宅地建物取引士の登録を受けている者について、死亡等の一定の事情が発生した場合に、相続人等の一定の者が知事に対して行なうべき届出のこと。
宅地建物取引士として業務に従事するためには、その前提条件として、都道府県知事より宅地建物取引士の登録を受けることが必要である(宅地建物取引業法第22条の2第1項、第18条第1項)が、この登録を受けた者について死亡等の一定の事情が発生した場合には、その旨を、登録を受けた都道府県知事に対して届出なければならず、この届出を「死亡等の届出」という(法第21条)。
死亡等の届出が提出された場合、都道府県知事はその届出にもとづいて宅地建物取引士の登録を消除しなければならない(法第22条第2号)。
また、死亡等の届出に該当する事由(下記1.および2.の事由)が生じていることが知事において判明した場合には、知事は死亡等の届出が提出されていないときでも、職権により登録を消除しなければならない(法第22条第3号、法第68条の2第1項第1号)。
(詳しくは宅地建物取引士の登録の消除へ)
死亡等の届出を提出すべき事由と提出方法は次の1.および2.のとおりである。
1.死亡した場合
登録を受けた者が死亡した場合は、その者の相続人が、その事実を知った日から30日以内に、登録を受けた知事に対して、宅地建物取引士死亡等届出書(施行規則様式第7号の2)を提出しなければならない(法第21条第1号)。
届出期間は「死亡から30日以内」ではなく「死亡の事実を知った日から30日以内」であることに注意。
2.法第18条第1項第1号から第12号までの欠格事由が生じた場合
登録を受けた者について、宅地建物取引士の登録が不適当とされるような一定の欠格事由(法第18条第1項第1号から第12号までの事由)が発生した場合には、宅地建物取引士の登録を消除する必要がある。
(欠格事由について詳しくは宅地建物取引士の登録の基準へ)
この場合には、原則として本人(欠格事由が「成年被後見人又は被保佐人となったこと」(法第18条第1項第1号)であるときは、届出を行なうのは本人ではなく、後見人または保佐人(法第21条第3号))が、その事実が発生した日から30日以内に、登録を受けた知事に対して、宅地建物取引士死亡等届出書を提出しなければならない(法第21条第3号、法第22条第2号)。
本文のリンク用語の解説
宅地建物取引士
宅地建物取引士資格試験に合格し、都道府県知事の登録を受けて、宅地建物取引士証の交付を受けた者のこと。 一定以上の知識・経験を持つ者として公的に認められた者である。宅地建物取引業者は、事務所ごとに従事者5名に対して1名以上の割合で、専任の宅地建物取引士を置かなければならない(詳しくは宅地建物取引士の設置義務へ)。 宅地建物取引において特に重要な次の3つの業務は、宅地建物取引士だけが行なうことができるとされている(宅地建物取引士ではない者はこれらの業務を行なうことができない)。
1.重要事項説明 2.重要事項説明書への記名・押印 3.37条書面への記名・押印 宅地建物取引士となるためには、具体的には次の1)から5)の条件を満たす必要がある。
1)宅地建物取引士資格試験に合格すること 宅地建物取引業に関して必要な知識に関する資格試験である宅地建物取引士資格試験に合格することが必要である。なお、一定の要件を満たす者については宅地建物取引士資格試験の一部免除の制度がある。 2)都道府県知事に登録を申請すること この場合、宅地建物取引に関して2年以上の実務経験を有しない者であるときは、「登録実務講習」を受講し修了する必要がある。 3)都道府県知事の登録を受けること 登録を受けるには一定の欠格事由に該当しないことが必要である。 4)宅地建物取引士証の交付を申請すること 宅地建物取引士証の交付を申請する日が宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年を超えている場合には、都道府県知事の定める「法定講習」を受講する義務がある。 5)宅地建物取引士証の交付を受けること 氏名、住所、生年月日、有効期間の満了する日等が記載されている宅地建物取引士証の交付を受けて初めて正式に宅地建物取引士となる(氏名において旧姓が併記された宅地建物取引士証の交付を受けた日以降は、書面への記名等の業務において旧姓を使用してよいこととされている)。
宅地建物取引士は、宅地建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護および円滑な宅地建物の流通に資するよう公正誠実に業務を処理するほか、信用・品位を害するような行為をしないこと、必要な知識・能力の維持向上に努めることとされている。
宅地建物取引士の登録
宅地建物取引士資格試験に合格した者が、宅地建物取引士として業務に従事するのにふさわしい資格等を有していることを都道府県知事が確認する手続きのこと(宅地建物取引業法第18条、第19条)。具体的には次のとおりである。
1.登録を申請する相手方
宅地建物取引士資格試験に合格した者が、試験を行なった都道府県知事に対して登録を申請する(宅地建物取引業に従事しようとする都道府県の知事ではないことに注意)。
2.登録を受けるための要件
宅地建物取引士の登録を受けるには次の1)と2)の要件を満たすことが必要である。
1)宅地建物の取引に関して2年以上の実務経験を有すること
宅地建物取引業者の下で2年以上勤務していた経験(または免許を受けた宅地建物取引業者としての2年以上の経験)が必要である。
ただし、(公財)不動産流通推進センターが実施する実務講習を受講し修了することにより、この実務経験を有するものと同等以上の能力を持つ者として認定されることができる。
(詳しくは、実務経験、実務講習へ)
2)一定の不適格な事情(欠格事由)に該当しないこと
成年被後見人であることなどの一定の不適格な事情(欠格事由)がある者は、登録を受けることができないとされている。
(詳しくは宅地建物取引士の登録の基準へ)
3.登録の申請の方法
宅地建物取引士資格試験に合格した者が、試験を行なった都道府県知事に対して、一定の事項を記載した登録申請書を提出する(法第19条第1項、施行規則第14条の3、施行規則様式第5号)。このとき実務経験証明書などの一定の書類の添付が必要である(施行規則第14条の3)。
4.宅地建物取引士資格登録簿への登載
登録申請書を提出された都道府県知事は、上記2.の要件を満たしていることを確認した後に、宅地建物取引士資格登録簿に一定の事項を遅滞なく登載する(法第19条第2項)。
これにより宅地建物取引士の登録が完了する。
(詳しくは宅地建物取引士資格登録簿へ)
5.変更の登録
宅地建物取引士資格登録簿の登載事項(氏名、住所など)に変更が生じた場合には、登録を受けている本人が遅滞なく変更を申請しなければならない(法第20条)。これを「変更の登録」と呼んでいる。
(詳しくは変更の登録(宅地建物取引士の~)へ)
6.登録の移転
宅地建物取引士の登録を受けた者は、一定の事情が発生したときは、他の都道府県知事に対して登録の移転を申請することが可能である。
(詳しくは宅地建物取引士の登録の移転へ)
7.死亡等の届出
宅地建物取引士の登録を受けた者について、死亡等の事情が発生した場合には、登録を受けている都道府県知事への届出が必要である。
(詳しくは死亡等の届出へ)
8.登録の消除
上記7.の死亡等の届出があった場合やその他の場合には、登録を受けている都道府県知事は、宅地建物取引士の登録を消除しなければならない。
(詳しくは宅地建物取引士の登録の消除へ)
9.登録の有効期間
有効期間の制限はないので、一度登録すれば生涯にわたって有効である。ただし、上記8.により消除される場合あり。
10.宅地建物取引士との関係
宅地建物取引士の登録を受けた者は、宅地建物取引士証の交付を受けることによって、初めて宅地建物取引士となることができる(宅地建物取引士の登録を受けただけでは、まだ宅地建物取引士ではない)。
宅地建物取引業法
宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。
この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。
宅地建物取引士の登録の消除
宅地建物取引士の登録を受けている者について一定の事情が発生した場合に、都道府県知事が宅地建物取引士の登録を消除すること。
宅地建物取引士資格試験の合格者が、宅地建物取引士として業務に従事するためには、その前提条件として都道府県知事より宅地建物取引士の登録を受けることが必要である(宅地建物取引業法第22条の2第1項、第18条第1項)。この登録を受けた場合には、氏名、住所等の一定の事項が宅地建物取引士資格登録簿に登載される(法第18条第2項)。
このような宅地建物取引士の登録を受けた者について一定の事情が発生した場合には、届出により、または知事の職権により、宅地建物取引士の登録が消除される(法第22条、法第68条の2)。その場合には、再び登録を受けない限り、宅地建物取引士として業務に従事することはできない(法第22条の2により、登録がない者は宅地建物取引士証の交付を受けることができないため)。
登録が消除されるのは次の場合である。
1.本人から登録の消除の申請があったとき(法第22条第1号)
宅地建物取引士の登録は一度登録すれば生涯にわたり有効であるが、本人の意思により登録を消除することも可能である。
2.法第21条の届出(死亡等の届出)があったとき(法第22条第2号)
死亡等の届出が提出された場合、知事はその届出に基づいて登録を消除しなければならない(詳しくは死亡等の届出へ)。
3.死亡したとき
死亡の事実が判明したときは、都道府県知事は職権により登録を消除しなければならない。
本来は、相続人が上記2.の「死亡等の届出」(法第21条)を提出すべきであるが、この届出がない場合であっても、知事は職権により登録を消除しなければならない(法第22条第3号)。
4.死亡以外の理由で、法第21条の届出(死亡等の届出)を提出すべき事由が発生したとき(法第22条第3号、法第68条の2第1項第1号、法第68条の2第2項第1号)
死亡以外の理由で「死亡等の届出」を提出すべき事由が発生した場合(すなわち法第18条第1項第1号から第5号の2までの登録の欠格事由が生じた場合)については、上記3.と同様の扱いである。
従って、知事に対してその旨の届出が提出されないときでも、知事は職権により登録を消除しなければならない。
(登録の欠格事由について詳しくは宅地建物取引士の登録の基準へ)
5.宅地建物取引士資格試験の合格が取消されたとき(法第22条第4号、法第17条第1項、第2項)
6.不正の手段により宅地建物取引士の登録を受けたとき(法第68条の2第1項第2号、第2項第2号)
7.不正の手段により宅地建物取引士証の交付を受けたとき(法第68条の2第1項第3号)
8.法第68条第1項各号の事由(指示処分の対象となる事由)に違反し、特に情状が重いとき(法第68条の2第1項第4号)
9.法第68条第2項・第4項にもとづく事務の禁止の処分を受けて、その事務の禁止の処分に違反したとき(法第68条の2第1項第4号)
10.宅地建物取引士証の交付を受けていない者が、宅地建物取引士としてすべき事務を行ない、情状が特に重いとき(法第68条の2第2項第3号)
上記5.から10.までの場合には、知事は職権により登録を消除しなければならない。
また上記6.から10.までは、宅地建物取引士としての不正行為・不当行為(法第68条第1項第2号、第3号、第4号)などがあったことに由来する知事の監督処分である。このような意味で、6.から10.までの登録消除を、特に「登録消除処分」と呼ぶことがある。
宅地建物取引士の登録の基準
宅地建物取引士資格試験の合格者が、宅地建物取引士の登録を受けるにあたって満たすべき基準のこと。 宅地建物取引士資格試験の合格者が、宅地建物取引士の登録を受けるためには、一定の不適格な事情(登録の欠格事由)に該当しないことが必要とされている(法第18条第1項各号)。 具体的には、次の1.から5.の欠格事由に該当しない場合にのみ登録を受けることができる。 1.成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者(法第18条第1項第1号、第2号) これらの者は登録を受けることができない。 2.免許取消し処分を受けた宅地建物取引業者等 悪質な違反行為(法第66条第1項第8号、第9号)を犯したことを理由として、免許の取消処分を受けた個人業者、免許の取消処分を受けた法人の役員は、当該免許の取消処分の日から5年間は、宅地建物取引士の登録を受けることができない(法第18条第1項第3号、第4号)。 このほか、役員の連座、免許取消し処分を不当にまぬがれるための廃業等(法第18条第1項第5号)についても詳細な規定が設けられている。 3.懲役刑、禁固刑、一定の罪に対する罰金刑を受けた者 一定の刑事罰を受けた経歴がある場合には、刑の執行を終えた日(または刑の執行を受けることがなくなった日)から5年間は、登録を受けることができない(法第18条第1項第6項、第7豪、第8豪)。 4.登録消除処分を受けた者等 一定の悪質な違反行為(法第68条の2第2号、第3号、第4号など)を犯したことを理由として、登録の消除の処分を受けた個人は、当該登録の消除の処分の日から5年間は、宅地建物取引士の登録を受けることができない(法第18条第1項第9号)。 このほか、登録消除処分を不当にまぬがれる目的で登録の消除を申請した場合(第10号)、事務禁止処分の期間中に登録の消除を申請した場合(第11号)などに関する詳細な定めがある。 5.営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者(法第18条第1項第1号) 未成年者が登録を受けるためには「宅地建物取引業の営業に関して成年者と同一の能力を有すること」が必要とされる。 「成年者と同一の能力を有する」とは、「法定代理人より営業を許可されていること」または「婚姻により成年と同一の能力を獲得していること」を指している。 (詳しくは未成年者へ)
成年被後見人
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる(民法第7条)。
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する(民法第8条)。
家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する(民法第843条)。 こうした手続きにより後見人を付けられた者のことを「成年被後見人」と呼ぶ。 また、成年被後見人に付けられる後見人は「成年後見人」と呼ばれる。この「成年被後見人」の制度は、2000(平成12)年の民法改正によって創設されたもので、それ以前は「禁治産者」という名称であった。 成年被後見人は法律行為を有効に行なうことができないものとされているので、どんな法律行為でも原則的に後で取り消すことが可能である(ただし日用品の購入などは有効に自分で行なうことができる)(民法第9条)。 従って、成年被後見人との契約を行なうには、その成年後見人を代理人として契約を行なうべきである(民法第859条)。
被保佐人
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる(民法第11条)。
家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、保佐人を選任する(民法第876条の2)。
こうした手続きにより保佐人を付けられた者のことを「被保佐人」と呼ぶ。 保佐とは「たすける」という意味である。
この「被保佐人」の制度は、2000(平成12)年の民法改正によって創設されたもので、それ以前は「準禁治産者」という名称であった。
被保佐人は、財産に関わる重要な法律行為(不動産売買や不動産賃貸借など)を自分だけでは有効に行なうことができない。 こうした重要な法律行為を行なうには保佐人の同意が必要であり、もし保佐人の同意を得ないで重要な法律行為を行なった場合には、後でその法律行為を取り消すことが可能である。 ただし重要でない法律行為や、日用品の購入などは有効に自分だけで行なうことができる(民法第13条)。 従って、被保佐人との契約を行なうには、その保佐人の同意を必ず取得するべきである。
後見人
未成年者や成年被後見人を「後見」する者を「後見人」という。
後見とは、人(未成年者や成年被後見人)を保護するという意味である。 後見人は民法により次の権限を持つ(民法第859条)。
1.未成年者または成年被後見人の財産を管理する権限を持つ。 2.未成年者または成年被後見人の法律行為を代表して行なう権限を持つ。 このように後見人には財産管理権と代理権という強い権限が付与されている。 なお、未成年者の後見人は未成年後見人と呼ばれる。 また、成年被後見人の後見人は成年後見人と呼ばれる。
保佐人
被保佐人に対して、保佐開始の審判のときに、家庭裁判所が職権で選任する保佐人のことである(民法第876の2条)。 保佐とは「たすける」という意味である。 保佐人は、重要な財産行為などについて同意する権限を持つ(民法12条)。