賃貸不動産が譲渡されたときに、賃貸人の地位が譲渡を受けた者に移転すること。民法に定められている制度である。
この移転は、賃貸借について、賃借権の登記、借地借家法の規定(登記がなくても建物の引き渡しがあれば対抗力が生じる旨の定め)などによる対抗要件が備わっていれば、原則として当然に(意思表示しなくても)効力を生じる。また、譲渡による賃貸人の地位の移転は、譲り受けた不動産について所有権移転登記をしなければ、賃借人に対抗できない。
なお、例外として、賃貸不動産を投資法人等が取得し、従前の所有者がその譲渡不動産を賃貸管理するために改めて賃借する場合には(もとからの賃借人は転借人となる)、売買当事者の合意によって、賃貸人の地位を譲渡した者に留保できることとされている。この場合、当事者間の賃貸借が終了すれば、賃貸人の地位は不動産の所有者に移転する。
借地借家法
借地権および建物の賃貸借契約などに関して特別の定めをする法律で、民法の特別法である。1991年公布、92年8月1日から施行されている。
従前の借地法、借家法を統合したほか、定期借地権等の規定が創設された。借地借家法では、借地権の存続期間や効力等、建物の賃貸借契約の更新や効力等について、借地権者や建物の賃借人に不利にならないよう一定の制限が定められている。
意思表示
一定の法律効果を欲するという意思を外部に表示することである。
意思表示は次の3つの部分から構成されている。
1.内心的効果意思
具体的にある法律効果を意欲する意思のこと。例えば、店頭で品物を買おうと意欲する意思が内心的効果意思である。
2.表示意思
内心的効果意思にもとづいて、その意思を表示しようとする意思のこと。
例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を伝えようとする意思である。
(なお、表示意思を内心的効果意思に含める考え方もある)
3.表示行為
内心的効果意思を外部に表示する行為のこと。
例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を告げることである。
なお、内心的効果意思のもととなった心意は「動機」と呼ばれる。例えば、品物を家族にプレゼントしようという意図が「動機」である。しかし、現在は判例・通説では「動機」は原則として、意思表示の構成要素ではないとされている。
所有権移転登記
不動産の所有権を移転したときに、その旨を登記すること。法務局に申請し、登記簿の権利を表示する欄(権利部(甲区))に、登記目的が所有権移転であること、権利移転の原因・日付、移転先権利者の名義(必要に応じて持分割合)を記載する。
権利移転の原因には、売買、贈与、相続、共有物分割などがある。また、新築家屋のような新たな不動産の所有権を登記する場合は、「所有権保存登記」を行なうこととなる。
なお、土地と建物は別々に登記する。また、所有権移転登記は義務ではないが、登記がないと当該所有権について第三者に対抗することができない。
賃借人
物を賃貸借する場合の借主。例えば、賃貸住宅の借主(入居者)は賃借人である。この場合、入居者は、賃借人として賃貸人(貸主、大家)とのあいだで住宅を賃貸借する契約を締結し、賃借権に基づいて居住する。
賃借人は貸主に賃料を支払い、貸主は賃借人に契約の目的物を使用収益させる。賃貸住宅の場合は、賃料は家賃であり、目的物の使用収益とは住宅に居住することである。
住宅の賃貸借については、借地借家法や民法に特別の扱いが規定され、賃借人の安定的な居住が保護されている。例えば、登記しなくても住宅の引き渡しによって賃貸借の対抗力が生じること、貸主が賃貸借契約の更新を拒絶するときには正当な事由が必要であること、賃借人が付加した造作がある場合には、契約終了時に貸主に対して買取りを請求できること、賃借人は住宅を返還するときに原状回復の義務を負うが、使用収益による通常の損耗及び経年変化による損傷については回復義務はないことなどが定められている。
投資法人(投資信託における)
会社型投資信託において、投資家の資金によって投資を行なう主体となる法人をいう。
その構成員は投資主であるが、意思決定機関として投資主総会、業務遂行機関として役員会が設置されている。
投資法人の設立には内閣総理大臣への登録が必要で、出資総額は1億円以上とされるなど、一定の要件を満たさなければならない。また、投資法人は、投資主に対して会計情報等を開示するなど、その業務運営に関して規制があり、金融商品取引法等によって金融庁等の監督を受ける。
なお、投資法人による投資運用は、実際には、投資信託委託業者が行なっている。例えば、不動産投資信託(JREIT)の場合には、不動産と金融に詳しい専門家がこれに当たることが多い。