損害の発生について損害賠償責任を負うのは、故意・過失がある場合だけであるという私法上の原則。個人の行動の自由を保障するための原則であるとされ、民法はこの考え方を採用している。
しかしながら、事情に応じて損害発生の責任をより厳しく求めなければならない場合もあるとされ、民法の特例として、故意・過失がない場合にも損害賠償責任を負わなければならない(無過失責任)とされていることがある。たとえば、製造物責任については過失責任主義が適用されていない。
なお無過失責任の根拠としては、危険を作り出す者はそれによる損害賠償の責任を負うべき(危険責任)、利益を得る過程で損害を与えた者はその利益を損害賠償に充てるべき(報償責任)、という二つの考え方がある。
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損害賠償
違法行為によって損害が生じた場合に、その損害を填補することをいう。
債務不履行や不法行為などの違法な事実があり、その事実と損害の発生とに因果関係があれば損害賠償義務を負うことになる。その損害は、財産的か精神的かを問わず、積極的(実際に発生した損害)か消極的(逸失利益など)かも問わず填補の対象となる。
ただし、その範囲は、通常生ずべき損害とされ、当事者に予見可能性がない損害は対象とはならない(相当因果関係、因果の連鎖は無限に続くため、予見可能性の範囲に留めるという趣旨)。
損害賠償は原則として金銭でなされる。また、損害を受けた者に過失があるときは賠償額は減額され(過失相殺)、損害と同時に利益もあれば賠償額から控除される(損益相殺)。
なお、同じように損害の填補であっても、適法な行為(公権力の行使)によって生じた不利益に対する填補は、「損失補償」といわれて区別される。
私法
法のうち市民相互の関係を規律付けるものをいう。
国民と国家との関係を規律付けるのが「公法」であり、法の体系は、私法と公法の大きな2つの類型に分けることができる。
私法は、市民の相互関係を対象とする規律であるから、自由平等の関係を基盤に、私益を調整することを目的とする。一方、公法は、支配服従の関係を定めて公益の実現をめざすことに特徴があるとされる。
私法の一般法は民法である。民法の基本原理は、
1.法の下の平等、2.私的財産権の絶対性、3.契約自由の原則(私的自治)、4.過失責任主義
であるとされるが、これらの原理はいずれも私法の基本的な特徴でもある。私法を構成する代表的な法律は、民法のほか、借地借家法、商法、会社法などである。
私法と公法とを区分することに対しては、私的活動に対する行政の関与が拡大することに伴って両者を区分する必然性が薄れたこと、労働法や産業法のような公益上の理由で市民相互の関係を規律付ける法律分野(社会法といわれ、私法と公法の中間的な性格を持つとされる)が出現したことなどにより、その意味を失ったという意見もあるが、法の本質的な性格を明確にする基本的な視点を提供すること、法概念を分析するための基盤となることなど、区分することの理論的な有効性はいまなお失われていない。
損害賠償
違法行為によって損害が生じた場合に、その損害を填補することをいう。
債務不履行や不法行為などの違法な事実があり、その事実と損害の発生とに因果関係があれば損害賠償義務を負うことになる。その損害は、財産的か精神的かを問わず、積極的(実際に発生した損害)か消極的(逸失利益など)かも問わず填補の対象となる。
ただし、その範囲は、通常生ずべき損害とされ、当事者に予見可能性がない損害は対象とはならない(相当因果関係、因果の連鎖は無限に続くため、予見可能性の範囲に留めるという趣旨)。
損害賠償は原則として金銭でなされる。また、損害を受けた者に過失があるときは賠償額は減額され(過失相殺)、損害と同時に利益もあれば賠償額から控除される(損益相殺)。
なお、同じように損害の填補であっても、適法な行為(公権力の行使)によって生じた不利益に対する填補は、「損失補償」といわれて区別される。
無過失責任
私法上の概念で、損害の発生について故意・過失がなくても損害賠償の責任を負うことをいう。
民法の一般原則では、損害賠償責任を負わなければならないのは故意・過失がある場合に限るとされているが(過失責任主義、この場合その立証責任は被害者が負う)、一定の場合には無過失による損害発生について賠償責任を負わなければならないとされている。例えば、工作物の設置・保存の瑕疵についての所有者責任、鉱害や原子力災害に対する事業者責任、大気汚染・水質汚濁についての事業者責任、製造物責任などは無過失責任である。
無過失責任を求める背景には、社会に対して危険をつくり出している者は、危険を防止する能力を有していることなどから、それによって生じる損害に対して重い責任を負わなければならないという考え方(危険責任)、利益を上げる過程で損害を与えた者は、利益あるところに損失も帰すべきだから、利益から賠償しなければならないという考え方(報償責任)の2つがある。
なお、無過失責任に近い責任として「中間的責任」があるが、これは、損害発生について無過失であることの立証責任を加害者に求めるもので(立証責任の転換)、例えば、工作物占有者の責任、使用者責任、責任無能力者の監督者責任などがこれに該当する。