水質汚濁防止法によって都道府県知事が毎年度実施している地下水質の測定調査をいう。
この地下水モニタリングは、土壌汚染対策法に定める土壌汚染状況調査を実施する対象となる土地を確定するうえで重要な役割を担っている(詳しくは「健康被害が生ずる恐れのある土地の調査」)。
この地下水モニタリングは、次の3種類の調査で構成され、その結果は毎年公表されている。
1.概況調査
各地域の地下水質の状況を把握するための井戸の水質の調査。原則として前年度の対象井戸とは異なる井戸を調査する。
2.汚染井戸周辺地区調査
概況調査等によって発見された地下水汚染がある場合に、その汚染範囲の拡大・縮小を確認するために行なわれる調査。
3.継続監視調査
汚染井戸周辺地区調査により水質汚染が確認された地域に関して、汚染を継続的に監視するために行なう水質の調査。
水質汚濁防止法
公共用水域(河川・湖沼・沿岸等)および地下水の水質汚染を防止するために、1970(昭和45)年に制定された法律のこと。特に、1989(平成元)年に地下水に関する規定が追加されて以降は、この法律が地下水汚染に関して中心的な役割を担っている。 水質汚濁防止法の概要は次のとおり。
1.生活環境に被害を生ずる恐れがあるような汚水等を排出し、または有害物質を使用する等の理由により、水質汚染を招く危険のある施設を「特定施設」と定義する(水質汚濁防止法第2条)。 2.特定施設を設置する工場・事業場等を「特定事業場」と定義する(同法第2条)。 3.特定施設を設置する者・使用廃止する者に特定施設設置等の届出を義務付ける(同法第5条等)。 4.特定事業場に、排水基準の遵守を義務付ける(同法第3条)。 5.指定地域内の特定事業場に、水質汚濁の総量規制を実施する(同法第4条の5)。 6.特定事業場に、排出水および特定地下浸透水の汚染状態の測定を義務付ける(同法第14条)。 7.有害物質を使用する特定事業場において、特定地下浸透水が有害物質を含んでいるとき、その特定地下浸透水を地下に浸透させることを禁止する(同法第12条の3)。 8.上記7.に違反して、特定事業場の事業者が、有害物質を含む特定地下浸透水を地下に浸透させた場合において、都道府県知事は地下水の水質浄化を命令することができる。これを地下水の水質浄化の措置命令という(同法第14条の3、同法施行規則第9条の3、同法施行規則別表)。 9.都道府県知事に地下水の水質を常時監視することを義務付けた。これにより1989(平成元)年以降、毎年全国の約1万2,000の井戸について水質調査が実施されている。これを地下水モニタリングという(同法第15~17条)。 10.工場・事業場から有害物質を含む水を排出し、または有害物質を含む水を地下に浸透させた場合には、工場・事業場の事業者に過失がなくても、工場・事業場の事業者に健康被害の損害賠償の責任を負わせる(同法第19~第20条の3)(詳しくは「地下水汚染の無過失責任」へ)。
土壌汚染対策法
土壌汚染の状況を把握し、その汚染による健康被害を防止するための法律。2002(平成14)年に制定された。その後、09(平成21)年にさらなる課題への対応のために、17(平成29)年に土壌汚染リスクの管理を適切に実施するために、それぞれ改正されている。
土壌汚染対策法で定められている主な内容は次のとおりである。
1)土壌汚染状況調査の実施次の3種類の調査を定め、その実施を義務付ける。i)使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の調査ii)土壌汚染の恐れがある土地の形質の変更が行われる場合の調査iii)土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがある土地の調査
2)区域の指定と措置の義務づけ土壌の汚染状態が指定基準を超過した場合に次の2種類の区域を指定し、それぞれの区域について必要な措置を定める。(1)要措置区域土壌汚染の摂取経路があり健康被害が生じる恐れがあるため、汚染の除去等の措置が必要な区域。この区域に指定されると、健康被害を防止するために必要な措置を講じなければならない。また、土地の形質変更は原則禁止される。(2)形質変更時要届出区域土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じる恐れがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域(摂取経路の遮断が行われた区域を含む)。この区域では、土地の形質変更時に都道府県知事に計画を届け出なければならない。
3)汚染土壌の搬出等に関する規制i)要措置区域及び形質変更時要届出区域内の土壌の搬出における事前届出、計画の変更命令、運搬基準の遵守ii)汚染土壌に係る管理票の交付及び保存の義務iii)汚染土壌の処理業の許可制度
なお、土壌汚染の発生を防ぐための対策は、土壌汚染対策法のほか、水質汚濁防止法による有害物質を含む汚水等の地下浸透防止措置、廃棄物の処理および清掃に関する法律による有害物質を含む廃棄物の適正処分措置などによって対応が図られている。また、ダイオキシン類による汚染対策については、ダイオキシン類対策特別措置法によって別途の措置が定められている。
土壌汚染状況調査
土壌について、人の健康に被害を生ずる恐れが大きいものとして指定された26種類の物質(特定有害物質)による汚染状況を把握するための調査。土壌汚染対策法に基づいて実施される。
土壌汚染状況調査には、実施が必要な場合に応じて次の3種類がある。
1)使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場または事業場の敷地であった土地の調査2)土壌汚染の恐れがある土地の形質の変更が行なわれる場合の調査3)土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがある土地の調査
土壌ガス調査・土壌溶出量調査・土壌含有量調査で構成されるが、その方法は、調査の目的、調査する特定有害物質の性質などに応じて基準が定められている。また、実施主体は土地所有者等で、調査の実施は指定調査機関が担当する。
健康被害が生ずる恐れのある土地の調査
土壌の特定有害物質による汚染により人の健康に係る被害が生ずる恐れがある土地について実施する汚染状況の調査をいう。土壌汚染対策法に基づく調査の一つで、都道府県知事の命令によって、当該土地の所有者等が指定調査機関に調査させる。
調査を命じるのは、次のいずれかの要件に当てはまる土地である。ただし、既に汚染の除去等の措置が講じられている土地、鉱山の敷地等については、調査命令の対象とはならない。
イ 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が基準に適合しないことが明らかで、それに起因して現に地下水の水質の汚濁が生じ、又は生ずることが確実であると認められ、かつ、地下水の利用が予想される土地。
ロ 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が基準に適合しない恐れがあり、それに起因して現に地下水の水質の汚濁が生じていると認められ、かつ、地下水の利用が予想される土地。
ハ 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が基準に適合せず、又は適合しない恐れがあると認められ、かつ、当該土地が人が立ち入ることができる土地。
関連用語
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汚染井戸周辺地区調査
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地下水の汚染が明らかとなった場合に、その汚染範囲を確認するとともに汚染原因の究明に資するために実施する調査。土壌汚染が判明した場合にも、必要に応じて実施される。水質汚濁防止法の規定に基づく地下水モニタリング調査の一つである
汚染物質の種類、帯水層の構造、地下水流向・流速等を勘案して、汚染範囲全体が含まれるように複数地点を設定して実施される。この場合、利水影響が大きい井戸を優先して選定し、また飲用井戸は必ず調査することとされている。
汚染井戸周辺地区調査によって把握された汚染地域については、「継続監視調査」の対象に移行し、特定地点について年1回以上汚染状態を調査することとなる。また、継続監視調査を数年間実施したあと、再び汚染井戸周辺地区調査を実施して、汚染範囲の確認などを行なうこととされている。