全文を自筆で書き記した証書による遺言。本文のほか、日付と氏名も自書し押印しなければならない。
2019年1月13日以降は、遺言作成に当たって添付する財産目録については、自書でなく、パソコン等で作成した目録、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等であってもかまわない。また、自筆証書遺言に係る遺言書は、法務局に保管を申請することができる。
なお、証書による遺言の方法には、自筆証書遺言のほか、公正証書遺言(公証役場で証書を作成する方法)及び秘密証書遺言(内容を秘密にした証書について公証役場で証明だけ行なう方法)がある。
本文のリンク用語の解説
不動産
不動産とは「土地及びその定着物」のことである(民法第86条第1項)。
定着物とは、土地の上に定着した物であり、具体的には、建物、樹木、移動困難な庭石などである。また土砂は土地そのものである。
登記事項証明書
一筆の土地、一個の建物ごとに記録されている登記記録の全部または一部を、登記官が公的に証明した書面のこと。
従来は登記記録(登記用紙)が紙で調製されていたため、その写しを交付しており、これを登記簿謄本と呼んでいた。しかし、現在は登記事務が電子化されたため、登記記録は磁気ディスク上に調製されている。この電磁的な登記記録の記載事項を公的に証明したものが、登記事項証明書である。
なお、遠隔地の不動産に関する登記事項証明書であっても、登記情報交換システムを通じて最寄りの登記所でその交付を受けることができる。
法務局
法務省の地方支分部局の一つで、登記、公証、人権などに関する事務を担当する。
法務局は全国に8ヵ所設置されている。また、その他の県庁所在地等には地方法務局(全国で42ヵ所)が置かれている。さらに、法務局、地方法務局は、所管する地域内にその支局および出張所を置いていて、全体では全国で約500ヵ所の事務所が存在する。
事務所の種類等によってその扱う事務の範囲が異なるが、不動産登記および供託に関する事務は、すべての事務所で取り扱われるため、事務所を一般的に「登記所」と呼ぶ(商業登記は、原則的に法務局または地方法務局のみで扱う)。
なお、法務局以外の事務所を含めて、登記を扱う事務所を単に「法務局」と呼ぶ習慣もあるので注意が必要である。
公正証書
個人や法人からの嘱託により、公証人が公証役場で作成する契約書・合意書などのことをいう。
公正証書の内容としては、不動産売買契約、不動産賃貸借契約、金銭消費貸借契約、遺言などが一般的であるが、公序良俗に反しない限り、どのような契約や合意であっても公正証書にすることが可能である。
公正証書を作成するには、当事者全員(または委任状を持参した代理人)が公証役場に出頭し、公証人に案文を提出し、公証人が公正証書を作成し、当事者全員に読み聞かせ、当事者全員が署名捺印するという手続きを踏む。
このため、文書の内容に関して後日裁判になった場合でも、文書の内容が真実であることが非常に強く推定されるので、公正証書に記載された内容がそのまま裁判で証拠になるというメリットがある(これを「証拠力」という)。
また、金銭消費貸借契約に関しては、債務者が一定の事情が発生したときには直ちに強制執行に服するという旨の陳述(これを「執行認諾約款」という)が記載されている場合には、この公正証書は裁判所の確定判決と同等の効力を持つこととされている。
このため、「約束の支払い期日までに債務者が債務を返済しない場合には債務者および連帯保証人は直ちに強制執行を受けても何ら異議はない」という旨の執行認諾約款のある公正証書が存在すれば、裁判を経ないで、直ちに債務者と連帯保証人の財産に対して強制執行を開始することができるというメリットがある。
このような強い効力を持つ公正証書であるが、その作成手数料は低額であり、利用しやすい制度となっている。
公証役場
公証人が執務する事務所のこと。全国に約300ヵ所の公証役場が設けられている。
公証役場では、公証人が公正証書の作成、会社設立時の定款の認証、確定日付の付与などの公証事務を行なっている。