建築基準法施行令第82条の保有水平耐力計算に用いられる積雪荷重の算定に当たり、国土交通大臣の定める基準(平12建告第1455号)に従い、積雪量と期間の長さに応じて特定行政庁が規則で指定する。
多雪区域とそれ以外の区域とでは、想定される積雪荷重に差があり、多雪区域では長期積雪荷重を考慮することが必要になるという差異がある。
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
積雪荷重
積雪により建築物に加わる荷重であり、鉛直方向の外力として作用する。
建築基準法施行令第82条の保有水平耐力計算及び同令第82条の5の限界耐力計算に当たって、積雪による荷重を考慮しなければならないとされている。
積雪荷重は、特定行政庁が地域ごとに規則で定めることとされており、国土交通大臣の定める基準(平12建告第1455号「多雪区域を指定する基準及び垂直積雪量を定める基準を定める件」)に従って多雪区域とそれ以外の区域ごとに、多雪区域においては、積雪1cmにつき3kg/平方メートル、それ以外の一般の区域においては1cmにつき2kg/平方メートルを単位積雪荷重として、地域の特性に応じて垂直積雪量を定めることにより、考慮すべき積雪荷重が決定される。屋根の勾配や雪下ろしの慣習の有無を考慮することができる。上記基準に定められた数式によることのできるほか、観測資料から50年再現期待値を用いることもできるとされている。降雨の影響を考慮した割増が必要となる場合がある。
保有水平耐力計算に当たっては、大雪の場合の応力度の判定のため「短期積雪荷重」を、積雪が長期間に渡った場合の判定のため「長期積雪荷重」を用いる。短期積雪荷重は、上記により導き出された積雪荷重の数値がそのまま用いられる。
限界耐力計算に当たっては、極めて稀に発生する最大級の状態として積雪荷重の1.4倍(500年再現期待値)を設定する。
特定行政庁
建築基準行政において、建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長を、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。
人口が25万人以上の市の市長は原則として特定行政庁であるほか、それ以外の市町村長も建築主事を置くことによって特定行政庁となる。
建築主事は建築確認等の業務を行なうが、違反建築物に対する措置等は特定行政庁の業務とされている。
長期積雪荷重
積雪荷重のうち、長期間に渡って積雪の状態が継続した場合に建築物に作用する荷重。
建築基準法施行令第82条の保有水平耐力計算においては、多雪区域では、「長期に生ずる力」として、固定荷重及び積載荷重に加えて、長期積雪荷重を考慮しなければならないとされている。積雪の状態が長期化することによって、部材が変形する現象を想定しており、「長期」として約3ヵ月を想定し、短期積雪荷重の0.7倍の荷重がかかるものとして、その数値を保有水平耐力の計算式に用いることとしている。