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「向ヶ丘遊園」の歴史と現在

1927(昭和2)年、小田急線開通と同時に開園した「向ヶ丘遊園」。「多摩丘陵」の緑豊かな自然を生かした「花と緑の遊園地」として親しまれたが、2002(平成14)年に惜しまれつつ閉園した。遊園地の名前は現在も駅名などに残るほか、「ばら苑」は川崎市の施設として年に2回公開されている。


「向ヶ丘遊園」の開園から閉園まで MAP __

「向ヶ丘遊園」は、1927(昭和2)年4月、小田急線開通、「稲田登戸駅」(1955(昭和30)年より「向ヶ丘遊園駅」)の開業と同時に開園した遊園地。「多摩川」を見下ろす丘陵地に運動場、野球場、音楽堂などが整備された。当時は入園料は無料であった。図は昭和戦前期に発行された『丘陵ハイキングコース 向ヶ丘遊園地 案内図』。「向ヶ丘遊園」へ向かう「豆汽車」のほか、野球場方面へ直接向かう門も中央付近に見える。「丘陵ハイキングコース」には「枡形山城跡」「弘法松」も描かれている。【図は昭和戦前期】

写真は昭和戦前期に撮影された「向ヶ丘遊園」の「稲田登戸駅」寄りの門。門を入ると、道沿いには桜が植えられていた。写真右上、丘陵を登った先にも門があったことが、この写真や前掲の地図からわかる。【画像は昭和戦前期】

「稲田登戸駅」寄りの門があった場所は、現在の「稲生橋交差点」付近となる。かつて桜が植えられていた道は、現在も住宅地の道路(写真中央付近)として残る。 MAP __(稲生橋交差点)

写真は1930(昭和5)年頃の様子。【画像は1930(昭和5)年頃】

戦時中に荒廃したが、戦後、1947(昭和22)年に再び開園となり、1952(昭和27)年からは入園が有料化された。写真は1975(昭和50)年の正面入口。「花の大階段」の右に見える「フラワーリフト」は1968(昭和43)年に設置されている。このリフトは1987(昭和62)年に廃止となり、エスカレーターの「フラワーエスカー」がその役割を引き継いだ。【画像は1975(昭和50)年】

閉園前日(2002(平成14)年3月30日)、別れを惜しむ人々で賑わう「向ヶ丘遊園」の様子。【画像は2002(平成14)年】

現在の様子。中に立ち入ることはできないが、外からも、かつての「花の大階段」を見ることができる。跡地では「小田急電鉄」により「商業施設エリア」「温浴施設エリア」「自然体験エリア」の3つのゾーンからなる施設の整備が進められており、2023年頃に完成する予定。

現在も残る「ばら苑」 MAP __

「向ヶ丘遊園」の「ばら苑」は、かつて野球場があった場所に1958(昭和33)年にオープン、当時は「東洋一のばら苑」と称した。【画像は1992(平成4)年頃】

「生田緑地ばら苑」は、2002(平成14)年の「向ヶ丘遊園」の閉園に伴い、「ばら苑」の存続を求める市民の声に応え、川崎市が管理を引き継いだ施設。毎年、バラの開花時期に合わせて、春と秋に一般公開している。

「豆電車」と「空中ケーブルカー」

「向ヶ丘遊園」開園の年の6月より、最寄り駅の「稲田登戸駅」から「豆汽車」が運行された。正式な鉄道ではなく遊園地の遊戯物という扱いであった。戦時中に一度撤去されるが、1950(昭和25)年に「豆電車」として復活した。写真は1963(昭和38)年頃の様子。この後、「府中街道」のバイパスができることになり、平面交差を避けるため1965(昭和40)年に廃止となった。その後、車両は「フラワートレイン」として遊園地内で活躍した。【画像は1963(昭和38)年頃】

1951(昭和26)年には、正門付近から山頂までの長さ245m、標高差50m、所要時間3分の「空中ケーブルカー」が架設された。1967(昭和42)年に廃止され、その役割は「フラワーリフト」に引き継がれた。【画像は1952(昭和27)年頃】

「向ヶ丘遊園モノレール」と沿線風景

1966(昭和41)年に「向ヶ丘遊園駅」と「向ヶ丘遊園正門駅」を結ぶ「小田急電鉄」の「向ヶ丘遊園モノレール」が開業した。「豆電車」の役割を引き継ぐもので、「豆電車」の敷地の上に、遊戯物ではなく正式な鉄道として作られた。遊園地へのアクセス手段として活躍したが、2000(平成12)年に運行を休止、翌年廃止となった。写真は1966(昭和41)年、「二ヶ領用水」の「新開橋」から南東方向を撮影。 MAP __【画像は1966(昭和41)年】

正面に見える建物が「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」。かつてはミュージアムのあたりに「向ヶ丘遊園正門駅」があった。

写真は1974(昭和49)年、「向ヶ丘ショッパーズプラザ」(のちの「ダイエー 向ヶ丘店」)の前からの撮影。高架の奥にモノレールの「向ヶ丘遊園駅」が見える。「向ヶ丘ショッパーズプラザ」は、百貨店「岡田屋」系列の「サンコー」が1970(昭和45)年に「サンコー向ヶ丘ショッピングワールド」として開業。同年「サンコー」が「ダイエー」傘下となり、翌年に改称された。 MAP __【画像は1974(昭和49)年】

「ダイエー 向ヶ丘店」は建物の老朽化などを理由に2020(令和2)年に閉店。跡地では「(仮称)向ヶ丘遊園集合住宅・商業施設計画」が進められている。写真は「ダイエー 向ヶ丘店」跡地付近から駅方面を撮影。モノレールの駅舎跡地は駐輪場となっている。


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