法律用語としては、建築基準法および建築士法に基づき、建築士が、発注者の代理人の立場で、設計図どおりに建築工事が行なわれているかどうかを確認することを「工事監理」という。一方、建設業法に基づき、建設業者が請け負った建設工事において、工事現場における施工の技術上の管理(これを「施工管理」と呼ぶことが多い)を行なわせるため置かなければならないとされているのが、監理技術者ないし主任技術者である。
表題の「施工監理」は、この「工事監理」と「施工管理」をまとめて、場合によっては、誤用、混同して用いられていることが多い用語で、使用に当たっても読解に当たっても注意が必要である。
一方、後述するように、公的発注者またはその受託者や代理人的立場の者による発注者側の監理または技術的管理業務や、海外などでコンサルタントがプロジェクト全体や現場の施工を一貫して統括管理(監理)したり、部分的に関与する業務を「施工監理(または施工管理)」と表現している例も見られる。
通常「監理」(建築主、施主、発注者の立場で、設計図通りに施工が行なわれているのかをチェックする業務。設計を請け負った建築事務所等が、設計業務と一体として受託等する場合が多い。)を「さらかん」、「管理」(工事の請負者、建設業者、工事受注者の立場で工事の工程、資材の発注のほか全般を現場でコントロールする業務)を「くだかん」「たけかん」と言っている。施工「監」理の場合は、「さらかん」として、発注者側の工事監理を意味している場合が多い。建築基準法により技術者が工事監理を行なう場合には、現場の施工を厳しく監査するとともに、施主に対して責任をもって適正な施工を約するという意味になる。
施工「管」理すなわち「くだかん」「たけかん」の場合は、工事を請け負った側の建設業者が施工計画の作成、工程管理、品質管理、資材調達や技術上の問題点の改善のために現場作業員を指示するなどの行為を通じて適正な施工を確保する業務を指す。建設業法は、下請を含む直接施工する建設業者の従業員で、この業務を行なう者として「主任技術者」の設置を義務付けている。ただし、下請業者への発注を伴う等の一定規模以上の元請工事についてこの業務を行なう者については、下請の技術者を統括するという意味を含めて「監理技術者」とし、同様にその設置を義務付けている。すなわち、元請ゼネコンは、受注者・施工者として「管理」を行ないつつ、下請に対しては発注者として「監理」をしているという構図がある。このように「施工管理」を行なう技術者を統括する者を「監理技術者」と呼び、その業務も、建設業法上の「施工管理」の一環であることから、「施工管理」の一部を行なうものを「監理技術者」と呼んでいる関係上、そもそも「監理」と「管理」の用語が混乱しやすい素地がある。また、公共建築物の発注者である国土交通大臣官房官庁営繕部は、受注業者向けに「施工管理・工事監理に関する留意事項集」等を作成しており、これらは、元請が行なうのが「監理」であり、下請または直接受注の施工業者が行なうのは「施工管理」となるという実態に依拠した用語であろうと思われる。
さらに、国や地方公共団体、UR等の公共事業に関わる独立行政法人、高速道路会社等が発注者である場合には、発注者側の専門的な技術的知見等を反映しようとする意向が強く働く結果、発注者において工事監理・施工管理的な業務を行なう場合もあり、その場合には、自ら工事全体を管理し、また監理もするという意味で、「施工監理」という用語を用いている場合もある。
公共事業や独立行政法人が地方公共団体から受託して行なう事業の場合は、国民や納税者、委託者である地方公共団体に対して、その工事を含む事業またはプロジェクト全体の遂行に関する統一的な責任を負うため、工事を請け負った建設会社に対して発注者の立場で監理をしながら、委託者等に対しては、管理責任を有するという意味合いから、施工監理ないし施工管理という表現が用いられていることがある。
現実に、ゼネコンによる総額請負方式が多い日本に比べ、海外では、発注者が事業遂行を全面的に委託するコンサルタント業務が広く行なわれており、例えば(独)国際協力機構の「コンサルタント契約書標準約款」では、コンサルタントの業務の一つとして「施工監理計画書の作成」が規定されており、同法人のWEBサイトにおいては、「コンサルタント(施工監理者)は、発注者(施主)の代理人として、施工業者が契約書、技術仕様書・設計図、及びこれらに記載された出来形管理基準、品質管理基準に基づいた施工を行っているかを監理する役割を担っています」との記述がある。
工事発注者から委託を受けた建築士や設計事務者が行なうのが工事監理(建築基準法・建築士法)であり、受注者であり請負者である建設業者側でマネジメントを行なうのが施工管理(建設業法)である一方、発注者側による「施工監理」という用語がなされることも実際には見られるということであるが、いずれにしても、「工事監理」ないし「施工管理」のいずれかの誤用(場合によっては単なる漢字変換ミス)の場合も決して少なくなく、その上口頭で伝達される場合も多いので、注意が必要である。
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
建築士
建築物の設計、工事監理等を行なう技術者であって、試験に合格して免許を受けた者をいう。建築士法による資格である。
建築士は、設計等を行なうことができる建物の規模、構造、用途によって、一級建築士、二級建築士、木造建築士に分かれている。例えば、延べ面積が千平方メートルを超え階数が二以上の建築物は、一級建築士でなければ設計をしてはならないし、延べ面積が百平方メートル(木造の建築物にあっては三百平方メートル)を超えまたは階数が三以上の建築物は、一級建築士または二級建築士でなければ設計をしてはならない。
また、一級建築士であって、構造設計または設備設計について高度な専門能力を有すると認められた者は、構造設計一級建築士または設備設計一級建築士としてその専門業務に従事することができるとされている。
建築士の資格は法的に保護さていて、例えば、建築確認の申請に当たって提出する設計図書は建築士が作成しないと受理されないし、建築士の免許を受けることなく建築士の名称を用いて業務を行なう者は罰せられる。
なお、建築士の業務分野は、その専門性に応じて、大きく、意匠設計(主として、建築のデザインや設計の総合性の確保を担う)、構造設計(主として、建築物の構造の安全性確保などを担う)、設備設計(主として、建築設備の設計を担う)、監理業務(主として、工事が設計に適合して実施されるための監督などを担う)に分かれている。
建設業法
建設業に関する基本的な法律で、1949年に公布・施行された。
この法律には、建設業を営むうえで守らなければならない諸規定が定められており、それによって、建設工事の適正な施工の確保、発注者の保護、建設業の健全な発達の促進を図ることとされている。
建設業法に規定されている主な制度としては、
1.建設業の営業許可制度
2.建設工事の請負契約に関する、契約内容の義務化、一括下請負の禁止等
3.主任技術者および監理技術者の設置等による施行技術の確保
4.建設業者の経営に関する事項の審査
などがある。
監理技術者
建設業法第26条は、適正かつ生産性の高い建設工事の施工を確保するため、建設業者がその請け負った建設工事を施工するときに、当該工事現場の「施工の技術上の管理をつかさどる」技術者を置かなければならないとしており、下請代金総額5,000万円以上の元請工事または8,000万円以上の建築一式工事においては、「監理技術者」を、それ以外の工事については「主任技術者」を置かなければならないとしている。
監理技術者は、請け負った建設工事全体の統括的施工管理を行なう者として、(1)施工管理計画の作成(下請の作成した施工要領書等の確認を含む)、(2)工程管理(下請間の工程調整等)、(3)品質管理、(4)技術的指導(主任技術者の配置等法令順守や職務遂行の確認、現場作業の総括的指導)を行なう。
監理技術者の資格要件は、1級施工管理技士、1級建築士、技術士、実務経験者(指定建設業(土木一式等7業種)を除き、主任技術者としての要件を満たす者のうち、元請として4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者)および
国土交通大臣特別認定者である。これらは、特定建設業の許可に際しての営業所専任技術者の要件と同一である。
監理技術者
建設業法第26条は、適正かつ生産性の高い建設工事の施工を確保するため、建設業者がその請け負った建設工事を施工するときに、当該工事現場の「施工の技術上の管理をつかさどる」技術者を置かなければならないとしており、下請代金総額5,000万円以上の元請工事または8,000万円以上の建築一式工事においては、「監理技術者」を、それ以外の工事については「主任技術者」を置かなければならないとしている。
監理技術者は、請け負った建設工事全体の統括的施工管理を行なう者として、(1)施工管理計画の作成(下請の作成した施工要領書等の確認を含む)、(2)工程管理(下請間の工程調整等)、(3)品質管理、(4)技術的指導(主任技術者の配置等法令順守や職務遂行の確認、現場作業の総括的指導)を行なう。
監理技術者の資格要件は、1級施工管理技士、1級建築士、技術士、実務経験者(指定建設業(土木一式等7業種)を除き、主任技術者としての要件を満たす者のうち、元請として4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者)および
国土交通大臣特別認定者である。これらは、特定建設業の許可に際しての営業所専任技術者の要件と同一である。
ゼネコン
建設工事の全体を請負施工する企業。英語のgeneral contractor(ゼネラルコントラクター)。「総合建設業」も同じ意味である。
ゼネコンは、工事発注者から直接に工事を受注し、完成した建造物を引き渡す責任を負う。施工に当たっては、一般に、各種の専門工事業者が下請負で作業する。この場合、ゼネコン(元請負業者)は工事の管理・監督機能を担い、専門工事業者(下請負業者)は直接に施工する機能を担うとされる。
ゼネコンは、建設業法に基づき、「特定建設業」として営業許可を得なければならず、許可が必要な工事の種類は「土木一式工事」または「建築一式工事」である。また、一括下請負は禁止され、元請人としての責務を果たさなければならない。
地方公共団体
地域における行政を自主的、総合的に実施する役割を担う団体。その組織、運営、財務などについては、憲法の規定に基づき、地方自治法等によって定められている。
普通地方公共団体である都道府県・市町村と、特別地方公共団体である特別区・地方公共団体の組合・財産区の二種類に分類され、いずれも法人である。また、市町村は、地域の事務を一般的に処理する基礎的な地方公共団体である。
地方公共団体は、地方自治の本旨に基づいて組織し、運営しなければならない。この場合、地方自治の本旨とは、「団体自治」(国から独立した地域団体によって自己の事務を自己の機関・責任で処理し、国家から独立して意志を形成すること)および「住民自治」(住民が行政需要を自らの意思・責任によって充足し、意志形成において住民が政治的に参加すること)であるとされている。