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高級住宅地の代名詞・芦屋

現在の芦屋市は、精道村であった明治後期頃から、全国に名だたる住宅地となってきた。中でも、「六麓(ろくろく)荘」は開発が昭和初期からと遅かったものの、現在では日本有数の高級住宅地として知られるようになった。芦屋には、文豪・谷崎潤一郎も居を構え、地元を舞台にした名作『細雪(ささめゆき)』が残されている。


白砂青松が続く「芦屋浜」 埋め立て前は海水浴を楽しむ人も MAP __

白砂青松の海岸が続く芦屋には、平安時代の歌人である在原業平が別荘を構えたといわれ、明治後期以降は打出などとともに海水浴が楽しめる海岸として有名になった。当時の海岸線は、現在よりも北側に位置していた。【画像は昭和前期】

「芦屋浜」は1969(昭和44)年から埋め立てが始まり、昭和50年代には、「芦屋浜シーサイドタウン」をはじめとする新しい住宅地が誕生した。

「六甲山地」に源を発する「芦屋川」 川沿いには住民憩いの公園 MAP __

「六甲山地」を源流とし「大阪湾」にそそぐ「芦屋川」。現在の「芦屋公園」一帯は1917(大正6)年に「芦屋川遊園地」として開かれ、当時は上流の「開森橋」付近まで松林が続いていたという。河口付近の一角には、平安時代末期に、京都で退治され芦屋の浜に流れ着いた怪物の死骸を芦屋の村人たちが弔ったという伝説がある「鵺(ぬえ)塚」が残っている。【画像は昭和前期】

川沿いに散策路が設けられた緑豊かな「芦屋公園」には、樹齢150年余の市木クロマツなど約480本が茂る。

歌人・在原業平ゆかりの橋 阪神国道線の停留所が存在 MAP __

『伊勢物語』の主人公とされる平安時代の歌人・在原業平は芦屋に別荘を構えていたといわれ、現在、「芦屋川」に架かる「国道2号」の橋は、「業平橋」と名付けられている。ここには1974(昭和49)年に廃止される阪神国道線の、「芦屋川停留所」があった。【画像は昭和前期】

現在も「国道2号」に残る「業平橋」。道路を走る電車の姿は消えたが、橋の欄干などの様子は変わっていない。

「六甲山麓」の高級別荘地「六麓荘」 MAP __

「六麓荘」は、1928(昭和3)年から、国有地の払い下げを受けた「株式会社 六麓荘」により、大阪を中心とする財界人のための別荘地として開発された。名称の由来は「六甲山の麓の別荘地」という意味。この写真は、切り出された石で造られた「劔谷(けんたに)橋」の付近である。【画像は昭和前期】

現在の「劔谷橋」の様子。「六麓荘」には、開発当時、山から流れる沢に10本の橋が架けられた。「阪神・淡路大震災」などで傷んだ橋も含めて2003(平成15)年に修復された。

「六麓荘」の高級ホテル 戦後は「芦屋大学」に MAP __

「六麓荘」の高台に建つ「芦屋国際ホテル」は、1939(昭和14)年に建てられた高級ホテル。戦後にGHQに接収された後、1959(昭和34)年からは「芦屋女子短期大学」(現「芦屋大学」)の1号館として使用されていたが「阪神・淡路大震災」後に建て直されたため、現存していない。【画像は昭和前期】


高級住宅地として発展した芦屋 MAP __

精道村役場

「精道村役場」【画像は大正期】

芦屋は、日本を代表する高級住宅地として戦前から有名な場所で、1943(昭和18)年から雑誌連載が始まった谷崎潤一郎の名作『細雪』の舞台としても登場する。

市制が敷かれる1940(昭和15)年までは精道村であったこの地域は、交通の発達とともに発展していく。1905(明治38)年に浜側を走る阪神本線が開通して「打出駅」、「芦屋駅」の2駅が置かれ、1913(大正2)年に国鉄(現・JR神戸線)「芦屋駅」が開業し、交通の利便性が向上したこともあり、この地は農村から住宅地に変貌を遂げることになる。1920(大正9)年には阪急電鉄も開通し、山手側の宅地開発も加速された。

また、芦屋を代表する住宅地として駅から離れた山側に位置する「六麓荘」も挙げられる。ここは国有林であった場所を1928(昭和3)年から、「株式会社 六麓荘」により、スケールの大きな街づくりが計画的に行われた。地形を利用した幅の広い曲線状の舗装道路が設けられ、住宅地の一区画は300~400坪以上の広さとされた。上下水道や都市ガスも整備され、風致を守るため、電線も地下に埋められた。当初は、スケート場、テニスコートなどのレジャー施設も設けられ、独自のバスも運行されていた。

芦屋では、この「六麓荘」に隣接する岩園町や朝日ケ丘町なども高級住宅地となり、大きな住宅が建ち並ぶようになった。さらに1975(昭和50)年には、「芦屋浜地区」の埋立工事が完成するなど、新たな住宅地も誕生している。



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