建築基準法第20条第1項では、建築物の規模等に応じて求められる構造耐力の基準を定めている。このうち同項第1号に、「高さが60mを超える建築物」についての基準が定められており、この対象となる超高層建築物が「1号物件」と呼ばれる。
1号物件の構造計算においては、時刻歴応答解析等の高度な数理解析の方法によらなければならず、その方法は、技術的基準に適合するものであるとの国土交通大臣の認定を受けなければならない。
また、1号物件の設計は、構造設計一級建築士が行なうか、そうでない場合には、構造設計一級建築士の確認を得なくてはならない。
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
建築物
建築基準法では「建築物」という言葉を次のように定義している(建築基準法第2条第1号)。 これによれば建築物とは、およそ次のようなものである。 1.屋根と柱または壁を有するもの 2.上記に付属する門や塀 3.以上のものに設けられる建築設備 上記1.は、「屋根+柱」「屋根+壁」「屋根+壁+柱」のどれでも建築物になるという意味である。 なお、地下街に設ける店舗、高架下に設ける店舗も「建築物」に含まれる。
構造耐力
建築物には、自重(建築物そのものの重さ)、積載荷重(人間・家具・設備の重さ)、積雪という垂直方向の力がかかり、また地震力・風圧力という水平方向の力がかかる。 これらの垂直方向・水平方向の力に対して、建築物が垂直方向の力を支え、水平方向の力による変形に対抗することができるということを「構造耐力」と呼んでいる。 また、特に水平方向の力による変形に対抗することができるということを「水平耐力」と呼んでいる。 この水平耐力を備えるように筋かいを入れ、または構造用合板などを張った壁は「耐力壁」と呼ばれている。 建築基準法では、すべての建築物が十分な構造耐力を備えるように、詳しい技術的な基準を設けている(建築基準法第20条第1項、建築基準法施行令第36条から第80条の3まで)。 また、木造3階建てなどの建築物については十分な構造耐力を持つことをチェックするために、設計段階で構造計算を行なうことを義務付けている(建築基準法第20条第1項第2号、建築基準法施行令第81条から第99条まで)。
時刻歴応答解析
地震が発生した場合に、ビル等の構造物が揺れ、変形し、損傷する危険性がないかどうかを判定するため、構造物の慣性力、減衰力、復元力を基に、質量と固有周期により単純化した「振動モデル」をつくり、地震動を入力して構造物の安全性を検証する方法。
地震動は、時間とともに変化する地震加速度により表現され、それに対する変位等として表現される構造各部の揺れを解析する。
建築基準法では60m超の超高層建築物の構造計算に義務付けられている。
建築士
建築物の設計、工事監理等を行なう技術者であって、試験に合格して免許を受けた者をいう。建築士法による資格である。
建築士は、設計等を行なうことができる建物の規模、構造、用途によって、一級建築士、二級建築士、木造建築士に分かれている。例えば、延べ面積が千平方メートルを超え階数が二以上の建築物は、一級建築士でなければ設計をしてはならないし、延べ面積が百平方メートル(木造の建築物にあっては三百平方メートル)を超えまたは階数が三以上の建築物は、一級建築士または二級建築士でなければ設計をしてはならない。
また、一級建築士であって、構造設計または設備設計について高度な専門能力を有すると認められた者は、構造設計一級建築士または設備設計一級建築士としてその専門業務に従事することができるとされている。
建築士の資格は法的に保護さていて、例えば、建築確認の申請に当たって提出する設計図書は建築士が作成しないと受理されないし、建築士の免許を受けることなく建築士の名称を用いて業務を行なう者は罰せられる。
なお、建築士の業務分野は、その専門性に応じて、大きく、意匠設計(主として、建築のデザインや設計の総合性の確保を担う)、構造設計(主として、建築物の構造の安全性確保などを担う)、設備設計(主として、建築設備の設計を担う)、監理業務(主として、工事が設計に適合して実施されるための監督などを担う)に分かれている。
関連用語
-
4号物件
-
建築基準法第20条第4号に規定する木造2階建て等の小規模建築物については、都市計画区域外に建築する際には建築確認・検査が不要になるほか、審査省略制度の対象とされている。これを「4号特例」と呼び、これが適用される物件が「4号物件」である。
しかし、2022年に交付された「炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」により、原則としてすべての建築物に省エネ基準への適合が義務付けられるとともに、「4号特例」の縮小が措置され、旧「4号物件」は、木造2階建てと木造平屋建てで延面積200平方メートル超の建築物は「新2号物件」として、木造平屋建てで延面積200平方メートル以下の建築物は「新3号物件」として扱われることとなり、このうち、新2号物件においては、すべての地域で建築確認・検査が必要となり、審査省略制度の対象外となる。
改正法は2025年4月施行予定である。
-
建築士
-
建築物の設計、工事監理等を行なう技術者であって、試験に合格して免許を受けた者をいう。建築士法による資格である。
建築士は、設計等を行なうことができる建物の規模、構造、用途によって、一級建築士、二級建築士、木造建築士に分かれている。例えば、延べ面積が千平方メートルを超え階数が二以上の建築物は、一級建築士でなければ設計をしてはならないし、延べ面積が百平方メートル(木造の建築物にあっては三百平方メートル)を超えまたは階数が三以上の建築物は、一級建築士または二級建築士でなければ設計をしてはならない。
また、一級建築士であって、構造設計または設備設計について高度な専門能力を有すると認められた者は、構造設計一級建築士または設備設計一級建築士としてその専門業務に従事することができるとされている。
建築士の資格は法的に保護さていて、例えば、建築確認の申請に当たって提出する設計図書は建築士が作成しないと受理されないし、建築士の免許を受けることなく建築士の名称を用いて業務を行なう者は罰せられる。
なお、建築士の業務分野は、その専門性に応じて、大きく、意匠設計(主として、建築のデザインや設計の総合性の確保を担う)、構造設計(主として、建築物の構造の安全性確保などを担う)、設備設計(主として、建築設備の設計を担う)、監理業務(主として、工事が設計に適合して実施されるための監督などを担う)に分かれている。