2000(平成12)年の建築基準法改正において、それまでの仕様を審査対象とする許容応力度計算の体系と別に、地震や台風に耐えうる性能を審査する体系として「限界耐力」の概念とともに採用された(同法施行令第81条第2項第1号ロ及び82条の5)。
地震時の建築物の変形を算出し、その変形に基づいて建築物の固有周期、減衰性、高さ方向の加速度の分布等を算出し、建築物をモデル化した上で、建築物の存在期間中(50年程度)に一度は遭遇する可能性の高い積雪、暴風、地震による外力を受けて損傷しないか(「損傷限界耐力」を有しているか)と、極めてまれに発生する大規模な地震による外力によって倒壊または崩壊しないか(「安全限界耐力」を有しているか)を検証する。
許容応力度計算や仕様に対する規制に比べ、複雑な計算を要する一方で、安全率を低くすることが可能であるため、経済性、自由度に優れているとされる。一方で、超高層建築物に用いられる時刻歴応答解析に比べると、単純化したモデルを使用しているという面がある。
限界耐力計算をする場合でも、耐久性等関係規定による規制(例えば、構造体力上主要な部分における腐食・腐朽措置等)は守られなければならないほか、都道府県知事または指定構造計算適合性判定機関による構造計算適合性判定を受けることが義務付けられている。
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建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
地震
地殻が急激にずれ動く現象。これに伴って起きる大地の揺れ(地震動)をいう場合もある。地震が発生したとき最初に地殻が動いた場所が「震源」、震源の地表面位置が「震央」、伝播する地震動が「地震波」である。
地震の大きさを示す指標には、地震の規模によるものと、地震動の大きさによるものの2種類がある。一般に、地震の規模は地震によって放出されるエネルギー量を示す「マグニチュード(M)」で、地震動の大きさは揺れの程度を客観的に段階化した「震度」で示される。震度は、マグニチュードだけでなく、震源からの距離、地震波の特性、地盤の構造や性質などによって決まる。
地震が発生しやすいのは地殻に力が加わって歪みが蓄積している場所で、地震はその歪みが解消する際に起きると考えられている。しかし、発生の場所と時点を特定するのは非常に難しい。
なお、構造物の耐震設計は、地震動によって構造物に加わる力を許容できる程度に抑えるための設計であるから、想定する地震動の大きさや性質(揺れの方向、振動数、継続時間など)が重要となる。
限界耐力
地震や台風などの外力に対して建築物が損傷または崩壊しない限界値。固有周期等をもとにモデル化された建築物が、想定外力を受けて損傷または崩壊しないことを検証する。2000(平成12)年の建築基準法改正を機に、構造計算の方法として限界耐力計算が採用され、損傷限界耐力、安全限界耐力が設定された。
建築物
建築基準法では「建築物」という言葉を次のように定義している(建築基準法第2条第1号)。 これによれば建築物とは、およそ次のようなものである。 1.屋根と柱または壁を有するもの 2.上記に付属する門や塀 3.以上のものに設けられる建築設備 上記1.は、「屋根+柱」「屋根+壁」「屋根+壁+柱」のどれでも建築物になるという意味である。 なお、地下街に設ける店舗、高架下に設ける店舗も「建築物」に含まれる。