当事者の一方だけが債務を負う契約。一般的には、贈与(民法第549条)、消費貸借(587条)、使用貸借(同593条)、無償の委任(643条)、無償の寄託(657条)などの契約形態で見られる。
例えば書面によらない贈与では、物の引き渡し前であればいつでも撤回できる(550条)など、売買等の典型的な双務契約とは差異が見られる。双務契約に存在する同時履行の抗弁権、危険負担などの問題は生じない。書面によらない形態が多いが、書面による贈与の場合は原則として解除ができなくなる。また、負担付贈与は売買の規定を準用する(553条)など、契約の内容により違いがある。
金銭を借り主に引き渡した段階で契約を成立したとみなす金銭消費貸借は、借り主が金銭の返還債務を負うだけであり、貸し主は債務を負わないことから、片務契約の一種と考えられている。
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債務
私法上の概念で、ある人(債権者)に対して一定の給付をなすべき義務をいう。
債務を負っているのが債務者である。
使用貸借
動産や不動産を有償で貸し付ける契約が「賃貸借契約」であるが、無償で貸し付ける契約は「使用貸借契約」と呼ばれる
身の回りの洋服や道具、家具や自動車などについて、家族や親戚、友人間において無償で物を貸し借りすることは日常生活でよく見られるところであり、契約書が存在せず、口約束で行なわれる場合も多い。不動産においても、親戚に短期間無償で家を貸したり、経営者が、個人名義の土地の上に会社名義の建物を建築するケースや、親名義の土地の上に子名義の建物を建築するケースなどがあるが、無償であるところから借地借家法が適用されず、民法が適用される。
2020年4月施行の改正民法施行以前は、上述の事情から、書面によらない要物契約を想定し、貸主はいつでも借主に対して契約を解除し、物の返還を要求することができることが原則とされていた(ただし、存続期間を定めているときはその期間が満了するまで、使用および収益の目的を定めたときは借主がその目的に従い使用および収益を終えるまでは物の返還を要求できない。/旧民法第597条・598条)。しかし、時代の変化により、経済的取引の一環として行われるケースが増加し、その法的安定を図る必要性が高まったことから、改正民法においては諾成契約が原則となり、解釈によっていた部分の明文化が図られた。
具体的には、まず貸主が「物を引き渡すことを約し」、借主が「返還をすることを約する」ことによって契約が成立する(新民法第593条)として諾成契約であることを明文化し、引き渡し前の貸主の解除権(書面による場合を除く。/同第593条の2)、使用収益の終了等による契約の終了(同第597条)、相当期間経過の場合の貸主の解除権等(598条)、返還時の収去義務および原状回復義務(599条)、損害賠償請求権についての時効完成の猶予(600条)等について、諾成契約を原則とし、これまで解釈で対応していた点について条文の整理、明確化が図られた。
双務契約
契約当事者の双方がお互いに対価性のある債務を負担する契約をいう。売買、賃貸借などの契約はこれに該当する。これに対して、贈与のような当事者の一方のみが債務を負担する契約を「片務契約」という。 双務契約においては、双方の債務履行が密接な関係にあるから、相手の給付があるまでは自分の債務を履行しないとの主張(同時履行の抗弁権)が認められているほか、一方の債務の消滅等において他方の債務をどうするか(危険負担)などが問題となる。
関連用語
金銭消費貸借契約
借主が、貸主から金銭を借り入れてその金銭を消費し、その借入額と同額の金銭(利息付の場合は利息分も含めて)を貸主に返済するという契約のことである。
住宅を購入するために、住宅ローンを金融機関から借り入れる場合には、購入者は購入する住宅に抵当権を設定し、抵当として金融機関に差し入れるのが一般的である。
この場合には、金銭消費貸借契約と抵当権設定契約をまとめて一つの契約書に盛り込むことが多く、こうした契約は「金銭消費貸借抵当権設定契約」のように呼ばれる。
金銭消費貸借抵当権設定契約には次の契約条項が記載されるのが通例である。
1.借入金額・利率・返済期日・遅延損害金
2.返済の延滞や債務者の信用状況の悪化が生じた場合の措置
3.不動産に対する抵当権設定
4.不動産の滅失等の場合における追加担保の差し入れ
5.不動産の売却・賃貸借等の制限
6.火災保険への加入
7.保証人または保証会社による保証