演劇・音楽・工芸技術などの無形の文化的所産で、わが国にとって歴史上または芸術上価値の高いものを「無形文化財」という(文化財保護法第2条)。
具体的には、歌舞伎・能楽・文楽などの芸能、陶芸・染織などの工芸技術がこれに該当する。
無形文化財のうち重要なものは、重要無形文化財に指定されている(文化財保護法第71条)。
文化財保護法
文化財を保存・活用することを目的とし、従来の「国宝保存法」「史跡名勝天然記念物保存法」などを統合して1950(昭和25)年に制定された法律。
文化財保護法は、文化財を「有形文化財」「無形文化財」「民俗文化財」「記念物」「文化的景観」「伝統的建造物群」の6種類に分けて定義している。
そして、文化財のうち重要なものを、「国宝」「重要文化財」「重要無形文化財」「重要有形民俗文化財」「重要無形民俗文化財」「史跡」「名勝」「天然記念物」等として国が指定し、特に保護することとしている。
そのほか、主に明治以降の建造物を「登録有形文化財」として登録し保護する、市町村が決定した「伝統的建造物群保存地区」について特に重要なものを国が「重要伝統的建造物群保存地区」に選定する、などの制度を定めている。
土地に埋蔵されている文化財(埋蔵文化財)については、周知の埋蔵文化財包蔵地を土木工事等の目的で発掘しようとする場合には、着手する日の60日前までに文化庁長官へ届け出なければならない、と定めてその保護を図っている(文化財保護法第93条)。そして各市町村では、その周知の徹底を図るため、「遺跡地図」「遺跡台帳」の整備などに努めている。
さらに、埋蔵文化財に関連して、土地の所有者・占有者は、出土品の出土等により貝塚・古墳・住居跡などの遺跡を発見した場合には、その現状を変更することなく、遅滞なく文化庁長官に対して届け出なければならない、とされている(同法第96条)。
なお、地方公共団体は、条例を制定して、区域内に存する文化財のうち重要なものを指定して、その保存および活用のため必要な措置を講じている(同法第182条)。
重要無形文化財
無形文化財のうち重要なものとして、文部科学大臣が官報に告示することによって指定したものを「重要無形文化財」という(文化財保護法第71条)。
また、これらの重要無形文化財に指定される芸能を高度に体現しているものや、重要無形文化財に指定される工芸技術を高度に体得しているものは「重要無形文化財保持者」または「重要無形文化財保持団体」として認定され、国が助成を行なっている。
このうち、「重要無形文化財保持者」であって「各個認定」を受けている者は、一般に「人間国宝」と呼ばれている。