個々の建築物が単体として具備していなければならない構造耐力、建築防火、建築衛生等に関する安全確保のための技術基準として建築基準法の第2章(第19条~第41条)に置かれている規定。
「構造強度」「採光、通風」「防火、避難」「室内空気環境」その他の安全性など、多様な観点から建築物の安全性について仕様または性能面で遵守すべき技術基準を定めている。具体的な技術基準や設計の安全性等を確認・検証するための数値の計算方法についての多くは、国土交通大臣の定める告示に委任されている。
構造耐力
建築物には、自重(建築物そのものの重さ)、積載荷重(人間・家具・設備の重さ)、積雪という垂直方向の力がかかり、また地震力・風圧力という水平方向の力がかかる。 これらの垂直方向・水平方向の力に対して、建築物が垂直方向の力を支え、水平方向の力による変形に対抗することができるということを「構造耐力」と呼んでいる。 また、特に水平方向の力による変形に対抗することができるということを「水平耐力」と呼んでいる。 この水平耐力を備えるように筋かいを入れ、または構造用合板などを張った壁は「耐力壁」と呼ばれている。 建築基準法では、すべての建築物が十分な構造耐力を備えるように、詳しい技術的な基準を設けている(建築基準法第20条第1項、建築基準法施行令第36条から第80条の3まで)。 また、木造3階建てなどの建築物については十分な構造耐力を持つことをチェックするために、設計段階で構造計算を行なうことを義務付けている(建築基準法第20条第1項第2号、建築基準法施行令第81条から第99条まで)。
採光
建築基準法によれば、住宅の居室においては、採光のために、窓その他の開口部を設けなければならない(建築基準法第28条1項)。 この住宅の採光のための開口部の面積は、居室の床面積の7分の1以上(照明設備の設置や有効な採光方法を確保する措置がなされている場合は、その居室の床面積の10分の1までの範囲内)でなければならないとされている(有効採光面積を参照)。 襖、障子などの常時開放できるもので仕切られた2つ以上の居室は、1つの居室とみなすこととされている(建築基準法第28条4項)。従って、1つの居室には必ず1つの窓が必要というわけではなく、障子で仕切られた2つの居室について1つの窓でもよいということになる。
住宅の販売広告等では、窓のない部屋はこの採光の規定(建築基準法第28条)を満たしていないため、「居室」と表示することはできない。その代わりに、「納戸(なんど)」「サービスルーム(納戸)」などと表示することは可能とされている。 また、地階に設けた居室についてはこの限りではないとされているので、居室として使用される地下室では採光のための開口部を設ける必要はない(建築基準法第28条1項但し書き)。 ただし、こうした地下室では衛生上の要請から「ドライエリア(からぼり)」等の設備を設ける必要がある(建築基準法第29条)。
通風
風通し。窓を開けると、外から室内への気流(空気の流れ)が生じるが、通風はこの現象である。
自然換気は通風の風力による。また、空気は、放射エネルギーを伝達して室温や体感温度を調節し、振動を伝達して聴覚や皮膚感覚に作用するが、これらは、通風によって維持される。通風が阻害されると、空気がこもって息苦しさを感じることがある。