屋根の傾斜の度合い、傾きの角度のこと。
デザイン性のほか、地域によって雨水や雪を適切に落下させるように設計される。また、勾配によって使用する屋根材も選択される。
勾配の表現の仕方としては、水平距離10寸に対する高さを尺貫法による「寸」で表す方法が多く用いられており、そのほか、角度や分数で表現する方法もある。
建築基準法施行令第86条第4項では、積雪地において屋根の積雪荷重を求めるに際し、勾配60度以下の場合には、屋根形状係数を乗じ、60度を超える場合には、積雪荷重を0とすることとしている。
屋根
建物の上部に設ける覆い。屋根は、雨露、風雪、寒暑を防ぐために設けられ、建築構造の一部となる。
屋根のかたちには、二つの面が棟で山型に合わさる「切妻屋根」、山型の二面とその両端を斜めに切る二面で構成する「寄棟屋根」、傾斜した四つの面が頂点で合わさる「方形屋根(ほうぎょうやね)」、一つの傾斜面の「片流れ屋根」、水平面の「陸屋根(ろくやね)」、切妻屋根の両端に傾斜面を付加した「入母屋屋根(いりもややね)」などがある。
屋根材としては、粘土瓦、セメント瓦(プレスセメント瓦、コンクリート瓦)、スレート(化粧スレート、天然スレート)、金属(銅、トタン、ガルバリウム鋼板等)が用いられるほか、陸屋根の屋根材には、アスファルト、モルタル、防水シート等の防水材が使用される。また、古民家のなかには茅や藁を用いるものもある。
なお、屋根を仕上げることを「葺く」といい、屋根を「瓦葺」「スレート葺」「茅葺」などに分ける場合もある。
尺貫法
中国に起源を持ち、日本では古代から長く使われてきた計測の単位系、度量衡法。長さの「尺」、重さの「貫」、さらには体積の「升」、面積の「坪」も尺貫法の体系に含められる。「尺」の語源については、ものの長さを人体の一部を用いて測ったことに由来するとされる。
不動産・建築に関しては、「尺(1尺は約303mm)」「寸(すん。1寸は約30.3mm)」、そして1尺の3倍から端数を省いたと思われる3尺=約910mmをひとつの基準的な長さとして、柱の間隔という意味であるとされる1間(いっけん)=3尺×2=約1820mmが用いられ、面積の単位としては1間×1間の「坪(つぼ。1坪=約3.3平方メートル)」が木造建築等の伝統工法を利用する業界をはじめとする不動産・建設業界、さらには広く日常的にも用いられている。また、主に関西圏ではこれよりもやや広めである「京間(きょうま)」の考え方があり、これも現在まで使われている(「関東間(かんとうま)」も参照)。
度量衡の全国統一は、豊臣秀吉や江戸幕府の基本政策でもあったが、明治政府は、メートル条約の批准を受けて尺・坪(面積の単位)・升・貫をメートル法により定義しなおした。その後、1952(昭和27年)の旧計量法が施行し、昭和30年代まで尺貫法とメートル法が併用された後、商品の取引等に対しては、メートル法の使用が義務付けられた(計量法はその後、1992(平成4)年に国際単位系に合わせた新計量法が制定、翌年施行)。
不動産・建築業界においても、例えば「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」においては、メートル法表示が必須とされており、あくまでもメートル法が原則であるが、歴史的・文化的に継続してきた尺貫法は、現場を中心に日常的に通用している。
間取りの設計等に際して尺貫法を基本に、910ミリ×910ミリの正方形やひと坪を単位に空間を構想することなどを「尺モジュールを用いる」という(対してメートル法を基本にする場合は、「メーターモジュールを用いる」ということになる。)。計量法に従い、契約書等においては、メーターモジュールを基本にしながらも、国際的に見ればやや小柄な日本人の体格に適合しているところであり、既存の建築物、家具類、調度品、設備なども「尺モジュール」で製造されていることから、尺貫法には一定の有用性があり、当面は広く使用されていくものと思われる
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
積雪荷重
積雪により建築物に加わる荷重であり、鉛直方向の外力として作用する。
建築基準法施行令第82条の保有水平耐力計算及び同令第82条の5の限界耐力計算に当たって、積雪による荷重を考慮しなければならないとされている。
積雪荷重は、特定行政庁が地域ごとに規則で定めることとされており、国土交通大臣の定める基準(平12建告第1455号「多雪区域を指定する基準及び垂直積雪量を定める基準を定める件」)に従って多雪区域とそれ以外の区域ごとに、多雪区域においては、積雪1cmにつき3kg/平方メートル、それ以外の一般の区域においては1cmにつき2kg/平方メートルを単位積雪荷重として、地域の特性に応じて垂直積雪量を定めることにより、考慮すべき積雪荷重が決定される。屋根の勾配や雪下ろしの慣習の有無を考慮することができる。上記基準に定められた数式によることのできるほか、観測資料から50年再現期待値を用いることもできるとされている。降雨の影響を考慮した割増が必要となる場合がある。
保有水平耐力計算に当たっては、大雪の場合の応力度の判定のため「短期積雪荷重」を、積雪が長期間に渡った場合の判定のため「長期積雪荷重」を用いる。短期積雪荷重は、上記により導き出された積雪荷重の数値がそのまま用いられる。
限界耐力計算に当たっては、極めて稀に発生する最大級の状態として積雪荷重の1.4倍(500年再現期待値)を設定する。