不動産投資信託のこと。「Real Estate Investment Trust」の頭文字を並べて「REIT」(リート)と呼ばれている。
不動産投資信託(リート)は、もともと1960年にアメリカで生まれた金融商品である。不動産投資信託(リート)の基本的な仕組みは、多数の投資家から資金を集め、不動産投資信託を運営する「投資法人」がその資金を不動産(オフィスビルなど)に投資し、不動産から生ずる賃料収入などを投資家へ配分するというものである。
この不動産投資信託(リート)の最大の特徴は、投資法人が獲得した利益について、その利益のほとんどを投資家へ還元するならば、投資法人にかかる法人税は免除されるという点である。つまり、投資法人は不動産と投資家との間を橋渡しする単なる器(うつわ)に過ぎないという考え方により、投資法人自体は法人税非課税とされているのである。
1960年にアメリカで誕生したリートの市場は1990年代に入って急拡大し、アメリカでは200以上のリートが株式市場に上場されて、有力な金融商品となっている。
これに対して、かつて日本国内では法律上の問題から不動産投資信託(リート)を設立することができなかったが、2000(平成12)年に従来の「証券投資信託法」が改正され、「投資信託及び投資法人に関する法律」(改正投信法)となったことにより、日本でも不動産投資信託(リート)が解禁された。
日本国内での投資信託の対象となる資産は、従来は有価証券(株式、社債など)に限定されていたが、この2000(平成12)年の法改正により、投資信託の対象資産に、不動産が加えられた。これにより日本でも、不動産を対象とする投資信託が初めて可能になったのである。この法改正によって登場した不動産を運用対象とする投資信託は「不動産投資信託」「日本版リート」「Jリート」等と呼ばれている。
このような日本の不動産投資信託には、法的な仕組みとして、会社型投資信託と契約型投資信託の2種類があるが、現在のところ会社型投資信託が大半を占めている。また日本の不動産投資信託は、証券取引所に上場することが可能とされており、2001(平成13)年9月10日の初上場以来、すでに多数の不動産投資信託が東京証券取引所および大阪証券取引所に上場され、通常の上場株式と同様に毎日売買されている。
日本の不動産投資信託(会社型)では、投資主体である会社は「投資法人」と呼ばれ、その会社に出資する投資家は「投資主」と呼ばれる。また、実際に不動産の取得・運用・売却を指揮する不動産投資のプロフェッショナルは「投資信託委託業者」と呼ばれている(投資信託委託業者は「資産運用会社」とも呼ばれる)。
最後に、日本の不動産投資信託に投資する際のポイントをいくつか挙げたい。
第1に、投資口(投資家が投資法人に出資する単位。普通の会社における株式に相当する)が20から100万円程度に設定されており、比較的購入しやすいものとなっている。
第2に、投資法人から投資家へ還元される分配金(通常の会社では配当金に相当する)は投資口価格(通常の会社では株価に相当する)に対して、3~4%という高水準にある。このため、預貯金や国債と比較して高い利回りを期待することができる。ただし、投資口価格の下落による損失の危険もあることに留意したい。
第3に、投資法人の投資先はオフィスビル・商業ビル・賃貸マンションなど多岐にわたるが、各投資法人ごとに特色があるので、投資口を購入する際に各投資法人の運用方針を、「資産運用報告書」などで理解しておくのが望ましい(資産運用報告書は各投資法人のホームページで公開されている)。
第4に、投資法人は、資金を投入した不動産に関する情報の開示(ディスクロージャー)を法律により義務付けられている。具体的には、投資信託法(および政令)により「資産運用報告書」を開示しなければならない。この運用報告書には、投資対象である一つひとつの物件の稼働率・賃料収入が明記されている。ただし、物件に入居しているテナントの名称までは開示されない(ごく一部の大口テナントの名称は有価証券報告書に記載される)。投資口を購入する際には、こうした物件の稼働率をチェックしておきたい。
第5に、投資法人の売上げは、賃料収入と不動産の売却益から構成される。その反面、保有する不動産の時価の上昇・下落は売上高には算入されない。そこで、不動産の購入価格(簿価)と不動産の時価とのズレに関する情報を投資家に開示する必要が生じる。この点、上場された不動産投資信託については「有価証券報告書」において、不動産鑑定士の鑑定による会計期末の各物件の時価を表示することが投資法人に義務付けられているので、投資口の購入の際の参考とすることができる。
不動産投資信託
投資信託のうち、不動産を運用の対象とするものをいう。
アメリカではREIT(Real Estate Investment Trust)、日本ではその日本版という意味でJREITと称される。
不動産投資信託は、不動産の証券化手法の一つであり、その仕組みとして、
1.資金を信託したうえでその資金を不動産投資として運用する方法(契約型)
2.投資家が特定の法人を設立して不動産投資を行なう方法(会社型)
とがある。実際に日本で行なわれている不動産投資信託の大部分は会社型であり、その担い手を投資法人と呼ぶ。
投資信託によって得る利益の原資は、投資対象となる不動産の賃料等から得られる収益である。また、不動産の証券化に当たっては、倒産隔離、導管体機能などを確保することが必要となるが、投資信託は、制度的にこれらの要請を満たしている。
不動産投資信託は、日本では2000(平成12)年に解禁された。また、会社型の不動産投資信託は証券取引所に上場することができるとされ(銘柄は投資法人、上場して取引されるのは投資口である)、初めて上場したのは2001(平成13)年9月10日である。
投資法人(投資信託における)
会社型投資信託において、投資家の資金によって投資を行なう主体となる法人をいう。
その構成員は投資主であるが、意思決定機関として投資主総会、業務遂行機関として役員会が設置されている。
投資法人の設立には内閣総理大臣への登録が必要で、出資総額は1億円以上とされるなど、一定の要件を満たさなければならない。また、投資法人は、投資主に対して会計情報等を開示するなど、その業務運営に関して規制があり、金融商品取引法等によって金融庁等の監督を受ける。
なお、投資法人による投資運用は、実際には、投資信託委託業者が行なっている。例えば、不動産投資信託(JREIT)の場合には、不動産と金融に詳しい専門家がこれに当たることが多い。
不動産
不動産とは「土地及びその定着物」のことである(民法第86条第1項)。
定着物とは、土地の上に定着した物であり、具体的には、建物、樹木、移動困難な庭石などである。また土砂は土地そのものである。
法人税
国税の一つで、法人の所得金額などを課税標準として課される税金をいう。 納税義務を負うのは、すべての国内法人(ただし、公益法人等や人格のない社団等については、収益事業を営む場合などに限る)および国内源泉所得がある外国法人である。 課税の対象となるのは、原則として各事業年度の法人の所得であり、益金と損金の差を一定の規則に従って算出して求めることとされている。その算出のための経理が税務会計であるが、連結の扱い、圧縮記帳などの特例、各種特別控除等々、税技術的な詳細な規定に従わなければならない。 また、税率は原則として一律(23.2%)であるが、一部特例がある。
投資信託及び投資法人に関する法律
投資者から資金を集め、投資者以外の者がその資金を集合して特定の資産に対する投資として運用し、その成果を投資者に分配する制度を定める法律。「投信法」と略称されることがある。
同法は、その方法として
(1)投資者が拠出した財産を信託財産とし、信託契約によって投資運用してその利益を受益者に分配するしくみ(投資信託制度)
(2)投資者が特定の資産に対する投資運用を目的とした社団を設立し、その利益を分配するしくみ(投資法人制度)の二つを定めている。
また、投資信託制度には、
(ア)委託者指図型投資信託 ひとりの委託者(金融商品取引業者に限る)が投資の運用を指図し、その委託者が、信託利益を受け取る権利(信託受益権)を分割して複数の者に販売するかたち
(イ)委託者非指図型投資信託 複数の委託者が信託約款によって金銭を信託し、受託者が指図に基づかないで投資運用して、委託者に対して信託利益を配分するかたち の二つの種類がある。
JREITは、不動産を対象にして、これらの制度(大部分は投資法人制度)によって投資運用することで成り立っている。 投資信託制度による信託受益権や、投資法人制度による利益の配分を受ける権利等(投資口)は、有価証券(受益証券または投資証券)のかたちで流通し、その取引は金融商品取引法に基づいて行なわれる。従って、JREITの取引については、宅地建物取引業法は適用されない。 なお、不動産を投資運用の対象とする場合には、委託者指図型投資信託の委託者や投資法人制度における設立企画者・資産運用会社は、宅地建物取引業の免許及び取引一任代理等の認可を受けた金融商品取引業者でなければならないとされている。
有価証券
財産的な価値のある権利を表示する証券で、その権利の移転・行使には原則として証券の受渡・占有が必要とされるものをいう。
表示される権利の種類、権利と証券との結合の程度、権利の移転・行使における証券の役割などは、一様ではない。従って、有価証券を取り扱う場合には、その性格を具体的に把握しておく必要がある。
有価証券は、表示する権利の種類によって、例えば次のように分類されることが多い。
1.債権証券:債権を表示するもの。手形、小切手、社債、倉庫証券など。
2.物権証券:債権とともにその担保物権を表示するもの。例えば、質入証券、抵当証券など。
3.社員権証券:社団の社員としての地位を表示するもの。例えば、株券。
なお、金融商品取引法では証券等を具体的に列挙して「有価証券」を定義しているが、その定義は一般的に理解されている有価証券の範囲とは必ずしも一致していないので注意が必要である。
会社型投資信託
投資信託のうち、投資家が特定の法人を設立して投資を行なう方法をいう。
不動産投資信託の大部分は、会社型投資信託である。
従来、投資信託は、投資家が資金を信託したうえで運用する方法(契約型)しか認められていなかったが、1998(平成10)年の法改正によって、会社型投資信託も実施可能となった。さらに、2000(平成12)年には投資信託の対象が大幅に拡大されて不動産投資も認められるようになった結果、不動産投資信託が実現したのである。
なお、会社型投資信託を担う法人を投資法人、その構成員(投資家)を投資主、投資主に与えられる権利を投資口という。
投資主(投資信託における)
会社型投資信託に投資した者をいう。株式会社における株主に相当する。
会社型投資信託は金融商品の一つとして販売されているが、その投資口(株式会社における株式に相当する)を購入した者が投資主である。投資主は、投資法人の構成員となる。
投資主には、投資運用の結果得られた利益を分配金として受け取ること、投資主総会において議決権を行使すること、代表訴訟(投資信託委託業者、執行役員等に対する訴訟)の提起権や総会決議取消請求権を行使することなど、一定の権利が与えられている。
投資信託委託業者
不動産投資信託において、投資法人から実際の投資判断を委託された不動産のプロのこと。多くの場合、大手不動産会社・中堅不動産会社・商社・生命保険会社・損害保険会社などが投資信託委託業者として選任される。
不動産投資信託における投資法人は、資産運用方針・資金調達方針を決定する主体ではあるが、専門的な不動産運用の部署を投資法人の内部に設置することは法律上できない。
そこで、調達した資金をどの不動産に投資するか、どの不動産を売却するか等の専門的判断は、すべて不動産のプロであるところの投資信託委託業者に委託することとされている。このように、不動産投資信託の実際の運用を行なうという意味で、投資信託委託業者は「ファンドマネージャー」「アセットマネージャー」「資産運用会社」と呼ばれることがある。
投資信託委託業者は、不動産運用に関する報酬を投資法人から受け取る。この報酬額の定め方は、上場された不動産投資信託の場合は、有価証券報告書で確認することができるが、多くの場合、運用成績に連動した報酬額とされている。
なお、投資法人が保有するオフィスビル等を実際に管理運営する不動産管理専門会社は、投資信託委託業者ではないことに注意したい。
投資口
不動産投資信託において、投資家が投資法人に出資する単位のこと。通常の会社における「株式」に相当する。
投資法人は、投資家からの出資を集めて設立される法人であり、投資家が投資法人に出資する単位のことを「投資口」と呼んでいる。また、投資口を保有する投資家は「投資主」と呼ばれる。
証券取引所に上場されている不動産投資信託の場合、投資口の1口の価格(すなわち投資主の最低の投資額)は、おおむね20万円から100万円程度となっている。
投資主は保有する投資口の口数に応じて、投資法人から分配金を受け取ることができる。
投資口価格
不動産投資信託における投資口が証券取引所において日々売買される価格のこと。
不動産投資信託において、投資家が投資法人に出資する単位のことを「投資口」という。投資口は普通の会社における「株式」に相当するものである。なお、投資口を購入した投資家は「投資主」と呼ばれる。
東京証券取引所・大阪証券取引所に上場されている不動産投資信託の場合には、投資主が保有する「投資口」は、普通の上場株式と同じように自由に売買することができる。
具体的には、証券取引所が開いている時間帯に、投資主は証券会社を通じてある希望価格で(または買い手の言い値で)投資口を売却するという注文を出す。また、投資口を買いたい投資家は証券会社を通じてその投資口をある希望価格で(または売り手の言い値で)買い付けるという注文を出す。そして、売り手と買い手の注文が合致したとき売買が成立する。
このようにして、証券取引所では時々刻々と投資口の取引価格が成立していることになる。この投資口の証券取引所における取引価格のことを「投資口価格」と呼んでいる。なお、実際には新聞やインターネット上では、「投資口価格」という正式名称の代わりに「株価」と呼ばれることが多い。
不動産鑑定士
国土交通省が毎年実施する不動産鑑定士試験のすべてに合格し、国土交通大臣への登録を受けた者を不動産鑑定士という。
不動産鑑定士の登録を受けるには、不動産鑑定士試験に合格し、実務講習を受けることが必要である。 不動産鑑定士は職務上高度な倫理が求められるので、法律(不動産の鑑定評価に関する法律)の規定により、故意に不当な鑑定評価をした場合には、登録抹消などの厳しい懲戒処分が行なわれる。 また不当な鑑定評価をした疑いが生じた場合には、誰でも知事または国土交通大臣に対して資料を添えてその事実を報告し、適当な措置をとることを要求することができる(不動産の鑑定評価に関する法律第42条)。