当事者の合意の意思表示のみで成立する契約。
民法は、基本原則として、契約は締結の申込みに対して相手方が承諾したときに成立する旨を規定し、売買契約、賃貸借契約などほとんど全ての契約について諾成契約としている。
また、契約の成立には、法令による特別の定めがない限り書面の作成などの方式を備える必要はなく、任意の意思表示で足りる。
意思表示
一定の法律効果を欲するという意思を外部に表示することである。
意思表示は次の3つの部分から構成されている。
1.内心的効果意思
具体的にある法律効果を意欲する意思のこと。例えば、店頭で品物を買おうと意欲する意思が内心的効果意思である。
2.表示意思
内心的効果意思にもとづいて、その意思を表示しようとする意思のこと。
例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を伝えようとする意思である。
(なお、表示意思を内心的効果意思に含める考え方もある)
3.表示行為
内心的効果意思を外部に表示する行為のこと。
例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を告げることである。
なお、内心的効果意思のもととなった心意は「動機」と呼ばれる。例えば、品物を家族にプレゼントしようという意図が「動機」である。しかし、現在は判例・通説では「動機」は原則として、意思表示の構成要素ではないとされている。
契約
対立する2個以上の意思表示の合致によって成立する法律行為のこと。
具体的には、売買契約、賃貸借契約、請負契約などのように、一方が申し込み、他方が承諾するという関係にある法律行為である。
売買契約
当事者の一方が、ある財産権を相手方に移転する意思を表示し、相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。
売買契約は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)。
また、売買契約は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。
さらに、売買契約は財産権を移転する契約であるが、その対価として交付されるのは金銭でなければならない(金銭以外の物を対価として交付すると「交換契約」となってしまう)。
当事者の双方の意思の合致により売買契約が成立したとき、売主には「財産権移転義務」が発生し、買主には「代金支払義務」が発生する。両方の義務の履行は「同時履行の関係」に立つとされる。
関連用語
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要物契約
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当事者の合意のほか、物の引き渡しなどの給付があって初めて成立する契約。
民法改正(債権法関係、2020年4月施行)までは、消費貸借、使用貸借、寄託の契約が要物契約として規定されていた。しかしながら、近代民法は当事者の合意のみによる契約成立(諾成契約)を基本原則としていること、要物性を厳格に適用すると不都合な場合があることなどから、判例は、これらの要物契約の成立について要物性を緩和して解釈している。
そこで、民法改正(債権法関係)によって、消費貸借(書面によるもの)、使用貸借、寄託の契約は諾成契約に改められ、現在は、消費貸借契約のうち書面によらないもののみが要物契約とされている。