高さ60m以下、かつ、一定の規模以上等の建築物が確認検査を受ける場合においては、国土交通大臣が定める構造計算方法に関する基準(「特定構造計算基準」および「特定増改築構造計算基準」)に適合するどうかについて、都道府県知事または都道府県知事が指定する構造計算適合性判定機関の判定を受けなければならない(建築基準法第6条の3及び第20条第1項第2号イ、同項第3号イ)。この判定が、構造計算適合性判定であり、建築物の種類によって、保有水平耐力計算、許容応力度等計算等が求められている(平成19年国土交通省告示第592号)。なお、高さ60m以上の超高層建築物については、別途、限界耐力計算について国土交通大臣が認定する方法によることとなっており、本判定制度の対象外である。
本制度は、いわゆる「耐震偽装事件」を受けた2006(平成18)年の建築基準法改正により創設され、翌年に施行された。
その後、2014(平成26)年の建築基準法改正では、それまで確認検査機関経由で行なていた判定申請を、都道府県知事または構造計算適合性判定機関で直接行なえることとし手続きの円滑化を図ったほか、一定の技術等を有する者(構造設計一級建築士又は登録特定建築基準適合判定資格者等)が確認審査を行う場合には、比較的容易な構造計算について判定の対象外とした。
さらに、2022(令和4)年の「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」により、木造建築物の建築確認検査の対象の見直し、小規模な伝統的木造建築物について一定の場合に構造計算適合性判定を不要とする等の規制緩和が行なわれている。改正法施行日は、2025(令和7)年4月1日。
建築物
建築基準法では「建築物」という言葉を次のように定義している(建築基準法第2条第1号)。 これによれば建築物とは、およそ次のようなものである。 1.屋根と柱または壁を有するもの 2.上記に付属する門や塀 3.以上のものに設けられる建築設備 上記1.は、「屋根+柱」「屋根+壁」「屋根+壁+柱」のどれでも建築物になるという意味である。 なお、地下街に設ける店舗、高架下に設ける店舗も「建築物」に含まれる。
構造計算
構造物に関して、自重、地震、強風などの加重によって発生する応力や変形を計算することをいう。その結果に基づいて構造物の安全性等を判断する。
建築確認申請に当たっては、構造や規模に応じて定められている一定の建物について、構造計算書を添付して、構造計算適合性の判定を受けなければならない。この場合の計算方法や、想定する加重、必要とする耐力などは、建物の構造、規模、用途等によって異なる。
なお、構造計算の適合性の確保を含めて建築物の構造をデザインする業務を構造設計と言い、建築士が責任を負うべき重要な業務のひとつとされている。耐震設計もこれに含まれる。
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
構造計算適合判定
建築物の構造計算が適正であることを判定することで、一定規模以上の建築物についてその実施が義務づけられている。判定は、都道府県知事または指定構造計算適合性判定機関が行なう。 構造計算適合判定が義務づけられているのは、 ・高さが20mを超える鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物 ・地階を除く階数が4以上である鉄骨造の建築物 ・高さが13m又は軒の高さが9mを超える木造の建築物 ・これらと同様なものとして国土交通省が定める建築物 である。 なお、 ・許容応力度等計算、保有水平耐力計算又は限界耐力計算を行なったもの ・構造計算または許容応力度計算で、大臣認定プログラムによるもの についても構造計算適合性判定が必要である。
木造
建物の主要な部分を木材とした建築構造のこと。
木造の工法は、大きく分けて「在来工法」「伝統工法」「枠組壁工法」に分類されている。