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住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係
読み:じゅうたくせいのうひょうかしょとうけおいけいやく・ばいばいけいやくのかんけい

住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)第6条では、住宅性能評価書を交付された新築住宅については、住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま請負契約売買契約の契約内容になる場合があると規定している。この規定により注文者保護・買主保護が図られている。

この品確法第6条の具体的な内容は、次の1.から5.のとおりである。

1.請負契約を締結したとき
請負人が、設計住宅性能評価書(またはその写し)を請負契約書に添付した場合には、請負人はその評価書(またはその写し)に表示された性能を有する住宅の建設工事を行なうことを注文者に対して契約したものとみなされる(同法第6条第1項)。
なお、設計住宅性能評価書(またはその写し)を請負契約書に添付しないで、注文者に設計住宅性能評価書(またはその写し)を交付しただけの場合であっても同様である。

2.新築住宅の建設工事の完了前に、新築住宅の売買契約を締結したとき
売主が、設計住宅性能評価書(またはその写し)を売買契約書に添付した場合には、売主はその評価書(またはその写し)に表示された性能を有する住宅を買主に引き渡すことを契約したものとみなされる(同法第6条第2項)。
なお、建設住宅性能評価書(またはその写し)を売買契約書に添付しないで、買主に設計住宅性能評価書(またはその写し)を交付しただけの場合であっても同様である。

3.新築住宅の建設工事の完了後に、新築住宅の売買契約を締結したとき売主が、建設住宅性能評価書(またはその写し)を売買契約書に添付した場合には、売主はその評価書(またはその写し)に表示された性能を有する住宅を買主に引き渡すことを契約したものとみなされる(同法第6条第3項)。
なお、建設住宅性能評価書(またはその写し)を売買契約書に添付しないで、買主に建設住宅性能評価書(またはその写し)を交付しただけの場合であっても同様である。

4.事例による検討
例えば、新築住宅の建設工事の請負人が、設計住宅性能評価書の写しを注文者に渡したにもかかわらず、その評価書の性能よりも劣るような住宅を建設した事例を想定しよう。
この事例では、住宅品質確保法第6条第1項の規定により、評価書の性能を持つ住宅を建設することを請負人が契約したのと同じである。従ってこの事例では、請負人は明らかに請負契約に違反したことになるので、請負人には民事上の責任(具体的には瑕疵担保責任など)が発生する。よって注文者は民事訴訟を提起して、請負人の責任を追及できることになる。

5.反対の意思表示を契約書に記載した場合の取扱い
ただし、こうした住宅品質確保法第6条(第1項から第3項)の規定は、請負人や売主が契約書において反対の意思表示を文章で明記した場合には適用されないことになっている(同条第4項)。
例えば、請負契約書において「請負人は、交付した設計住宅性能評価書に表示された性能を有する住宅を建設する義務を負うものではない」と記載されている場合には、品確法第6条第1項は適用されない扱いとなる。

なお、こうした品確法第6条(第1項から第3項)の規定は、既存住宅の売買契約については適用されない扱いとなっていることに注意したい(既存住宅とは、建設工事完了後1年以上が経過した住宅や、建設工事完了後1年以内に人が住んだことがある住宅のことである(品確法第2条))。

住宅の品質確保の促進等に関する法律

住宅の性能の表示基準を定めるとともに、住宅新築工事の請負人および新築住宅の売主に対して、住宅の一定部位について10年間の瑕疵担保責任を義務付けることにより、住宅の品質確保をめざす法律。「品確法」ともいう。 主な内容は次のとおりである。 1.住宅性能評価書 国土交通大臣により登録を受けた評価専門会社等(これを登録住宅性能評価機関という)に依頼することにより、住宅性能評価書を作成することができる(同法第5条)。住宅性能評価書には、設計図等をもとに作成される設計住宅性能評価書と、実際に住宅を検査することにより作成される建設住宅性能評価書がある。 登録住宅性能評価機関は、住宅性能評価書を作成するにあたっては、国土交通大臣が定めた正式な評価基準である「日本住宅性能表示基準」に準拠しなければならない。 住宅の建築請負契約書または新築住宅の売買契約書に、住宅性能評価書を添付した場合等には、請負人や売主はその評価書に表示されたとおりの性能の住宅を、注文者や買主に引き渡す義務を負うことになる。 2.弁護士会による紛争処理・住宅紛争処理支援センター 建設住宅性能評価書が交付された住宅について、請負契約または売買契約に関する紛争が発生した場合には、紛争の当事者は、弁護士会の内部に設置されている指定住宅紛争処理機関に対して、紛争の処理を申し立てることができる。紛争処理を申請する際に当事者が負担する費用は、原則として1万円である。 また、弁護士会による紛争処理を支援する等の目的で、住宅紛争処理支援センターを設置することとされ、「公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター」が国土交通大臣により指定されている。住宅紛争処理支援センターは、弁護士会に対して紛争処理の業務に要する費用を助成するほか、登録住宅性能評価機関から負担金を徴収する等の事務を行なっている。 3.10年間の瑕疵担保責任の義務付け等 新築住宅の売買または建設工事における契約不適合責任(瑕疵担保責任)として、次の義務を定めた。 (1)新築住宅の「構造耐力上主要な部分」および「雨水の浸入を防止する部分」の契約不適合(瑕疵)について、売主・工事請負人は、注文者に住宅を引き渡した時から10年間、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負う。 (2)契約によって、(1)の瑕疵担保期間を20年以内に延長することができる。 この特例は強行規定であり、特約によって責任を免れることはできない。

品確法

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称。住宅の性能の表示基準を定めるとともに、住宅新築工事の請負人及び新築住宅の売主に10年間の瑕疵担保責任を義務付けるなどを規定している。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」を参照。

住宅性能評価書

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)にもとづき、住宅性能の評価結果を表示した書面のこと。 品確法では、住宅性能評価書を作成することができる機関を登録住宅性能評価機関だけに限定しており、評価の方法に関して日本住宅性能表示基準と評価方法基準という2種類の基準を法定している(品確法第5条)。 住宅性能評価書には、設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の2種類が存在する。 さらに後者は新築住宅の建設住宅性能評価書と既存住宅の建設住宅性能評価書に区分される。 これらの住宅性能評価書は、すべて国土交通大臣が定めた日本住宅性能表示基準に従い、かつ評価方法基準に準拠して作成される必要がある。 住宅品質確保法では、このような住宅性能評価書を交付された新築住宅については、住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま請負契約や売買契約の契約内容になる場合があると規定しており、この規定により注文者保護・買主保護が図られている(詳しくは「住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係」へ)。 また、建設住宅性能評価書が交付された住宅については、指定住宅紛争処理機関に対して、紛争処理を申請することができるとされている(品確法第62条)。

請負契約

当事者の一方がある仕事を完成することを、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことをそれぞれ約束する契約。例えば、住宅の建築工事、洋服の仕立て、物品の運搬などの契約がこれに該当する。 請負契約の目的は、仕事の完成であって労務の供給ではないから、仕事の目的物が定まっていて、通常は、目的物を引き渡すことで仕事が完成する。 請負契約については民法に一般的な規定がある。また、たとえば建設工事の契約に関しては建設業法、運送契約については商法等のような特別法の適用がある。 民法は、 1)請負契約による報酬は目的物の引渡しと同時に支払わなければならないこと 2)引き渡した目的物が契約不適合の場合には、注文者は、補修等の追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、契約解除をすることができること(ただし、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図等によって生じた不適合を理由にすることはできない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。) 3)契約不適合による請求等をするためには、原則として、不適合を知った時から一年以内にその事実を通知しなければならないこと 4)請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できること などを定めている。 なお、民法には、請負人の担保責任の存続期間について特別の定めがあったが、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって削除された。ただし、住宅の新築工事の請負に関しては、特定の部位についての契約不適合責任の存続期間は10年とされている(住宅の品質確保の促進等に関する法律)。

売買契約

当事者の一方が、ある財産権を相手方に移転する意思を表示し、相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。 売買契約は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)。 また、売買契約は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。 さらに、売買契約は財産権を移転する契約であるが、その対価として交付されるのは金銭でなければならない(金銭以外の物を対価として交付すると「交換契約」となってしまう)。 当事者の双方の意思の合致により売買契約が成立したとき、売主には「財産権移転義務」が発生し、買主には「代金支払義務」が発生する。両方の義務の履行は「同時履行の関係」に立つとされる。

設計住宅性能評価書

登録住宅性能評価機関が設計図等にもとづいて作成した住宅性能評価書を「設計住宅性能評価書」という(住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第6条、同法施行規則第3条)。 住宅品質確保法では、設計住宅性能評価書を交付された新築住宅については、設計住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま請負契約や売買契約の契約内容になる場合があると規定しており、この規定により注文者保護・買主保護が図られている(詳しくは「住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係」へ)。 このような設計住宅性能評価書が作成される手順はおよそ次のとおりである。 1.作成の依頼 新築住宅の請負人または注文者(もしくは新築住宅を売却する売主または買主)が、登録住宅性能評価機関に対して、設計住宅性能評価書の作成を依頼する(同法施行規則第3条)。 この評価書作成の費用は10万円から30万円程度といわれているが、その費用は請負人または注文者(もしくは売主または買主)が負担することになる。 なお既存住宅(建設工事完了後1年以上が経過した住宅や、建設工事完了後1年以内に人が住んだことがある住宅のこと)については、設計住宅性能評価書の作成を依頼することができない。 2.必要な書類の提出 依頼者は、登録住宅性能評価機関に対して、設計住宅性能評価書を作成するために必要な関係書類を提出する。 この依頼者が提出すべき書類は、配置図・仕様書・各階平面図など非常に多岐にわたる(提出書類は国土交通省告示「設計住宅性能評価のために必要な図書を定める件」により定められている)。 3.設計住宅性能評価書の作成 登録住宅性能評価機関は提出された多数の書類にもとづき、国土交通大臣が定めた基準に準拠して、新築住宅の性能を評価し、設計住宅性能評価書を作成する(このとき評価する項目の詳細は「日本住宅性能表示基準」へ)。 このように設計住宅性能評価書は、あくまで設計図等の書面のみにもとづく評価結果であり、現地で住宅を検査した結果にもとづく評価ではない。 そのため、請負人・注文者(もしくは売主・買主)が、検査結果にもとづく住宅性能評価書の作成を希望する場合には、登録住宅性能評価機関に対して建設住宅性能評価書の作成を別途依頼する必要がある(同法施行規則第5条)。 このようにして、依頼者の費用負担で作成された設計住宅性能評価書を、実際に請負契約書・売買契約書に添付等するかどうかは請負人・売主の自由に委ねられている(同法第6条)。

売主

不動産の売買契約において、不動産を売る人(または法人)を「売主」という。 また不動産広告においては、取引態様の一つとして「売主」という用語が使用される。 この取引態様としての「売主」とは、取引される不動産の所有者(または不動産を転売する権限を有する者)のことである。

建設住宅性能評価書

登録住宅性能評価機関が、実際に住宅を検査することにより作成した住宅性能評価書を「建設住宅性能評価書」という(住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第6条、同施行規則第5条)。 品確法では、建設住宅性能評価書を交付された新築住宅については、建設住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま売買契約の契約内容になる場合があると規定しており、この規定により買主保護が図られている(詳しくは「住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係」へ)。 新築住宅について建設住宅性能評価書が作成されるには、「設計住宅性能評価書の作成」「建設住宅性能評価書の作成の申請」「検査の実施」「建設住宅性能評価書の作成」という過程を経る必要がある(詳しくは「新築住宅の建設住宅性能評価書」へ)。 また、既存住宅について建設住宅性能評価書が作成されるには、「建設住宅性能評価書の作成の申請」「現況検査」「個別性能評価」「建設住宅性能評価書の作成」という過程を経る必要がある(詳しくは「既存住宅の建設住宅性能評価書」へ)。 これらの建設住宅性能評価書に記載されるべき事項については、国土交通大臣が基準を定めている(詳しくは「日本住宅性能表示基準」へ)。 なお、建設住宅性能評価書が交付された住宅については、原則として1万円の費用負担で弁護士会に紛争処理を申請することができる(詳しくは「指定住宅紛争処理機関」へ)。

瑕疵担保責任

売買契約や請負契約の履行において、引き渡された目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合に、売主・請負人が買主・注文者に対して負うこととなる責任。債務不履行により生じる責任のひとつで、目的物が特定物(その固有性に着目して取引され代替性がない)である場合の「契約不適合責任」と同義である。 瑕疵担保責任を負わせるためには、買主・注文者は、売主・請負人に対して、履行の追完請求(補修等の実施請求)、代金の減額請求、報酬の減額請求、損害賠償請求または契約解除権の行使をしなければならない。 なお、住宅の品質を確保するため、新築住宅の瑕疵担保責任について「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく特別の定めがある。詳しくは「売主の瑕疵担保責任(品確法における~)」及び「請負人の瑕疵担保責任(品確法における~)」を参照。