探索しても所有者を確知できない土地。所有者が不明な場合のほか、所有者の所在が分からない場合も含まれる。
土地所有者の探索は、公的書類等による調査や聞き取り調査によるが、所有者が判明しなかったり、判明しても所在が不明の場合が少なくなく、また、長期にわたって相続登記がなく、数次の相続を経ているため所有者が多数にのぼるなど探索が困難な場合もある。このため、土地の公共的な利用に支障が生じることがある。
そこで、2018(平成30)年に、一定の事業のために特定の所有者不明土地を円滑に利用すること、所有者不明土地の財産管理人の選任申立権を地方公共団体の長等に付与すること、名義人死亡後長期間相続登記等がされていない土地である旨を登記に付記することなどの制度が創設された(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)。
また所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)が行なわれ、2023(令和5)年からは要件に該当する相続した土地については国庫に帰属させることができるようになり、2024(令和6)年からは相続登記が義務化になるなどの取り組みが進められている。
相続登記
相続の発生に伴って、土地建物の権利者(または権利の割合)が変わった場合に、その権利の変更を登記することを「相続登記」という。 相続登記をするには、法定相続分のままで登記する場合と、遺産分割協議で決定した内容に基づいて登記する場合がある。また、有効な遺言書が存在すれば、遺言書に従って相続登記することになる。 法定相続分のままで相続登記をし、その後に遺産分割協議が成立した場合は、その協議の決定内容に基づいて再度、相続登記を申請することになる。 なお、不動産登記法の改正によって、相続登記が義務化された(2024年4月1日施行)。この場合、正式の申請に代わって、相続した旨のみを申し出ることで申請義務を履行したものとみなす仕組み(相続人申告登記)も創設されている(「相続登記の義務化」参照)。
相続
死者の有した財産上の一切の権利義務を、特定の者が包括的に承継することをいう。
相続は、死亡のみによって、意思表示を要せず一方的に開始される。ただし、遺言により相続の財産処分について生前に意思を明らかにし、相続に反映させることができるが、この場合には、遺留分の制約がある。
財産の継承者(相続人)は、1.子・直系尊属・兄弟姉妹がこの順で先順位の者が(同順位者が複数あるときには共同して均等に)、2.配偶者は1.の者と同順位で常に、その地位を得る。子・兄弟姉妹の相続開始前の死亡や相続欠格等の場合には、その者の子が代わって相続人となる(代襲相続)。
また、相続人は、相続の開始を知ったときから3ヵ月以内に、相続の承認、限定承認、相続放棄のいずれかの意思表示が必要である(意思表示がないときには相続の承認とみなされる)。
遺言の指定がないときの相続分(法定相続分)は、1)配偶者と子のときには、配偶者2分の1、子2分の1、2)配偶者と直系尊属のときには、配偶者3分の2、直系尊属3分の1、3)配偶者と兄弟姉妹のときは、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1である。
なお、法定相続分は遺言がない場合の共同相続人の権利義務継承の割合を定めたもので、遺産分割は相続人の協議等によってこれと異なる割合で行なうことができる。
地方公共団体
地域における行政を自主的、総合的に実施する役割を担う団体。その組織、運営、財務などについては、憲法の規定に基づき、地方自治法等によって定められている。
普通地方公共団体である都道府県・市町村と、特別地方公共団体である特別区・地方公共団体の組合・財産区の二種類に分類され、いずれも法人である。また、市町村は、地域の事務を一般的に処理する基礎的な地方公共団体である。
地方公共団体は、地方自治の本旨に基づいて組織し、運営しなければならない。この場合、地方自治の本旨とは、「団体自治」(国から独立した地域団体によって自己の事務を自己の機関・責任で処理し、国家から独立して意志を形成すること)および「住民自治」(住民が行政需要を自らの意思・責任によって充足し、意志形成において住民が政治的に参加すること)であるとされている。
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法
所有者不明土地の利用の円滑化や、土地の所有者の効果的な探索を図るために必要な措置を定めた法律。2018年に制定された。
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法が定める主な措置は、次の通りである。
(1)所有者不明土地の利用円滑化のための措置
ア)一定の要件を満たす所有者不明土地(特定所有者不明土地)について、公共事業における収用手続きにおいて収用委員会による審理手続きを省略することができる。
イ)特定所有者不明土地に対して、地域福利増進事業に利用する権利を設定することができる。
(2)所有者の探索を合理化するための措置
ア)行政機関は、土地の所有者の探索のために必要な公的情報を利用することができる。
イ)登記官は、所有権の登記名義人の死亡後に相続登記等がされていない土地であって、公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るためその所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるもの(特定登記未了土地)で一定の要件を満たす土地について、特定登記未了土地である旨等を職権で登記できる。
(3)所有者不明土地を適切に管理するための措置
地方公共団体の長等は、所有者不明土地について、家庭裁判所に相続財産の管理人の選任を請求できる。
不動産登記法
不動産の表示及び不動産に関する権利の公示のための登記制度を定めた法律。不動産登記制度は、1889(明治32)年に制定された旧不動産登記法によって創設されたが、2004(平成16)年にこれが全面改正され、2005(平成17)年3月7日から現行の不動産登記法が施行されている。 不動産登記法は、登記できる権利等、登記順位、登記所、登記記録、登記手続、登記事項の証明、筆界確定などについて定めている。たとえば、登記できる事項は、不動産(土地または建物)の表示のほか、不動産に係る所有権、地上権、抵当権、賃借権など一定の権利についての保存、設定、移転、変更、処分の制限、消滅についてである。