市街化調整区域で建築物の建築または第1種特定工作物の建設を目的とする開発行為を行なう場合に適用される開発許可の基準。
1.趣旨
都市計画法は、開発行為(建築物の建築や特定工作物の建設を目的とする土地の区画形質の変更のこと)を行なうためには、原則として知事(指定都市等では市長)の開発許可を受ける必要があると定めている。
開発許可を与えるか否かの基準は次の2つに分けて定められている。
A)全国のすべての地域に適用される基準で、「全般的許可基準」または「技術的基準」といわれ、公共施設の整備、防災上の措置などの水準に関して審査するもの(都市計画法第33条、詳しくは「開発許可の基準(全般的許可基準)」を参照)
B)市街化調整区域内でのみ適用される基準で、「立地基準」と言われ、立地の適正性を判断するためのもの(都市計画法第34条)
このうちB)の基準は、市街化調整区域における市街化を抑制するべく定められているもので、宅地の水準を判断するA)の基準と性格を異にする。また、市街化調整区域内での開発行為に対する開発許可ついては、A)およびB)の両方が適用されることとなる。
2.市街化調整区域内の開発許可基準(立地基準)の概要
次の開発行為については許可される。
1)日常生活のため必要な物品の販売等
開発行為を行なう区域(開発区域)の周辺地域の居住者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗、事業場などのための開発行為
2)農林漁業用の建築物
市街化調整区域内で生産される農林水産物の処理・加工のため必要な建築物・第1種特定工作物のための開発行為。
3)鉱物資源・観光資源の利用など
ア 市街化調整区域内に存する鉱物資源、観光資源などの有効利用上必要なもののための開発行為。温度・湿度・空気等について特別の条件を必要として、市街化区域内での建築・建設が困難なもののための開発行為。
イ 市街化調整区域内の工場施設と密接な関連を有する事業用の建築物・第一種特定工作物
ウ 火薬庫であって、市街化区域内で建築建設することが不適当なもののための開発行為。
4)市街化区域内での建築・建設が困難・不適当なもの
市街化区域内の建築・建設が困難不適当なものとして定められる建築物・第一種特定工作物のための開発行為。道路管理施設、休憩所、ガソリンスタンド、火薬類製造所が指定されている。
5)地区計画等の区域
地区計画または集落地区計画の区域であって、地区整備計画・集落地区整備計画が定められているとき、その計画に即して行なわれる開発行為。
6)条例を定めることによって限定的に認めるもの
ア 自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成している地域で、おおむね50以上の建築物(市街化区域内を含む)が連たんしている地域のうち条例で指定する区域において行なう開発行為で、環境保全上支障がある用途など条例で定めるもの以外のためのもの。ただし、優良農地、優れた風景のため保全すべき区域、災害発生の恐れがある区域は指定できない。
イ 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、都道府県の条例で、区域、目的又は予定建築物等の用途を限って定められたもの。ただし、優良農地、優れた風景のため保全すべき区域、災害発生の恐れがある区域は指定できない。
7) 開発審査会の議を経て都道府県知事が個別的に認めるもの
都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進する恐れがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為。たとえば、分家住宅、社寺仏閣、地区集会場、有料老人ホーム、優良田園住宅などのための開発行為があり得る。
市街化調整区域
都市計画によって定められた、市街化を抑制すべき区域をいう。
一定の都市計画区域について、都道府県知事が区域区分を決定することによって定まる。
市街化調整区域内で土地の区画形質の変更をする場合には、原則として許可を要する(開発許可)。そして開発許可に当たっては特別な事情にある場合を除いて住宅のための宅地造成等は許可されないなど、市街化調整区域内での開発・建築行為を抑制する規制が適用される。
建築
「建築物を新築し、増築し、改築し、または移転すること」と定義されている(建築基準法第2条第13号)。
開発行為
都市計画法上の開発許可の対象となる行為のこと。
1.趣旨
都市計画法では、無秩序な開発を規制するために、宅地開発に対しては知事(または市長)の許可が必要であると定めており、これを開発許可という(都市計画法第29条)。この開発許可の対象となる行為が「開発行為」である。
2.定義
開発行為とは、正確には「主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更」と定義されている(都市計画法第4条第12項)。
ここで「特定工作物」と「土地の区画形質の変更」の意味については、おおよそ次のように定義されている。
1)特定工作物
コンクリートプラント、ゴルフコース、1ha以上のテニスコートなどのこと(詳しくは特定工作物へ)。
2)土地の区画形質の変更
宅地造成、道路の新設などを伴う土地区画の変更、農地から宅地への変更などのこと(詳しくは土地の区画形質の変更へ)。
2.の定義に該当しない行為は、開発行為ではないので、開発許可を必要としない。例えば、1ha未満のテニスコートの建設のための宅地造成は、開発行為に該当しない。また建築物を建築する目的で、登記簿上で土地を合筆することは「土地の区画形質の変更」ではないので、開発行為に該当しない。
開発許可
宅地造成等(開発行為)を行なう際に必要とされる許可のこと。都市計画法に基づく制度である。
1.趣旨
都市計画法では、無秩序な開発を規制するために、開発許可の制度を設けている。一定規模以上の開発行為を行なうためには、知事(指定都市等では市長)から開発許可を受ける必要がある。
2.開発許可の概要
1)許可の対象は「開発行為」である。
2)開発行為を行なおうとする者は、開発行為に着手する前に知事(指定都市等では市長)の許可を受ける必要がある(都市計画法第29条)。
3)一定の開発行為については、開発許可を受ける必要がない。
4)知事等が開発許可を与えるか否かを審査する基準には、全国どこでも適用される全般的許可基準(技術的基準、都市計画法第33条)と、市街化調整区域内の開発行為についての基準(立地基準、都市計画法第34条)とがある。
3.開発行為
開発許可の対象は「開発行為」である。開発行為とは「建築物の建築または特定工作物の建設のために土地の区画形質を変更すること」である(詳しくは「特定工作物」「土地の区画形質の変更」を参照)。
4.開発許可を得る必要がない開発行為
次のような開発行為は開発許可を受けないで行なうことができる。
1)次の面積に達しない開発行為
・東京都の特別区・既成市街地・近郊整備地帯等:500平方メートル未満
・市街化区域:1,000平方メートル未満
・区域区分が定められていない都市計画区域: 3,000平方メートル未満
・準都市計画区域:3,000平方メートル未満
ただしこれらの面積は、特に必要があると認められる場合には、都道府県・指定都市等の条例で「300平方メートル未満」にまで引き下げることができる。
2)市街化調整区域・区域区分が定められていない都市計画区域・準都市計画区域における、農林漁業者の住宅を建築するための開発行為および農林漁業用の建築物を建築するための開発行為
3)公益施設のための開発行為
公益施設は、駅舎、医療施設、小中学校、高校、公民館、郵便局、図書館、墓地、火葬場、と畜場、し尿処理施設、ごみ処理施設、卸売市場など政令で指定するものに限る。
4)国・都道府県・一定の市町村が行なう開発行為
5)都市計画事業の施行として行なう開発行為
6)市街地再開発事業の施行、住宅街区整備事業の施行、土地区画整理事業の施行として行なう開発行為
7)非常災害のため必要な応急措置、通常の管理行為・軽易な行為に該当する開発行為
通常の管理行為・軽易な行為は、仮設建築物の建築、土木事業などに一時的に使用するための第一種特定工作物の建設、車庫・物置その他附属建築物の建築、建築物の増築で増築に係る床面積の合計が10平方メートル以内のもの、建築物の改築で用途の変更を伴わないもの、建築物の改築で改築に係る床面積の合計が10平方メートル以内のもの、主として当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売加工修理等の業務を営む店舗・事業場などの新築(延べ面積が50平方メートル以内)であって当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために行なう開発行為(開発規模が100平方メートル以内に限る)など、政令で指定するものに限る。
5.開発許可の基準
知事(指定都市等では市長)が開発許可を与える場合の基準が定められている。この基準には、全国どこでも適用される全般的な基準(技術基準、都市計画法第33条)と、市街化調整区域内においてのみ適用される基準(立地基準、都市計画法第34条)の2種類がある。市街化調整区域では両方の基準を満たさなければならない。(開発許可基準については「開発許可の基準(全般的許可基準)」「開発許可の基準(市街化調整区域内の許可基準)」参照)
6.都市計画区域・準都市計画区域以外の区域における開発行為
都市計画区域および準都市計画区域以外の区域においてその面積が1万平方メートル以上開発行為を行なう場合は、4の2)〜7)に該当しない限り開発許可を受けなければならない。
都市計画法
都市計画に関する制度を定めた法律で、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として、1968(昭和43)年に制定された。
この法律は、1919(大正8)年に制定された旧都市計画法を受け継ぐもので、都市を計画的に整備するための基本的な仕組みを規定している。
主な規定として、都市計画の内容と決定方法、都市計画による規制(都市計画制限)、都市計画による都市整備事業の実施(都市計画事業)などに関する事項が定められている。
特定工作物
都市計画法における開発許可の対象となる、コンクリートプラント、ゴルフコース、テニスコート、墓園などのこと。 都市計画法では、建築物や工作物をつくる目的で宅地造成などを行なう場合には、開発許可を受ける必要があると定めている(都市計画法第29条)。特定工作物は、この開発許可の対象となる工作物のことであり、次の2種類に区分されている。 1.第一種特定工作物 周辺の地域の環境の悪化をもたらす恐れがある工作物であって、都市計画法施行令第1条第1項に規定されたもののこと。具体的には、コンクリートプラント、クラッシャープラント、危険物の貯蔵または処理に供する工作物である。 2.第二種特定工作物 大規模な工作物であって、都市計画法施行令第1条第2項に規定されたもののこと。具体的には次のものである。 1)ゴルフコース(面積関係なし) 2)1ha以上の野球場、庭球場、陸上競技場、遊園地、動物園その他の運動・レジャー施設 3)1ha以上の墓園
土地の区画形質の変更
都市計画法における開発許可の対象となる宅地造成等のこと。 1.趣旨 都市計画法では、無秩序な開発を規制するために開発許可の制度を設けているが、その開発許可の対象となるのが、「土地の区画形質の変更」である。 「土地の区画形質の変更」とは、宅地造成だけでなく、道路の新設などを伴う土地区画の変更、農地から宅地への変更などを含む広い概念である。ただし、建築確認をうけた建築工事に伴って掘削や基礎打ちをすることは含まれない。 2.具体的な内容 「土地の区画形質の変更」の具体的な運用は、各自治体の条例などで定められているが、一般的には「土地の区画形質の変更」には次の3種類の行為が含まれると解釈されている。 1)土地の「区画」の変更 土地の区画を形成する公共施設(道路・水路など)を新設・廃止・移動することにより、土地の「区画」を変更すること。 2)土地の「形」の変更 土地の盛り土・切り土により、土地の形状を変更すること。 3)土地の「質」の変更 宅地以外の土地(農地・山林など)を、宅地にすること。 単に土地登記簿上で土地を合筆もしくは分筆することは、 「土地の区画形質の変更」には含まれない。また、建築工事と一体と認められる基礎打ちおよび土地の掘削も「土地の区画形質の変更」には含まれない。 「土地の区画形質の変更」の具体的な運用は、各自治体の「開発指導要綱」で定められている場合が多い。また各自治体の条例で定める場合もある。
開発許可の基準(全般的許可基準)
都市計画法における開発許可に関して、どの地域でも適用される技術的な基準のこと。
1.趣旨 都市計画法は、開発行為(建築物の建築や特定工作物の建設を目的とする土地の区画形質の変更のこと)を行なうためには、原則として知事(指定都市等では市長)の開発許可を受ける必要があると定めている。 開発許可を与えるか否かの基準は次の二つに分けて定められている。 A)全国のすべての地域に適用される基準で、「全般的許可基準」または「技術的基準」と言われ、公共施設の整備、防災上の措置などの水準に関して審査するもの(都市計画法第33条) B)市街化調整区域内でのみ適用される基準で、「立地基準」と言われ、立地の適正性を判断するためのもの(都市計画法第34条、詳しくは「開発許可の基準(市街化調整区域内の許可基準)」を参照) A)の基準は宅地の水準を判断するための一般的な基準であって、市街化調整区域における市街化を抑制するべく定められているB)の基準とは性格を異にする。従って、市街化調整区域内での開発行為に対する開発許可ついては、B)だけでなくA)も適用されることとなる。 2.全般的許可基準の概要 「全般的許可基準」は次のとおりである。 1)予定建築物の用途が用途地域などに即していること 予定される建築物等の用途が、用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域などに適合していること。また地区計画が定められていて、地区整備計画が定められているとき(または施設の配置・規模が規定された再開発促進区があるとき)は、予定建築物等の用途などが地区計画等に即していること。 2)公共施設等との用途の配分 公共施設、公益的施設(学校など)、予定建築物の用途の配分が適正であること 3)排水施設、地盤の軟弱な土地等における安全措置 ア 排水路その他の排水施設が、下水を有効に排出し、溢水等の被害が生じないように設計されていること。 イ 地盤の軟弱な土地、がけ崩れや出水の恐れが多い土地などであるときは、地盤の改良、擁壁の設置などの安全上必要な措置が講じられていること。 4)権利者の同意 開発行為を行なう区域(開発区域)内の土地または建築物等につき、工事の実施の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意を得ていること。 5)樹木の保全等、緑地帯等、輸送の便 ア 1ha以上の開発行為では、植物の生育の確保上必要な樹木の保存、表土の保全等の措置が講じられていること。 イ 1ha以上の開発行為では、騒音、振動等による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他の緩衝帯が配置されていること。 ウ 40ha以上の開発行為では、当該開発行為が道路、鉄道等による輸送の便等から見て支障がないこと。 6)公共空地、道路の接続 道路、公園、広場その他の公共空地(消防用貯水施設含む)が環境保全上等で支障がない規模構造で配置されること。開発区域内の主要な道路が、開発区域外の相当規模の道路に接続すること。なお、この基準は、自己居住用の住宅には適用されない。 7)給水施設 水道その他の給水施設が、想定される需要に支障をきたさないこと。なお、この基準は自己居住用の住宅には適用されない。 8)災害危険区域等を含まないこと 「災害危険区域」「地すべり防止区域」「土砂災害特別警戒区域」などの土地を含まないこと(ただし支障がない時は含んでよい)。なお、この基準は、自己居住用の住宅と、自己業務用の建築物・工作物には適用されない。 9)資力信用、工事完成能力 開発許可の申請者に当該開発行為を行なうために必要な資力および信用があること。工事施行者に当該開発行為に関する工事を完成するために必要な能力があること。なお、この基準は、自己居住用の住宅と、一定規模以下の自己業務用の建築物・工作物には適用されない。
有料老人ホーム
高齢者住宅・施設の代表格。老人保健法では、「高齢者を入居させて、入浴、排泄、食事などの介護、食事提供など日常生活の上で必要な便宜を提供する施設」と定義されている。これらのサービスを提供する施設は、すべて有料老人ホームとして都道府県知事に届出が必要で、都道府県による指導・監督を受ける。 契約方法は、入居するときにまとまった一時金を支払う必要のある「利用権方式」と、賃貸住宅に相当する家賃を毎月支払う「賃貸方式」がある。 両方式とも、毎月の管理費や食事代などを支払う他、介護保険の基準以上のサービスや給付対象外のサービスには別途費用が掛かる。有料老人ホームの大半が、利用権方式を採用しているため、事業者の信頼度が重要となる。 なお、一般のマンションと同様に、専有部分や共用部分の持分を不動産として買い取る「分譲方式」もあるが、有料老人ホームの定義から外れるので「分譲型ケア付マンション」などの名称で呼ばれている。 有料老人ホームは、介護サービスの内容によって3種類に分かれている。 1.介護付有料老人ホーム 特定施設入居者生活介護の指定を受けている有料老人ホーム。 介護サービスを担当する看護師や介護士を一定数以上職員として雇用し運営、入居者に対して生活支援サービスから介護サービスまで提供する。 食事提供から介護まで提供できるが、入居対象者は自立した生活ができる自立高齢者から要介護高齢者まで幅広い。要介護高齢者に対しては、必要な介護サービスを必要なだけ提供してくれる。 なお、介護については、そのホームが提供する生活介護を利用する「一般型」と、委託先の介護サービス事業所の介護サービスを利用する「外部サービス利用型」とがある。 2.住宅型有料老人ホーム ホーム内のスタッフが食事などのサービスを提供するのが基本。 介護が必要になった場合は、入居者自身の判断で一般住宅の場合と同じ手続きを行ない、訪問介護など外部の居宅サービスを利用する。 3.健康型有料老人ホーム 食事などの生活支援等のサービスが付いた居住施設。 介護が必要になった場合は入居契約が終了し、基本的に入居者はその施設から退去しなければならない。