都市計画を決定するための手続は、詳細に法定されている。具体的には次の通り。
1.都市計画の案の作成
都市計画の決定手続の第1段階として、都市計画の案を作成する。この時点で、都市計画の決定主体(都道府県または市町村)は、必要があると認める場合には、住民意見を反映させる措置(例えば公聴会の開催)を実施するものとされている(都市計画法第16条第1項)。
(地区計画等の都市計画の案については、市町村の条例にもとづき、必ず土地所有者等の意見を求めて案を作成しなければならない。また、市町村の条例に定めが あれば、住民や利害関係人は地区計画等の都市計画の案の内容そのものを市町村に申し出ることが可能である(都市計画法第16条第2項、第3項))
2.都市計画の案に対する意見書提出
都市計画の決定主体は、都市計画の案を2週間、公衆の縦覧に供する(都市計画法第17条第1項)。この2週間の期間内に、住民および利害関係人は意見書を提出できる(都市計画法第17条第2項)。
(特定街区の案については土地所有者等の同意を要する。遊休土地転換利用促進地区の案については土地所有者等の意見を聴かなければならない(都市計画法第17条第3項、第4項))
3.都道府県の決定手続
都道府県が決定主体であるときは、都道府県は関係市町村の意見を聴き、都道府県都市計画審議会の議決を経て、都市計画を決定する。
(都道府県の都市計画が、大都市とその周辺を含むとき、国の利害に重大な関係があるときに限り、都道府県は国土交通大臣と協議し国土交通大臣の同意を得なければならない(都市計画法第18条第3項))
4.市町村の決定手続
市町村が決定主体であるときは、市町村は、市町村都市計画審議会(設置されていないときは都道府県都市計画審議会)の議決を経て、さらに知事と協議し同意を得て、都市計画を決定する。
注:市町村の都市計画は、原則的に知事との協議・同意が必要であるが、次の特例がある。
1)準都市計画区域における都市計画について:市町村は知事の意見を聴くだけでよい(知事との協議・知事の同意は不要である)(都市計画法第19条第5項)。
2)地区計画等について:市町村は「政令で定める地区施設の配置・規模等」についてのみ知事と協議し知事の同意を得ればよい(都市計画法第19条第3項))。
5.他の計画等との整合性
上記3.または4.で都市計画を決定する際に、その都市計画は、他の計画等との整合性を満たしたものでなければならない。具体的には次の通り。
1)都道府県が都市計画を決定する場合
全国総合開発計画・首都圏整備計画などの国土計画、地方計画に関する法律に基づく計画(公害防止計画を含む)、道路河川等に関する国の計画に適合することが必要である(都市計画法第13条第1項本文)。
2)市町村が都市計画を決定する場合
上記1)に加えて、都道府県の都市計画、市町村の建設に関する基本構想、市町村の都市計画に関する基本方針に適合することが必要である(都市計画法第15条第3項、第18条の2第4項)。
6.都市計画の告示
上記3.または4.で決定された都市計画を、都市計画の決定主体が正式に告示することにより、その告示の日から都市計画が効力を生ずる(都市計画法第20条第1項、第3項)。
本文のリンク用語の解説
都市計画
土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業に関する計画であって、都市計画の決定手続により定められた計画のこと(都市計画法第4条第1号)。
具体的には都市計画とは次の1.から11.のことである。
1.都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画法第6条の2)
2.都市再開発方針等(同法第7条の2)
3.区域区分(同法第7条)
4.地域地区(同法第8条)
5.促進区域(同法第10条の2)
6.遊休土地転換利用促進地区(同法第10条の3)
7.被災市街地復興推進地域(同法第10条の4)
8.都市施設(同法第11条)
9.市街地開発事業(同法第12条)
10.市街地開発事業等予定区域(同法第12条の2)
11.地区計画等(同法第12条の4)
注:
・上記1.から11.の都市計画は、都市計画区域で定めることとされている。ただし上記8.の都市施設については特に必要がある場合には、都市計画区域の外で定めることができる(同法第11条第1項)。
・上記4.の地域地区は「用途地域」「特別用途地区」「高度地区」「高度利用地区」「特定街区」「防火地域」「準防火地域」「美観地区」「風致地区」「特定用途制限地域」「高層住居誘導地区」などの多様な地域・地区・街区の総称である。
・上記1.から11.の都市計画は都道府県または市町村が定める(詳しくは都市計画の決定主体へ)。
都市計画の決定主体
都市計画を決定するのは、都道府県又は市町村である。
次の都市計画については都道府県が、それ以外の都市計画については市町村が決定することとされている。
1)都市計画区域の整備、開発及び保全の方針
2)区域区分
3)都市再開発方針等
4)地域地区のうち、都市再生特別地区、重要港湾等に係る臨港地区、歴史的風土特別保存地区等、一定の緑地保全地域等、流通業務地区、航空機騒音障害防止地区等
5)二以上の市町村の区域にわたり面積が10ha以上の風致地区、近郊緑地特別保全地区
6)広域の見地から決定すべき都市施設又は根幹的都市施設(国道・都道府県道、都市高速鉄道、流域下水道、産業廃棄物処理施設、一級河川・二級河川、流通業務団地など)
7)市街地開発事業(土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業及び防災街区整備事業については、大規模で国・都道府県施行見込みのものに限る)
8)市街地開発事業等予定区域(一団地の住宅施設の予定区域を除く)
都市計画法
都市計画に関する制度を定めた法律で、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として、1968(昭和43)年に制定された。
この法律は、1919(大正8)年に制定された旧都市計画法を受け継ぐもので、都市を計画的に整備するための基本的な仕組みを規定している。
主な規定として、都市計画の内容と決定方法、都市計画による規制(都市計画制限)、都市計画による都市整備事業の実施(都市計画事業)などに関する事項が定められている。
準都市計画区域
都市計画区域外の区域において、市街化が進行すると見込まれる場合に、土地利用を規制するために設ける区域。都道府県が指定する。
1.準都市計画区域の趣旨
都市計画区域を指定するためには一定の要件を満たすことが必要であるが、その要件を満たしていない区域であっても、将来的に市街化が見込まれる場合には、土地利用をあらかじめ規制しておくことが望ましい。その必要に応えるために、2000(平成12)年に創設されたのが「準都市計画区域」の制度である。
2.準都市計画区域の指定の要件
次の要件のすべてを満たす場合に、指定することができる。
1)都市計画区域外の土地であること
2)相当数の住居等の建築・敷地の造成等が現に行なわれ、または行なわれると見込まれること
3)そのまま放置すれば将来における都市としての整備開発保全に支障が生ずる恐れがあること
3.準都市計画区域の指定の方法
都道府県が指定する(指定の手続きについては「準都市計画区域の指定」を参照)。
4.準都市計画区域の指定の効果
準都市計画区域においては、次のような土地利用の規制が適用される。
1)次の地域地区を定めることができる。
「用途地域」「特別用途地区」「高度地区」「特定用途制限地域」「景観地区」「風致地区」「緑地保全地域」「伝統的建造物群保存地区」
2)開発許可制度が適用される。この結果、原則として開発面積が3,000平方メートルを超える宅地造成について都道府県知事(または市長)の許可が必要となる(「開発許可」を参照)。
3)建物等の新築や増改築移転(増改築移転部分の床面積が10平方メートル以内のものを除く)する場合には、事前に建築確認を受けなけらばならない。この場合には、都市計画区域内と同様の基準が適用される(「建築確認」を参照)。
市町村の建設に関する基本構想
地方自治法・国土利用計画法の規定にもとづく市町村の構想・計画のこと。
具体的には、地方自治法第2条第4項に基づく「市町村の基本構想」および国土利用計画法第8条に基づく「市町村計画」を指している(※建設省(現・国土交通省)通知にもとづく「市町村の都市計画に関する基本的な方針の策定等について」平成5年6月25日建設省都計発第95号各都道府県知事・各政令指定都市都市計画担当部局長宛建設省都市局都市計画課長通知)。
一般的には「市町村の建設に関する基本構想」は、「○○市総合計画」「○○市基本計画」「○○市基本構想」のように呼称されていることが多い。
「市町村の建設に関する基本構想」は、「市町村の都市計画に関する基本的な方針」(いわゆるマスタープラン)の上位に位置付けられている。
「市町村の都市計画に関する基本的な方針」を策定・決定するにあたっては、市町村の議会の議決を経て定められた「市町村の建設に関する基本構想」に即したものとしなければならない(都市計画法第18条の2第1項)。