都市が被る自然災害(火災、震災、水災害、土砂災害など)を防止・軽減するための対応策。
都市防災は、i)都市が置かれた自然条件、社会状況、空間構造などの固有性を基礎に構築・実施されること、ii)対応のレベルが建築物、地区、地域のように重層的であること、iii)各種の災害を総合的に捉えて計画的に対応することが特徴である。
都市防災のために必要な措置は、(1)災害発生原因の除去、(2)建物構造、土地利用等の適正化による安全の確保、(3)発生時における被害者救済と緊急措置の実施、(4)迅速で的確な復旧・復興であるとされる。これらの措置は、たとえば「防災都市づくり計画」のような形で体系化し、公表されていることが多い。また、都市計画に組み込まれる措置もある。
都市防災を計画的に進める場合には、被害の想定と危険度の判定、目標の設定、対応計画の策定、計画の着実な実施のような手順を経ることとなる。このとき、災害に強い都市構造の実現を目指す対応策として、土地利用の規制・誘導、密集市街地整備事業等が有効であると考えられている。
土地利用に着目した対応策としては、例えば、レッドゾーン(災害危険区域・土砂災害特別警戒区域・地すべり防止区域・急傾斜地崩壊危険区域)を指定し、住宅等の建築や開発行為等を規制する、イエローゾーン(浸水想定区域・土砂災害警戒区域・都市洪水想定区域・都市浸水想定区域・津波浸水想定区域・津波災害警戒区域等)を指定し、区域内の警戒避難体制の整備等を求めるなどがある。
都市防災の内容は、大災害の発生などを契機に、広範で包括的なものに変わってきている。はじめは防火・不燃化に重点を置いたものであったが、阪神・淡路大震災以降は耐震化も重要視されるようになった。そして近年は、水災害等への対応も加わって、避難や復興を含んだ総合的な政策となっている。
災害危険区域
津波、高潮、出水等による危険の著しい区域として指定された区域。 地方公共団体が条例によって指定し、その区域内では、災害を防止・軽減するため、条例の定めるところにより建物の用途、地盤高・床高、構造等が規制される。建築基準法に基づく制度である。なお、自己の居住用住宅の建築を目的とした開発行為を除き、この区域を開発区域に含むことは原則禁止とされている。
土砂災害特別警戒区域
土砂災害警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に建築物に損壊が生じ住民等の生命または身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められ、開発行為の制限や建築物の構造の規制をすべきとして指定される土地の区域をいう。 その指定要件、手続きなどは、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)で定められている。 土砂災害特別警戒区域内においては、住宅地分譲等のための開発行為(特定開発行為)について許可を要する、居室を有する建築物の建築確認について土砂災害を防止・軽減できる構造であることが必要、建築物の安全な区域への移転等の勧告・支援などの措置が講じられる。なお、自己の居住用住宅の建築を目的とした開発行為を除き、この区域を開発区域に含むことは原則禁止とされている。 なお、宅地建物取引業務においては、特定開発行為について許可を受けた後でなければ当該宅地の広告、売買契約の締結等をしてはならず、また、重要事項説明に際しては特定開発行為の許可に関する概要を説明しなければならない。
急傾斜地崩壊危険区域
崩壊する恐れのある急傾斜地(傾斜度が30度以上の土地)で、崩壊により相当数の居住者その他の者に危害が生ずる恐れのあるもの、およびこれに隣接する土地として都道府県知事が指定する区域をいう。 指定は、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」に基づいて行なわれる。 急傾斜地崩壊危険区域内においては、 1.水の放流や停滞行為など水の浸透を助長する行為 2.ため池や用水路などの施設、または工作物の設置、または改造 3.のり切、切り土、掘さく、または盛り土 4.立木竹の伐採などの行為 について都道府県知事の許可が必要であり、知事は許可に当たって、急傾斜地の崩壊を防止するために必要な条件を付すことができるとされている。なお、自己の居住用住宅の建築を目的とした開発行為を除き、この区域を開発区域に含むことは原則禁止とされている。
建築
「建築物を新築し、増築し、改築し、または移転すること」と定義されている(建築基準法第2条第13号)。
浸水想定区域
河川の氾濫、雨水の排除ができないことによる出水、高潮による氾濫が起きた場合に浸水が想定される区域。水防法に基づき、国土交通大臣又は都道府県知事が指定する。
浸水想定区域には、その原因に応じて、洪水浸水想定区域、雨水出水浸水想定区域、高潮浸水想定区域の種類がある。
浸水想定区域に指定された区域については、洪水予報等の伝達方法、避難場所および避難経路、避難訓練の実施など、円滑かつ迅速な避難の確保を図るための措置について定めがある。また、浸水想定区域および避難確保措置は、ハザードマップ等に記載し公表されている。
土砂災害警戒区域
急傾斜地の崩壊等が発生した場合に住民等の生命または身体に危害が生ずる恐れがあると認められ、警戒避難体制を特に整備すべきとして指定される土地の区域をいう。
その指定要件、手続きなどは、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)で定められている。
土砂災害は、急傾斜地の崩壊、土石流および地滑りによって生じるとされるが、土砂災害警戒区域については、高齢者、障害者、乳幼児等の災害時要援護者の利用する施設に対する情報伝達方法を定める、土砂災害ハザードマップを配付して周知を徹底するなど、警戒避難体制が整備される。
なお、宅地建物取引業務における重要事項説明に際しては、取引する宅地建物が土砂災害警戒区域にあるときには、その旨を説明しなければならない。
都市洪水想定区域
都市河川において、洪水予防の目標となるべき降雨が生じた場合に洪水(破堤、溢水による外水の流入)による浸水が想定される区域をいい、「特定都市河川浸水被害対策法」に基づいて国土交通大臣または都道府県知事が指定する。
都市洪水想定区域については、市町村地域防災計画において、浸水の発生または発生の恐れに関する情報の伝達方法、避難場所など、都市洪水が生じたときの円滑かつ迅速な避難の確保を図ることとされている。
なお、同様の降雨によって都市浸水(下水道等の排水施設や公共の水域に雨水を排出できないことによる内水による浸水)が想定されるとして指定される区域を「都市浸水想定区域」という。
内水排除によって河川水位が上昇するなど、都市洪水と都市浸水とは相互に影響を及ぼす関係にあることから、都市の浸水被害対策に当たっては両者を一体的に考えなければならない。