「岡山平野」の南部は、かつての「吉備の穴海」を埋め立てた干拓地である。これにより「吉備児島」と呼ばれた島は陸続きの「児島半島」に変わり、干拓地には新田が開かれた。藤田伝三郎が干拓した藤田村は、現在の地名にも残っている。一方、倉敷の臨海部分は工業地としても発展を遂げる。
かつて、「児島半島」は「吉備児島」といわれる島であり「藤戸の泊」「藤戸の渡」と呼ばれる港も存在していた。平安時代末期には「源平合戦」の舞台となり、浅瀬の海を馬で渡った佐々木盛綱の逸話も残されている。岡山城主となった宇喜多秀家が干拓に着手し、池田家により事業は本格化した。江戸時代後期の文政年間に開発された新田は、中国の書物『管子』の中にある「興利除害」という言葉から、「興除（こうじょ）新田」と名付けられた。この地区は、明治時代に興除村となり、現在は岡山市南区の一部となっている。画像は1831（天保2）年に小森可儀によって写されたもの。【画像は江戸後期】
「児島湾」の干拓は、明治維新後も官民の手で進められた。政府は、オランダの土木技術者ムルデルに干拓計画の策定を依頼したが、巨額の資金を必要としたため、実業家、藤田伝三郎の手に委ねられた。藤田による干拓は1899（明治32）年に着工され「太平洋戦争」を挟んで、戦後は「農林省」（現「農林水産省」）に引き継がれた。地図は明治後期のもので「児島湾」周辺で段階的に干拓が進んでいることがわかる。【地図は明治後期】
写真は「常山城」跡より「児島湾」を望んだもの。 MAP __【写真は昭和初期】
現在の岡山市南区は、半分以上が「児島湾」の干拓地であり、稲作が盛んな地域となっている。その中心的存在である明治期に生まれた「藤田農場」はその後、藤田村となり、1975（昭和50）年に岡山市に編入された。写真は「岡山県立興陽高等学校」の上空から見た藤田村の干拓地。整備された水田の様子が見て取れる。【画像は1957（昭和32）年】
現在の様子。藤田伝三郎が干拓した南区藤田一帯には、今も美しい水田の風景が広がっている。
1943（昭和18）年、倉敷市水島地区に「三菱重工水島航空機製作所」の専用鉄道として、水島臨海鉄道がつくられた。1953（昭和28）年、岡山県は船舶泊地の浚渫（しゅんせつ）と工業用地の造成を開始、「水島臨海工業地帯」の歴史がスタートする。【画像は1960（昭和35）年頃】
水島臨海鉄道は沿線住民や工場従業員の移動の手段となっており、貨物輸送も盛んである。
1961（昭和36）年、「水島臨海工業地帯」で消費される電力をまかなうために、「中国電力水島発電所」が運転を開始した。1962（昭和37）年には「水島港」が開港、1964（昭和39）年には、岡山県南地区が国の「新産業都市」に指定された。【画像は1961（昭和36）年】
「東京ドーム」の約6倍の面積を有する発電所であるが、その4分の1は緑地。環境保全対策にも取り組んでいる。
