一般建築物は建築後いつでも使用を開始することができ、またリフォーム等の工事をしている最中にも通常の使用を続けることができる。
しかし、特殊建築物等については、その避難設備(廊下・階段・出入口・消火設備・排煙設備等)に関係する工事を行なう場合や、建物を新築する場合には、原則として建築主事から「検査済証」を交付された後でなければ、建築物の使用を開始することができないとされている(建築基準法第7条の6)。
これは特殊建築物等では、防災上特に配慮が必要なので、避難設備に関係する工事が進行中の時期や、避難設備そのものがまだできていない時期には、原則として人に使用させないということである。
ただし「検査済証」の交付の前であっても、次の2つのケースでは仮に使用が許される。
1.特定行政庁が防火上・安全上支障がないと認めて承認をした場合
2.建築主が工事完了検査を申し出てから7日間が経過した場合
一般建築物
建築基準法において、特殊建築物と、大規模建築物とのどちらにも該当しない建築物のこと。
リフォーム
建物の構造強化、機能向上などを図るための改修をいう。リフォームの種類には、耐震化、バリアフリー化、省エネルギー化、耐久性向上化などのための工事がある。
リフォームへのニーズは、既存建物の有効活用、既存住宅流通の活性化、良質な住宅ストックの形成などの要請によって、今後高まっていくと考えられている。また、これを促進するためのリフォーム減税が措置されている。
一方で、リフォームは、その目的や内容が多様で幅広いこと、リフォーム前の建物の状態がさまざまであることなどの特徴がある。そのため、リフォームのための技術・技能や費用を標準化するのが難しい。また、リフォームによって高まるであろう不動産価値を評価する手法は十分に確立されているとは言い難く、リフォームを不動産価格に反映するしくみも十分ではない。リフォームに対するニーズに応えるためには、これらの課題に取り組まなければならない。
特殊建築物
建築基準法において、一般の建築物よりも強い制限を課す建築物。「学校(専修学校及び各種学校を含む)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物」とされている。
特殊建築物に課す制限は、防火、衛生などの必要に応じて、その用途、床面積、階数などを特定して適用され、一律ではない。適用される制限の内容に即して、対象となる建築物や建築部分を確認する必要がある。
なお、耐火建築物等としなければならない特殊建築物の用途は、次のように分類されている。
(1)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
(2)病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等(幼保連携型認定こども園を含む)
(3)学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場
(4)百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗(床面積が10平方メートル以内のものを除く)
(5)倉庫
(6)自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオ
建物
民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。
具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。
建築主事
建築確認を行なう権限を持つ、地方公務員のこと。
建築主事となるには、一定の資格検定に合格しなければならない。
その後、国土交通大臣の登録を受け、知事または市町村長の任命を受けることが必要である。
都道府県には必ず建築主事が置かれる。また政令で定める人口25万人以上の市でも、建築主事が必ず置かれる。それ以外の市町村では任意で建築主事を置くことができる(建築基準法第4条)。
検査済証
建築工事が完了した建築物について、建築主事等は、検査の申請を受理した日から7日以内に、当該建築物について工事完了検査を行なわなければならない。
この工事完了検査に合格した場合に、建築主事等が建築主に交付する書面が「検査済証」である。
建築物
建築基準法では「建築物」という言葉を次のように定義している(建築基準法第2条第1号)。 これによれば建築物とは、およそ次のようなものである。 1.屋根と柱または壁を有するもの 2.上記に付属する門や塀 3.以上のものに設けられる建築設備 上記1.は、「屋根+柱」「屋根+壁」「屋根+壁+柱」のどれでも建築物になるという意味である。 なお、地下街に設ける店舗、高架下に設ける店舗も「建築物」に含まれる。
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
特定行政庁
建築基準行政において、建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長を、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。
人口が25万人以上の市の市長は原則として特定行政庁であるほか、それ以外の市町村長も建築主事を置くことによって特定行政庁となる。
建築主事は建築確認等の業務を行なうが、違反建築物に対する措置等は特定行政庁の業務とされている。
工事完了検査(完了検査)
建築主は、工事を完了した日から4日以内に、建築主事に「工事完了検査」を申し出る必要がある。この申し出を受けた建築主事は申し出から7日以内に建築物を検査する必要がある。
この検査の結果、建築物が建築基準法に適合している場合は、建築主事は「検査済証」を建築主に交付しなければならない。