所有者不明土地の利用の円滑化や、土地の所有者の効果的な探索を図るために必要な措置を定めた法律。2018年に制定された。
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法が定める主な措置は、次の通りである。
(1)所有者不明土地の利用円滑化のための措置
ア)一定の要件を満たす所有者不明土地(特定所有者不明土地)について、公共事業における収用手続きにおいて収用委員会による審理手続きを省略することができる。
イ)特定所有者不明土地に対して、地域福利増進事業に利用する権利を設定することができる。
(2)所有者の探索を合理化するための措置
ア)行政機関は、土地の所有者の探索のために必要な公的情報を利用することができる。
イ)登記官は、所有権の登記名義人の死亡後に相続登記等がされていない土地であって、公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るためその所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるもの(特定登記未了土地)で一定の要件を満たす土地について、特定登記未了土地である旨等を職権で登記できる。
(3)所有者不明土地を適切に管理するための措置
地方公共団体の長等は、所有者不明土地について、家庭裁判所に相続財産の管理人の選任を請求できる。
本文のリンク用語の解説
所有者不明土地
探索しても所有者を確知できない土地。所有者が不明な場合のほか、所有者の所在が分からない場合も含まれる。 土地所有者の探索は、公的書類等による調査や聞き取り調査によるが、所有者が判明しなかったり、判明しても所在が不明の場合が少なくなく、また、長期にわたって相続登記がなく、数次の相続を経ているため所有者が多数にのぼるなど探索が困難な場合もある。このため、土地の公共的な利用に支障が生じることがある。 そこで、2018(平成30)年に、一定の事業のために特定の所有者不明土地を円滑に利用すること、所有者不明土地の財産管理人の選任申立権を地方公共団体の長等に付与すること、名義人死亡後長期間相続登記等がされていない土地である旨を登記に付記することなどの制度が創設された(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)。
また所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)が行なわれ、2023(令和5)年からは要件に該当する相続した土地については国庫に帰属させることができるようになり、2024(令和6)年からは相続登記が義務化になるなどの取り組みが進められている。
収用委員会
土地収用の裁決等を行なう組織をいう。
都道府県知事の所轄のもとに置かれるが、独立してその職権を担う。都道府県の議会の同意を得て都道府県知事が任命する委員7人をもって組織し、委員の任期は3年である。
登記名義人
一筆の土地または一個の建物に関する登記記録において、不動産に関して所有権・賃借権・抵当権などの権利を有する者として記載されている者のことを「登記名義人」という。
例えば、A氏からB氏への所有権移転登記が記載されている場合、B氏が登記名義人と呼ばれる。
相続登記
相続の発生に伴って、土地建物の権利者(または権利の割合)が変わった場合に、その権利の変更を登記することを「相続登記」という。 相続登記をするには、法定相続分のままで登記する場合と、遺産分割協議で決定した内容に基づいて登記する場合がある。また、有効な遺言書が存在すれば、遺言書に従って相続登記することになる。 法定相続分のままで相続登記をし、その後に遺産分割協議が成立した場合は、その協議の決定内容に基づいて再度、相続登記を申請することになる。 なお、不動産登記法の改正によって、相続登記が義務化された(2024年4月1日施行)。この場合、正式の申請に代わって、相続した旨のみを申し出ることで申請義務を履行したものとみなす仕組み(相続人申告登記)も創設されている(「相続登記の義務化」参照)。