見直しが各地で相次ぎ、発展への期待感が停滞しているこが一因でしょう。一方で観光地などの地価上昇を牽引してきたインバウンド(訪日外国人)需要は引き続き堅調ですが、ニセコや白馬など富裕層を惹きつけるリゾートエリアにマネーが集中するなど、地域による濃淡も見られます」
東京都心は上昇幅が拡大。割安なエリアに需要がシフト
地域別に見ていきましょう。まず東京圏は住宅地が前年比プラス4.5%と前年の同4.2%から上昇幅が拡大し、5年連続の上昇でした。上昇率が高かったのは同9.0%上昇した東京都区部で、特に区部都心部は同13.2%と前年に続いて2ケタの上昇となっています。また、千葉市が同5.8%上昇したほか、相模原市(同4.5%)、川崎市(同4.4%)なども高めの上昇率です。
一方、商業地もプラス9.3%と上昇率が拡大し、5年連続で上昇しました。東京都区部は同13.8%上昇し、区部都心部は同14.8%の上昇率となっています。また、川崎市(同9.0%)、千葉市(同8.6%)、横浜市(同8.2%)などの上昇率も高く、いずれも前年より上昇幅が拡大しています。
「東京都心部はオフィスやホテル、商業施設の開発が活発化しており、商業地の上昇とリンクする形で住宅地の上昇率も伸びています。都心では手が届きにくくなった実需層が近郊や郊外エリアの住宅に選択肢を広げており、特により割安感の強い千葉方面の人気が高まっているようです。松戸市や柏市、つくばエクスプレス沿線などで若いファミリー層の需要が強く、なかでもつくばエクスプレスの快速停車駅がある流山市や茨城県守谷市は住宅地・商業地とも2ケタの上昇となっています。このほか、横浜市や川崎市、さいたま市なども堅調さを維持していますが、住宅価格の割高感が強まっており、藤沢市など割安なエリアの人気が高まる動きも見られます」(髙橋さん)
大阪市・京都市の中心部がインバウンド需要などで上昇拡大
大阪圏は住宅地が前年比プラス2.5%と前年より上昇幅が拡大し、5年連続で上昇しました。大阪市は中心6区が同8.5%上昇するなど、市の平均でも同6.5%の高い上昇率となっています。また、神戸市東部4区(同4.2%)や京都市中心5区(同3.9%)も高めの上昇率となりました。
商業地はプラス7.3%と4年連続で上昇し、上昇幅は前年の同6.7%から拡大しています。大阪市(同12.7%)と京都市(同10.1%)は前年に続いて2ケタの上昇となり、大阪市中心6区は同14.8%の高い上昇率です。
「大阪市や京都市はインバウンド向けの商業施設やホテルなどが集積し、そこで働く人の居住ニーズが高まって地価の上昇傾向が強まっています。特に『うめきた』など大規模再開発が進む梅田周辺ではタワーマンションの供給が活発化しており、北摂や阪神エリアの住宅ニーズも堅調ですが、大阪府南部や奈良方面では住宅地の上昇は限定的です」
名古屋市はリニア開業延期、福岡市は価格高騰で上昇鈍化
名古屋圏の住宅地は前年比プラス1.9%、商業地は同3.3%と、ともに5年連続の上昇でしたが、上昇幅は前年より縮小しました。名古屋市は住宅地が同3.1%、商業地が同4.5%と名古屋圏の平均を上回っていますが、やはり上昇幅は縮小傾向です。
「リニア中央新幹線の開業延期により名古屋駅周辺の地価上昇が鈍化し、マンション販売も苦戦気味のようです。自動車関連産業の業績が堅調なことから住宅ニーズは根強いものの、実需による一戸建ての売買が中心で投資マネーが入りにくい点も、力強い地価上昇に結びつかない要因と言えるでしょう」(髙橋さん)
福岡県の住宅地は前年比プラス3.7%、商業地は同5.2%と、いずれも上昇率が前年より縮小しました。福岡市は住宅地が同7.0%、商業地が同9.0%と高めの上昇率ですが、やはり上昇の鈍化傾向が続いています。
「福岡市では地価の高騰でマンション価格が上昇し、地元の実需層からは手が届きにくくなったことから、地価の上昇度合いが鈍くなっています。価格高騰で利回りが低下していることも、投資ニーズの頭打ちにつながっているようです。住宅需要が春日市や大野城市など割安なエリアにシフトする動きも見られますが、それらの周辺エリアでも住宅価格が高くなり、地価上昇が鈍化しています」(髙橋さん)
イラン情勢や政府による規制強化の影響に注意が必要
東京都心や大阪市中心部では活発な再開発や円安に伴うインバウンド需要の高まりなどから地価の上昇傾向が強まっており、周辺エリアでも高い住宅需要が地価を押し上げる動きが見られます。一方で名古屋市や福岡市のように開発の停滞や住宅価格の高騰により、地価上昇が鈍化に転じている地域があるのも事実です。今後の地価はどうなるのか、髙橋さんは次のように予測しています。
「円安や株高の影響もあり、東京圏や大阪圏の中心部での地価上昇の動きは今後も続くと予測されます。ただ、2026年2月末に発生した米国とイスラエルによるイラン攻撃で中東情勢が緊迫化しており、インバウンド需要で伸びてきた地域の地価には重しになるでしょう。原油の供給不足からくる建築資材の高騰が長期化する可能性も高く、再開発計画の見直しや住宅供給の縮小から地価や住宅価格が調整局面に転じるリスクも懸念されます。また、高市政権が不動産市場の投資抑制策として短期間の転売規制や税制面での規制強化などを検討しており、実施されれば投資需要を冷ます要因となりそうです」
全国的に上昇傾向が続いていた地価動向ですが、上昇の勢いを強めるエリアと鈍化するエリアに2極化する兆しも現れており、今後の経済情勢や規制の動きに注意を払う必要がありそうです。
(取材協力:東京カンテイ)








