同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用することで、収用されない残地に、通路、みぞ、かき、さく、その他の工作物の新築、改築、増築、修繕、盛り土、切り土をする必要が発生する場合がある。
このとき起業者は、これに要する費用を損失補償しなければならない。これを一般的に「みぞかき補償」と呼んでいる(土地収用法第75条)。
この「みぞかき補償」は、起業者自らが工事を代行することがある。
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工作物
土地に定着する人工物のすべてを指す。従って、建物だけでなく、広告塔なども「工作物」である。
工作物のうち、建築物は当然建築基準法の対象になる。 広告塔などは、本来建築基準法の対象外のはずだが、一定以上の規模のものは、建築確認の申請が必要であり、建築物と同じように扱われる。
具体的には次の工作物である(建築基準法第88条・施行令第138条)。
1.高さが2mを超える擁壁(ようへき) 2.高さが4mを超える広告塔 3.高さが6mを超える煙突 4.高さが8mを超える高架水槽 5.高さが15mを超える鉄柱 など
盛り土
傾斜のある土地を平らな土地にするために、土砂を盛ること。宅地造成のための工法として広く使われている。これに対し、土砂を切り取ることを「切り土」という。 盛り土は、土砂を積み上げただけでは、地盤沈下、地震時の滑動崩落(地滑り的変動)や液状化、大雨による崩落や土砂流出などが起きやすい。転圧や地盤改良工事によって、これらを防ぐ必要がある。特に、大規模盛土造成地については、変動予測調査を実施し、危険箇所の滑動崩落防止工事を進めていくことが重要である。 宅地造成工事規制区域内の土地において、i)高さ1mを超える崖を生じる盛り土、ii)高さ2mを超える崖を生じる切り土、iii)盛り土と切り土をあわせて高さ2mを超える崖を生じる造成工事、iv)面積500平方メートルを超える盛り土・切り土を同時にする場合には、着手する前に、知事(または政令市・中核市・特例市の市長)の許可を受ける必要がある(宅地造成等規制法第12条1項・同施行令5条)。ただし、都市計画法による開発許可を受けて工事する場合は、改めて宅地造成等規制法の許可を得る必要はない。
切り土
傾斜のある土地を平らな土地にするために、地面を掘り取ること。 宅地造成工事規制区域の中にある宅地において、高さが2mを超える崖を生じるような切り土をする場合には、着手する前に、知事(または政令市・中核市・特例市の市長)の許可を受けることが必要である(宅地造成等規制法第12条1項)。
損失補償(土地収用法における~)
収用により、土地や物件を収用された場合、土地や物件に関する従前の権利は消滅する。この経済的損失に対する対価として支払われるものを「損失補償」という。
損失補償は、土地に対する補償(土地収用法第71条)、土地に関する所有権以外の権利に対する補償(同法第71条)、残地補償(同法第74条)、みぞかき補償(同法第75条)、土地上の物件の(同法第77条)、物件の補償(同法第80条)、その他の通常損失(同法第88条)などに大きく分けられる。
損失補償を受けることができるのは、土地所有者と関係人である(土地収用法第68条)。(ただし、収用した土地の隣地等が損失を受ける場合がある。この場合は土地所有者・関係人以外の者が損失補償を受けることができる(土地収用法第93条))。
手続き面では、収用委員会による収用の裁決で、損失補償の内容と、権利取得の時期を決定する(土地収用法第48条、第49条)。この裁決に従い、収用者(起業者)が、権利取得の時期までに金銭払い等を行なうことにより、権利取得の時期において、土地や物件に関する従前の権利が消滅することになる。
損失補償では、「個別払いの原則」が設けられている。損失補償は土地所有者や関係人の各人に個別に別々に支払わなければならないが、例外として各人別に見積もることが困難であるときは、複数人をまとめて支払うことも許される(土地収用法第69条)。
また、損失補償は金銭で支払うことが必要である(金銭払いの原則)。しかし替地による補償、耕地の造成、工事の代行による補償、移転先の代行による補償、宅地の造成といういわゆる現物補償が行なわれる場合もある。これらの現物補償は、収用委員会の裁決によって行なう(土地収用法第70条、第82条から第86条まで)。
なお、土地収用を行なう事業が変更・廃止された場合には、それによって損失を被った土地所有者・関係人が損失補償を受けることができる(土地収用法第92条)。