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金属加工技術を受け継ぎ発達した産業

古墳時代から続く伝統的な金属加工技術があった堺では、16世紀にポルトガルから鉄砲やタバコが伝わると、鉄砲や「タバコ包丁」の製造が盛んになった。現在、その金属加工技術は「堺打刃物」や自転車産業などに受け継がれている。明治以降は、「堺紡績所」の建設をはじめ、工業の近代化が進んだ。


日本有数の鉄砲生産地として発展 MAP __

1543(天文12)年、ポルトガルから「種子島」に鉄砲が伝来して間もなく、鉄砲製造技術は堺に伝わった。堺の職人は、高い技術を持っていたほか、分業制によって大量生産を実現。鉄砲の一大生産地として発展、戦国大名の多くが堺の鉄砲を求め、『天下人』(織田信長・豊臣秀吉・徳川家康)からも重要な地と認識された。図は明治前期のもので、鉄砲弾薬を製造している様子が描かれている。【図は明治前期】

北旅篭町にある鉄砲鍛冶、井上関右衛門氏の居宅兼作業場兼店舗は、現存する「鉄砲鍛冶屋敷」の建物であり、江戸時代からの面影を伝えている。

タバコの葉を刻む「タバコ包丁」 現在も続く刃物産業 MAP __

16世紀後半、ポルトガルから伝わったタバコが国内で作られるようになり、タバコの葉を刻む「タバコ包丁」の需要が高まった。堺の「タバコ包丁」は輸入品よりも切れ味が鋭く重宝され、江戸幕府に「堺極」という極印を入れて販売することが認められ、全国的にその名を轟かせた。現在の堺の刃物産業のルーツは、この「タバコ包丁」にある。【図は明治前期】

「堺打刃物」の伝統を今も守り続ける、1872(明治5)年創業の「水野鍛錬所」。日本刀や包丁を製作している。

「福助株式会社」のルーツ、足袋装束店「丸福」が誕生 MAP __(工場跡)

足袋、靴下のメーカーとして有名な「福助株式会社」は、1882(明治15)年、辻本福松氏が大町東三丁で創業した足袋装束店「丸福」がルーツ。当初は手縫いで足袋を生産していたが、1895(明治28)年に爪先縫いの足袋用ミシンが完成し、大量生産を可能にした。【画像は大正期】

1900(明治33)年、商標を現在につながる「福助」とした。現在は靴下や下着などにも取り扱い範囲を広げている。【画像は大正期】

堺に生まれた鳥井駒吉氏 「大阪麦酒会社」を設立 MAP __(鳥井合名会社跡)

堺は江戸時代には『摂泉十二郷』の一つに数えられる清酒の名産地であった。堺で生まれた鳥井駒吉氏は、現在の「アサヒビール株式会社」の礎を築いた。1879(明治12)年、「堺酒造組合」の初代組長となり堺の酒造業発展に尽力、1889(明治22)年には、「大阪麦酒会社」初代社長に就任し、ビールの国産化を推進した。【図はどちらも明治前期】


現在にも受け継がれる堺の金属加工技術 MAP __(株式会社シマノ)

「梅鉢鉄工所」

「梅鉢鉄工所」 【図は1921(大正10)年】 MAP __(梅鉢鉄工所跡)

2022(令和4)年にオープンした「シマノ自転車博物館」

2022(令和4)年にオープンした「シマノ自転車博物館」。 MAP __

江戸時代、「鉄砲鍛冶」や「タバコ包丁」といった、金属加工産業が発達した堺では、明治以降もその伝統と技術を生かした工業が盛んになった。

1921(大正10)年に堺で創業した「島野鉄工所」(現「株式会社シマノ」)は、自転車部品のシングルフリーホイールの生産を開始し、現在では、世界に認められる自転車パーツメーカーに成長した。1992(平成4)年には日本で唯一の自転車博物館「自転車博物館サイクルセンター」をオープン、2022(令和4)年には新築移転し「シマノ自転車博物館」としてリニューアルされた。また、もう一つの柱である釣り具の製造においても、国際的に有名。

16世紀に発展した「タバコ包丁」作りから続く「堺打刃物」は、1982(昭和57)年に国の「伝統的工芸品」に指定されている。また、2007(平成19)年には「堺刃物」と「堺打刃物」が地域団体商標(地域ブランド)に登録された。現在、堺の伝統産業として「水野鍛錬所」などが技術を受け継いでいる。

鉄道車両メーカー「梅鉢鉄工所」は、堺の鍛冶業の家に生まれた梅鉢安太郎氏が明治中期に創設した。堺市内に工場を設けて鉄道・路面電車の車両製造を手掛け、南海鉄道や京都電気鉄道(後に京都市が買収)などに車両を提供した。現在、愛知県にある「博物館明治村」に保存されている、京都市電1号・2号はこの「梅鉢鉄工所」製であった。この会社は、「梅鉢車輌」と会社名を変更した後に「京成電気軌道」(現「京成電鉄」)の傘下となり「帝国車輌工業」となった。1968(昭和43)年に「東急車両製造」と合併し、現在はJR東日本の子会社、「総合車両製作所」などに引き継がれている。


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