宅地建物取引業を営もうとする者は、都道府県知事または国土交通大臣に宅地建物取引業の免許を申請し、免許を受けることが必要である(宅地建物取引業法第3条)。
不正の手段で宅地建物取引業の免許を受けた者や、無免許で宅地建物取引業を営んだ者には、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金という罰則が予定されている(法第79条第1号、第2号)(詳しくは無免許営業等の禁止へ)。
免許を受けるには、宅地建物取引業を営もうとする者(個人または法人)が、一定の不適格な事情(欠格事由)に該当しないことが要件とされている(法第5条第1項)。
この免許の欠格事由は、法律により詳細に規定されている(詳しくは免許の基準へ)。
また、宅地建物取引業の免許を受けるには、免許申請書および免許申請書の添付書類を都道府県知事または国土交通大臣に提出する必要があり、その記載事項等は詳細に法定されている(法第4条第1項、第2項、施行規則第1条の2)。
なお、宅地建物取引業の免許の有効期間は5年とされている(法第3条第2項)。
免許の有効期間の満了後、引き続き宅地建物取引業を営むためには、有効期間満了の日の90日前から30日前の期間内に免許の更新の申請書を提出する必要がある(法第3条第3項、施行規則第3条)。
国土交通大臣への免許申請等については2024(令和6)年5月25日から国土交通省手続業務一貫処理システム(eMLIT)を利用してのオンライン申請の受付が開始されている。
本文のリンク用語の解説
宅地建物取引業
宅地建物取引業とは「宅地建物の取引」を「業として行なう」ことである(法第2条第2号)。 ここで「宅地建物の取引」と「業として行なう」とは具体的には次の意味である。 1.「宅地建物の取引」とは次の1)および2)を指している。 1)宅地建物の売買・交換 2)宅地建物の売買・交換・貸借の媒介・代理 上記1.の1)では「宅地建物の貸借」が除外されている。このため、自ら貸主として賃貸ビル・賃貸マンション・アパート・土地・駐車場を不特定多数の者に反復継続的に貸す行為は、宅地建物取引業から除外されているので、宅地建物取引業の免許を取得する必要がない。 またここでいう「宅地」とは、宅地建物取引業法上の宅地を指す(詳しくは「宅地(宅地建物取引業法における~)」を参照のこと)。 2.「業として行なう」とは、宅地建物の取引を「社会通念上事業の遂行と見ることができる程度に行なう状態」を指す。具体的な判断基準は宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方の「第2条第2号関係」に記載されているが、主な考え方は次のとおりである。 1)取引の対象者 広く一般の者を対象に取引を行なおうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。 2)取引の反復継続性 反復継続的に取引を行なおうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行なおうとするものは事業性が低い。
免許
「宅建免許」を参照。
宅地建物取引業法
宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。
この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。
無免許事業等の禁止
宅地建物取引業の免許を受けないで、宅地建物取引業の営業(または表示行為・広告行為)を行なうことは、法律上禁止されている(宅地建物取引業法第12条)。これを無免許事業等の禁止という。
具体的には次のとおり。 1.無免許事業の禁止(法第12条第1項) 宅地建物取引業を無免許で営むことは、宅地建物取引業法の免許制度の根本をゆるがす重大な違反行為である。 そのため、無免許の営業を行なった者には、宅地建物取引業法上の最も重い罰則として、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(または両者の併科)が予定されている(法第79条第2号)。 2.無免許の表示行為・広告行為の禁止(法第12条第2項) 無免許の者が実際に営業を行なわない場合(または営業が事後的に立証できない場合)であっても、無免許の者が看板等において宅地建物取引業者である旨を表示した場合(表示行為)や、無免許の者が宅地建物取引業を営む目的で広告をした場合(広告行為)については、そうした表示行為・広告行為そのものが宅地建物取引業法上の処罰対象とされる。 具体的には、そうした無免許の表示行為・無免許の広告行為を行なった者に対しては、100万円以下の罰金が予定されている(法第82条第2号)。
法人
私法上の概念で、自然人以外で、法律上の権利・義務の主体となることを認められた団体・財産をいう。
法人の設立は、法律の規定によらなければならないとされている。
例えば、一般社団法人、一般財団法人、株式会社、学校法人、宗教法人、管理組合法人などはすべて法人である。
免許の基準(宅地建物取引業の〜)
宅地建物取引業を営もうとする者(個人または法人)が、宅地建物取引業の免許を申請した場合には、国土交通大臣または都道府県知事は、一定の事由に該当する場合には、免許を与えることができないとされている。免許の基準とは、その免許を与えることができない場合をいう。「欠格事由」も同じ意味である。 免許の基準は、宅地建物取引業法に規定されている。具体的には次のとおりである。
(1)免許申請書やその添付書類中に重要な事項についての虚偽の記載があり、または重要な事実の記載が欠けている場合
(2)申請前5年以内に次のいずれかに該当した場合 i)免許の不正取得、情状が特に重い不正不当行為、業務停止処分違反をして免許を取り消された場合(その者が法人である場合は、その法人の役員であった者を含む) ii)前記iのいずれかの事由に該当するとして、免許取消処分の聴聞の公示をされた後、相当の理由なく廃業等の届出を行った場合(その者が法人である場合は、その法人の役員であった者を含む)(「免許の基準(廃業等)」を参照) iii)禁錮以上の刑に処せられた場合(「免許の基準(刑事罰)」を参照) iv)宅建業法、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、又は刑法(傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合・脅迫・背任の罪、暴力行為等処罰に関する法律の罪)を犯し、罰金の刑に処せられた場合 v)暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者。暴力団員等が事業活動を支配する者を含む)(「免許の基準(刑事罰)」を参照) vi)免許申請前5年以内に宅地建物取引業に関して不正または著しく不当行為をした場合
(3)破産手続開始の決定を受けて復権を得ない場合
(4)宅地建物取引業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな場合
(5)精神の機能の障害により宅地建物取引業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行なうことができない場合
(6)申請者の法定代理人 (営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者の親権者又は後見人)、役員(業務を執行する社員、取締役またはこれに準ずる者。法人に対しこれらの者と同等以上の支配力を有する者を含む)または一定の使用人 (事務所の代表者で契約締結権限を有する者)が上記(2)(3)(4)(5)に該当する場合(「免許の基準(役員の連座)」を参照)
(7)事務所に専任の宅地建物取引士を設置していない場合
免許申請書
宅地建物取引業の免許を受けようとする者が、国土交通大臣または都道府県知事に提出する申請書のこと。免許申請書の様式は、宅地建物取引業法施行規則に定められている。
免許申請書に記載すべき事項は次のとおりである。
1)商号または名称
2)法人である場合においてはその役員の氏名、事務所の代表者の氏名
3)個人である場合においてはその者の氏名、事務所の代表者の氏名
4)事務所の名称および所在地
5)事務所ごとに置かれる専任の宅地建物取引士の氏名
6)他に事業を行なっているときは、その事業の種類
また、申請書には、宅地建物取引業法施行規則に定める添付書類を添付しなければならない。(「免許申請書の添付書類」を参照)
免許申請書の添付書類
宅地建物取引業を営もうとする者が、宅地建物取引業の免許を申請する場合には、次の書類を免許申請書に添付しなければならないとされている(宅地建物取引業法・宅地建物取引業法施行規則)。
1)宅地建物取引業経歴書
2)免許の欠格事由に該当しないことを誓約する書面(「免許の基準」を参照)
3)事務所について専任の宅地建物取引士の設置義務を満たしていることを証する書面
4)免許申請者(法人の場合は役員(相談役、顧問含む))、事務所の代表者、専任の宅地建物取引士が、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村の長の証明書
5)法人である場合において、相談役および顧問の氏名と住所、発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主または出資額の100分の5以上の額に相当する出資をしている出資者の氏名(名称)と住所、およびその株式の数またはその出資の金額を記載した書面
6)事務所を使用する権原に関する書面
7)事務所付近の地図および事務所の写真
8)免許申請者、事務所の代表者、専任の宅地建物取引士の略歴を記載した書面
9)法人である場合においては、直前1年の各事業年度の貸借対照表および損益計算書
10)個人である場合においては、資産に関する調書
11)宅地建物取引業に従事する者の名簿
12)法人である場合においては法人税、個人である場合においては所得税の直前1年の各年度における納付すべき額および納付済額を証する書面
13)法人である場合においては、登記簿謄本
14)個人である場合においては、住民票抄本またはこれに代わる書面