環境への負荷に対して課する税をいう。
気候変動対策において、化石燃料等に対する課税によって温室効果ガスの排出量を抑制する効果があるとされ、「炭素税」等の導入について議論されているが、これも環境税である。
環境税の経済理論的な背景として、「ピグー税」と「ボーモル・オーツ税」という考え方がある。
1.ピグー税
経済活動に伴う環境負荷などについては、その影響について負担がなされていないため、市場において価格調整メカニズムが適切に機能しないとされる。そこで、課税によって負担を求めることによって市場機能の適正化を図ることができるという考え方がある。このような考え方に基づく政策を外部不経済の内部化といい、そのために課する税がピグー税である。
2.ボーモル・オーツ税
ピグー税を導入することは、外部不経済を具体的に計測することが難しいなど、現実的には極めて困難である。そこで、ピグー税に代わって、汚染物質の排出に対して課税することによって生産コストに介入し、排出量をコントロールするという手法が提案された。そのような役割を果たす税を、ボーモル・オーツ税という。現在導入が議論されている環境税は、このボーモル・オーツ税の性格が強い。
このように、環境税は、単に環境対策のための財源を確保するためのものではない。
なお、環境税を、税収目的で徴収される環境に関わる税金として広く捉える考え方もある。そのような広義の環境税としては、一部の地方公共団体が導入している産業廃棄物税や森林環境税がある。
本文のリンク用語の解説
温室効果ガス
人為的に排出され、地球温暖化の原因となると考えられている化学物質をいう。
京都議定書で排出量の削減対象として指定されているのは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCS)、パーフルオロカーボン類(PFCS)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類である(HFCS、PFCS、SF6を合わせてフッ素ガス類という)。
温室効果ガス排出の削減に当たって削減量を評価するときには、これら6種類のガスを、100年間にわたる温室効果の強さに応じて二酸化炭素に換算する。
その換算値(地球温暖化係数)は、二酸化炭素=1、メタン=25、亜酸化窒素=298、ハイドロフルオロカーボン類=124~1万4,800、パーフルオロカーボン類=7,390~1万2,200、六フッ化硫黄=2万2,800である。
換算評価すると、6種類の温室効果ガスの中で地球温暖化に対する寄与が最も大きいのは二酸化炭素である。
排出量のシェアは、二酸化炭素76.7%(うち56.6%分は化石燃料からの排出)、メタン14.3%、亜酸化窒素7.9%、フッ素ガス類1.1%である(2004年、IPCCによる)。
なお、気候に対する人為的な影響は、温室効果ガスの排出だけでなく、エアロゾル(粉じん)の排出や森林伐採などによっても生じる。
地方公共団体
地域における行政を自主的、総合的に実施する役割を担う団体。その組織、運営、財務などについては、憲法の規定に基づき、地方自治法等によって定められている。
普通地方公共団体である都道府県・市町村と、特別地方公共団体である特別区・地方公共団体の組合・財産区の二種類に分類され、いずれも法人である。また、市町村は、地域の事務を一般的に処理する基礎的な地方公共団体である。
地方公共団体は、地方自治の本旨に基づいて組織し、運営しなければならない。この場合、地方自治の本旨とは、「団体自治」(国から独立した地域団体によって自己の事務を自己の機関・責任で処理し、国家から独立して意志を形成すること)および「住民自治」(住民が行政需要を自らの意思・責任によって充足し、意志形成において住民が政治的に参加すること)であるとされている。