原子力発電所の事故によって拡散・付着した放射性物質を取り除いて、放射線量を低減することをいう。放射性物質汚染対処特措法に基づき実施されている。
除染は、放射線量の状況、土地・建物・樹木等の現状、除染後の放射線量等の除染目標などに応じて、計画的に実施しなければならない。しかも、放射線量は土壌や水の流動等によって変動する。また、除染作業によって発生する放射性廃棄物を処理する必要がある。除染後のモニタリングによって除染の対象とした環境の状態を把握することも重要である。
原子力発電所の事故によって被災した区域は、避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域に3区分されるが、除染の成果はその区分を大きく左右することとなる。
本文のリンク用語の解説
建物
民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。
具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。
避難指示解除準備区域
原子力発電所の事故によって被災して避難指示のもとにある区域のうち、年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であると確認された地域をいう。原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)の指示によって指定される。
この区域では、復旧・復興のための支援策を迅速に実施して、住民が帰還できるための環境整備を目指すとされている。ただし、避難指示は継続していて、原則として宿泊ができないなどの制限が課せられている。
なお、この区域の不動産について価格調査等を行うに当たっては、原発事故等格差修正を適用するなどの注意が必要とされている。
居住制限区域
原子力発電所の事故によって被災して避難指示のもとにある区域のうち、年間積算線量が20ミリシーベルトを超える恐れがあり、被ばく線量を低減する観点から避難を継続することが求められる地域をいう。原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)の指示によって指定される。
この区域では、除染を計画的に実施するとともに、早期の復旧に不可欠な基盤施設の復旧を目指すとされている。また、避難指示によって、区域内への不要不急の立入りを控えるとともに、立ち入る場合には被ばくする放射線量をできるだけ低減するよう行動すべきとされている。
なお、この区域の不動産について価格調査等を行うに当たっては、原発事故等格差修正を適用するなどの注意が必要とされている。
帰還困難区域
原子力発電所の事故によって被災して避難指示のもとにある区域のうち、被災後5年間を経過した時点(2016年3月)においても、なお年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らない恐れのある地域をいう。原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)の指示によって指定される。
この区域では避難の徹底が必要とされ、区域の境界において物理的な防護措置が実施される。ただし、例外的に一時立入りが可能とされ、その場合には、スクリーニングの確実な実施や、個人線量管理、防護装備の着用が求められる。
なお、この区域の不動産について価格調査等を行なうに当たっては、原発事故等格差修正を適用するなどの注意が必要とされている。