かつての建築基準法第20条第1項第2号及び第3号においては、高さ60m以下の建築物のうち、比較的大規模なものを第2号、中規模なものを第3号、小規模なものを第4号に区分し、このうち第3号では、
・木造建築物で3階以上、延面積500平方メートル以上、高さが13m、もしくは軒の高さが9mを超えるもの
・木造以外の構造で2階建て以上、延面積200平方メートル以上
等の建築物について、限界耐力計算又は許容応力度計算等の構造計算を必要としていたが、2022(令和4)年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」により建築基準法が抜本的に改正され、60m以下の建築物は、新たに「新2号物件」「新3号物件」等に規定され、規制内容が再編成されている。
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
木造
建物の主要な部分を木材とした建築構造のこと。
木造の工法は、大きく分けて「在来工法」「伝統工法」「枠組壁工法」に分類されている。
限界耐力計算
2000(平成12)年の建築基準法改正において、それまでの仕様を審査対象とする許容応力度計算の体系と別に、地震や台風に耐えうる性能を審査する体系として「限界耐力」の概念とともに採用された(同法施行令第81条第2項第1号ロ及び82条の5)。
地震時の建築物の変形を算出し、その変形に基づいて建築物の固有周期、減衰性、高さ方向の加速度の分布等を算出し、建築物をモデル化した上で、建築物の存在期間中(50年程度)に一度は遭遇する可能性の高い積雪、暴風、地震による外力を受けて損傷しないか(「損傷限界耐力」を有しているか)と、極めてまれに発生する大規模な地震による外力によって倒壊または崩壊しないか(「安全限界耐力」を有しているか)を検証する。
許容応力度計算や仕様に対する規制に比べ、複雑な計算を要する一方で、安全率を低くすることが可能であるため、経済性、自由度に優れているとされる。一方で、超高層建築物に用いられる時刻歴応答解析に比べると、単純化したモデルを使用しているという面がある。
限界耐力計算をする場合でも、耐久性等関係規定による規制(例えば、構造体力上主要な部分における腐食・腐朽措置等)は守られなければならないほか、都道府県知事または指定構造計算適合性判定機関による構造計算適合性判定を受けることが義務付けられている。
構造計算
構造物に関して、自重、地震、強風などの加重によって発生する応力や変形を計算することをいう。その結果に基づいて構造物の安全性等を判断する。
建築確認申請に当たっては、構造や規模に応じて定められている一定の建物について、構造計算書を添付して、構造計算適合性の判定を受けなければならない。この場合の計算方法や、想定する加重、必要とする耐力などは、建物の構造、規模、用途等によって異なる。
なお、構造計算の適合性の確保を含めて建築物の構造をデザインする業務を構造設計と言い、建築士が責任を負うべき重要な業務のひとつとされている。耐震設計もこれに含まれる。
新2号物件
建築物の建築等に関する申請および確認について定めた、建築基準法第6条第1項および構造耐力について定めた第20条第1項は、2022(令和4)年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」により抜本的に改正された。これにより、高さ60m以下の建築物のうち、平屋かつ延面積200平方メートル以下の建築物以外の建築物(一定規模以上の建築物)は、構造によらず、また、都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区等内であるかこれらの区域外であるかに関わらず、構造規定および省エネ基準の審査が必要になった。具体的には、木造2階建て住宅や木造の200平方メートル超の平屋建て住宅について、新制度では、構造関係規定等の図書や省エネ関連の図書が必要となる。これらの小規模な建築物は、改正前の同項第4号に該当するため、「4号物件」と呼ばれ、確認申請書の図書の一部の提出が省略可能であった(「4号特例」)が、改正法により省略は認められなくなった。
改正法は2025(令和7)年4月より施行されている。
新3号物件
建築物の建築等に関する申請および確認について定めた建築基準法第6条第1項および構造耐力について定めた第20条第1項は、2022(令和4)年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」により抜本的に改正され、高さ60m以下の建築物のうち、平屋かつ延面積200平方メートル以下の建築物以外の建築物(一定規模以上の建築物)は、構造によらず、構造規定に関する審査が必要になった。
その中でも新2号物件に比して小規模な、木造平屋建てかつ延面積200平方メートル以下の建築物については、新3号物件と位置付けられ、都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区等内である場合には、建築確認・検査の対象となるものの、確認申請に際して図書の提出が一部省略可能とされた。
小規模な建築物については、改正前の同項第4号に定められる4号に該当するため「4号物件」と呼ばれ、確認申請書の図書の一部の提出が省略可能であったが(「4号特例」)、改正法においては、新3号により省略を認める制度が存続された。
改正法は2025(令和7)年4月より施行されている。
関連用語
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新3号物件
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建築物の建築等に関する申請および確認について定めた建築基準法第6条第1項および構造耐力について定めた第20条第1項は、2022(令和4)年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」により抜本的に改正され、高さ60m以下の建築物のうち、平屋かつ延面積200平方メートル以下の建築物以外の建築物(一定規模以上の建築物)は、構造によらず、構造規定に関する審査が必要になった。
その中でも新2号物件に比して小規模な、木造平屋建てかつ延面積200平方メートル以下の建築物については、新3号物件と位置付けられ、都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区等内である場合には、建築確認・検査の対象となるものの、確認申請に際して図書の提出が一部省略可能とされた。
小規模な建築物については、改正前の同項第4号に定められる4号に該当するため「4号物件」と呼ばれ、確認申請書の図書の一部の提出が省略可能であったが(「4号特例」)、改正法においては、新3号により省略を認める制度が存続された。
改正法は2025(令和7)年4月より施行されている。
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エネルギー消費性能の表示
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建築物の所有者が、その所有する建築物について、省エネ基準に適合する旨の認定を受け、エネルギー消費性能を表示することをいう。建築物省エネ法に基づく制度で、2016年4月1日から施行。
省エネ性能の表示は、当該建物の設計、一次エネルギー消費量の基準、一次エネルギー消費量からの削減率、両者の関係図、省エネ基準への適合などを記載することによって行なう。BELSはその評価のしくみのひとつである。