密集市街地等の老朽化した住宅の建て替えが停滞している街区等で、複数の地権者の協調により建て替え計画を策定するが、再開発事業のように一棟の建物に共同化するのではなく、建築物の建て替え自体は、各地権者の敷地において個別に行なう建替手法。
当該一団の街区は、街区として総合的に見て、個別に建築基準法の規制(接道義務、道路斜線制限、建蔽率制限等)が行なわれている場合と同等の防災性や居住環境を有しているとの特定行政庁の判断を受け、一定の規制緩和により停滞していた建て替えを促進するまちづくりの手法。国の「住宅市街地総合整備事業(密集住宅市街地整備型)」はじめ、地方自治体の助成事業や(独)住宅金融支援機構のまちづくり融資の要件を満たす場合には、さまざまな助成制度の利用が可能であり、行政や専門家の支援を含めた事前の話し合いや計画づくりが重要である。
密集市街地
老朽化した木造の建築物が密集し、細街路が多くてオープンスぺースが少なく、地震や火災が発生した場合には、延焼の防止や円滑な避難が困難になる市街地。
密集市街地であるかどうかの厳密な判定は難しいが、国土交通省の「地震時等に著しく危険な密集市街地」の調査(2012年)では、住宅の密度、不燃化領域の割合などによって評価した「延焼の危険性」と、街路形状、建物の耐震・防火性能などによって評価した「避難の困難性」に基づいて判定されている。
密集市街地の危険性を軽減するために、建物の耐震化・不燃化、街路やオープンスペースの整備、延焼遮断帯の形成などが進められている。
地権者
土地を使用収益する権利を有する者。土地の所有者、地上権者、賃貸借権者などは地権者である。一方、土地に対する抵当権者などは地権者ではない。
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
接道義務
建築基準法第43条の規定によれば、建築物の敷地は原則として、建築基準法上の道路と2m以上の長さで接しなければならない。これは消防活動などに支障をきたすことがないように定められたものである。この義務のことを「接道義務」と呼んでいる。
(なお建築基準法第43条では、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物等については、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したものについては、接道義務を免除することができるとも定めている)
また、多数の人が出入りするような特殊建築物(学校・ホテルなど)や大規模建築物(3階建て以上の建築物など)については、防火の必要性が特に高い等の理由により、地方自治体の条例(建築安全条例)において、より重い接道義務を設けていることが多いので注意したい。
道路斜線制限
道路高さ制限のこと。 建築基準法によれば、建物の各部分の高さは、その部分から前面道路までの距離が長いほど高くすることができる。これを道路高さ制限と呼んでいる(建築基準法第56条)。 中層以上の建築物で道路に面した壁の一部が、垂直でなく、斜面になっていることがあるのは、道路高さ制限を守るために、そのような形に設計したものである。 道路高さ制限の具体的な内容は、建築基準法56条と建築基準法別表第3で細かく規定されている。概要は次の通りである。
1.建物の各部分の高さの限度は、「前面道路の幅」と「その部分から道路までの距離」との合計の1.25倍または1.5倍である(住居系の用途地域(7種類)では1.25倍、それ以外の用途地域では1.5倍である)。
2.上記1.の建物の各部分の高さの限度は、前面道路とその向かいの敷地との境界線から一定の距離以上離れた建物の部分には適用されない。この道路高さ制限の適用を免除される距離は、建築基準法56条と建築基準法別表第3で細かく規程されている。 一例を挙げると、第二種中高層住居専用地域で容積率が150%であるときは、この道路高さ制限の適用を免除される距離は20mと規定されている。従ってこのときは、前面道路と向かいの敷地との境界線から20m以上離れた地点では、道路高さ制限は適用されず、建物の高さを自由に高くしてよいということになる。
規制緩和
民間の産業活動や事業活動に対する政府の規制を縮小すること。 政府は、民間事業の活動について、安全の確保、技術基準の統一、競争の適正化、消費者の保護などさまざまな観点から規制を加えているが、これを緩和して活発な産業活動を促す政策が取られている。例えば、すでに行なわれた規制緩和としては、タクシー台数の制限撤廃、電力自由化、酒類免許制度の撤廃、農業への株式会社参入などがある。 不動産業に関係する規制緩和としては、土地利用に関する規制の緩和が進められ、容積率や高さ制限などの見直しが推進された。 規制緩和は、社会の秩序を維持する方法として市場メカニズムをよりいっそう活用しようという考え方にもとづくもので、その背景には、社会経済活動の効率性を高めることが善であるという価値判断がある。しかし一方で、公共性を確保することも重要であり、規制緩和による弊害が生じていないかどうかに注意が必要である。 なお、規制緩和に似た政策として政府業務の民間開放がある。政府企業の民営化、指定管理者制度、PFI、市場化テストなどがそれであるが、市場メカニズムを活用することは規制緩和として共通しているものの、事業の主体を政府から民間に移すことに主眼があり、規制緩和とは別の政策として考えるべきであろう。
住宅市街地総合整備事業
既成市街地において、快適な居住環境の創出等のために、住宅および公共施設等の整備を総合的に行なう地方公共団体、(独)都市再生機構(UR)、地方住宅供給公社および民間事業者等(これらの共同でも可)に対し、事業主体が作成した整備計画に基づき、国が「社会資本整備総合交付金」などの枠組みを利用して、国庫補助等の必要な助成を行なう制度。国土交通省住宅局市街地建築課市街地住宅整備室が担当。「住宅市街地総合整備事業制度要綱」「住宅市街地総合整備事業補助金交付要綱」による。
快適な居住環境の創出、都市機能の更新、美しい市街地景観の形成等を目的とし、市街地の状況や計画の目的に応じて以下のような類型が用意されている。
1拠点開発型・街なか居住型2住宅団地ストック活用型3密集住宅市街地整備型4密集市街地総合防災事業5防災街区整備事業6街なみ環境整備事業7一時避難場所整備緊急促進事業(地域防災拠点整備緊急促進事業)
住宅金融支援機構
政府の保証を背景とした住宅金融業務を実施することを目的に設立された「住宅金融公庫」の権利義務を引き継ぐ形で2007(平成19)年に設立された。 主な業務は、
1.一般の金融機関の住宅貸付債権の譲受け、住宅貸付債権を担保とする債券に係る債務保証などの業務(証券化支援業務)
2.民間住宅ローンについて保険を行なう業務(融資保険業務)
3.災害関連、都市居住再生等の一般の金融機関による融通が困難な分野で住宅資金を直接に融資する業務(直接融資業務)
である。 なお、住宅金融公庫が民間金融機関と提携して実施していた長期固定金利の住宅資金融資(フラット35)は、証券化支援業務の一つであり、機構が引き続き実施している。